紋の位置について

和服に紋を入れる場合があります。一ッ紋・三ッ紋・五ッ紋。数が多いほど格が高いものとされています。一ッ紋は背に1つ、三ッ紋は背と袖に、五ッ紋は背と袖と抱き(前身頃)に付けます。

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結婚式での新郎の紋付き羽織袴姿、喪服、留袖などには五ッ紋を入れます。紋の種類には日向紋やかげ紋、縫い紋等があり、家紋ではなく、草花などをあしらった、刺繍のお洒落な伊達紋を無地の振袖などに入れる方もみえます。

紋の位置の目安は、男女大人用着物・四ッ身着物(4~5歳ぐらいまでの着物)・一ッ身(1歳~2歳までの着物)の3種類に別けられていて、それぞれの紋の上端までの距離です。

  • 男女大人用着物
    背紋下がり … 衿付けから約6cm
    袖紋下がり … 袖山から約7.5cm
    抱き(前)紋下がり … 肩山から約15cm
  • 四ッ身着物
    背紋下がり … 衿付けから約4.5cm
    袖紋下がり … 袖山から約6.5cm
    抱き(前)紋下がり … 肩山から約13cm
  • 一ッ身
    背紋下がり … 衿付けから約4cm
    袖紋下がり … 袖山から約6cm
    抱き(前)紋下がり … 肩山から約11cm

と、されています。

紋下がり06

紋下がり07

 

 

仕立ての見積もりをする時に、背紋の位置から身頃の四ツ山位置(衿肩明きを切る位置)を決め、裁ち切る身頃丈を決めます。背紋の上端から衿付け縫い代を加えた寸法で四ッ山を決め、抱き紋までの距離を測り、左右の抱き紋下がりが合っているのかを確認します。また、背の紋中心を測り、背縫い代の深さを決めます。

背と抱き紋下がり

 

無地などの仕立てで紋入れからする場合には、予め見積もりをして位置を決めます。注意しなければならないのは、繰り越しが大きい方(衣紋を多く抜く方)や肩の厚みが極端にある方は、背紋下がりの位置や肩山からの抱き紋の距離を考慮しないと、着たときに不自然になってしまいます。

 

紋の大きさは、女物は直径2cm、男物は直径3.8cmとされていますが、伊達紋などは大きな紋が入ります。

 

 

きものの仕立て直しで、綺麗になります。

お母様が「きものを娘に譲りたいのですが、どのようにしたらよいのでしょうか?」と、ご相談がありました。お話を伺うと、地元の呉服店は廃業してしまって、どこに持って行けばよいのか分からなかったようでした。

きものを見てみると、

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胴裏地には沢山のシミがあり、八掛の色もちょっと派手なので、もう少し優しい色目が良いとのことで、胴裏と八掛は新品に取り替えることとなりました。

 

時間がだいぶ経っているので、表生地が縮み裏側の生地が緩んでいます。袖口は・・・・

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裾も表生地が緩んでいます。(点々のように見えるのは、縫い躾(ぬいびつけ)またはグシという躾が掛かっています)

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当初は、裏地取り替えと裄や身幅などの寸法直しというお話でしたが、表生地のねじれなどで、寸法直しでは思ったほど仕立て上がりがよくない事や、洗い張りして仕立て直す費用と比較しても、さほど変わりないことをお話させていただきました。

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また、表生地にも全体にシミがあり、全ての染み抜きをするのには、費用が掛かりすぎてしまいますので、まず、洗い張りをして、その後、シミの位置を確認し、寸法を測り、縫い代に入る箇所や、着て目立たなく気にならない場所の染み抜きはせず、上前(左身頃の前)や衽、後身頃のお尻あたりなど目立つ部分のみだけ染み抜きをして、仕立て直しをした方が、出来上がりも綺麗に仕立て上がるのではと説明させていただきました。

 

仕立て後の袖口は、

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裾は

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裏地のつり合いも綺麗になりました。

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寸法は、娘さんが持っている長襦袢に合わせて着られるように、また体型に合わせた寸法で仕立てました。

 

和裁屋では、仕立てた寸法や内容は保存しています。また、きもの寸法を一度寸法を決めれば、長襦袢や羽織る物など、その他の和服を仕立てるときに、合わせることができます。仕立てのお客様には寸法表をお渡ししています。(寸法直しの方は、この限りではありません)

 

 

寸法直しが難しい事例(脇縫い代の切り込み)

以前、単衣着物の身幅を広くする寸法直しの依頼がありました。脇縫い代は、身幅を広げられる幅はありましたが、裾の三つ折りぐけを解いてみると・・・・・(写真は、絽の生地で縫ってみました)

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上の写真の様に背や脇、衽の縫い代が切り落とされていました。この状態では裾まで身幅が広がりません(T_T)
切り落としてある所に沿って、裾全部を切り落とす事になります。女物ならばお端折りがあり、多少、身丈が短くなっても構わなければ良いのですが、男物の場合では、対丈(お端折り無し)で着ますので身丈が短くなると、ちょっとスネが見えてしまったり・・都合が悪くなります。身丈直しとなると、内揚げ(腰あたりの縫い込み)があれば、短くなった寸法を内揚げから出し、元の身丈にできますが、当然、衽と衿を外して直さなければなりませんので、結構手間が掛かってしまいます。

 

裾の仕立て方には様々な方法があります。この様に、重なり部分を切り落としてしまうのは、下の写真の赤枠で囲ってある部分の、裾での脇縫い代の布の厚みを解消し、裾の三つ折りの幅を真っ直ぐ、すっきりと見せるためです。

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私は、仕立て直しや寸法直しができるという、和服の最大のメリットが失われてしまいますので、この様な、縫い代を切ってしまう仕立て方は好きではありません。私達は下の写真のように、最低限の切り込みで(縫い目隠しなどの仕立ては、少々深く切り込みを入れますが、切り落としたりはしません。)裾を縫っています。布の厚みは、しっかりと鏝で押さえ込んで仕立てています。

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様々な洗い張り品や、直し物の仕事が多くなってきましたが、縫い代の重なっている所を全部切り落としてある物や、鉛筆で標を付けている物、アイロンテープ(裾上げテープ)で縫い代を仮留めしてある物、芯を糊で接着してある物など、私では、ちょっと考えられないような仕立て方をしている着物などがあります。

後々、娘さんが着られるようになど「仕立て直す・寸法を直すことを前提とする」ということが大切だと修業時代、師匠から教えていただきました。「もったいない」という日本文化の中で、リサイクル・リメイク・リフォームができるからこそ、和服は受け継がれてゆくと思います。

 

袖丈?裄(ゆき)? 正確な裄寸法の測り方

「袖丈が長いので直していただけますか?」と寸法直しのお電話をいただくことがあります。

和服(きもの・長襦袢・羽織る物:羽織やコートなど)で一番シビアに寸法の差が現れるのは、裄寸法(袖幅・肩幅)です。女物のきものの身丈はお端折りがあるので、多少調節できるなど、融通が効く寸法はありますが、裄寸法(袖幅・肩幅)は数ミリ単位で寸法を操作して、袖口や振りから長襦袢が出ないようにするなど、和服の仕立てでは大変重要な寸法です。

 

お客様のお話をよく聞いてみると、和裁の寸法で言う「裄:ゆき」が長いとのことです。洋裁の寸法名称(測る場所)と和裁の寸法名称が違っているので、そんなことがよくあります。

洋裁の寸法名称

洋裁の寸法名称

上の図で、袖丈というようにかかれているところは、「裄丈」というような名称の場合もあるようですね。

和裁は、肩幅と袖幅を足した寸法が「裄」となります。

和裁の寸法名称

和裁の寸法名称

裄寸法の測り方によっては、違ってしまします。正確な寸法の測り方は、下の図のように、袖口・振り・身八ツ口をぴったり揃え、衿は、肩山の折山通りにして衿を繰り越し分抜き、身頃を平らにします。袖も袖山の折通りにして平らに置きます。

裄の測り方

裄の測り方

測るときには、袖山・肩山を手前に(自分側)に置くと測りやすいです。

きものの裄の測り方

きものの裄の測り方

 

動画を作成しました。ご覧ください。

 

 

 

たまに、下の図のように袖山の袖幅と、振りでの袖幅が違っている場合があります。この様な袖付けの付け方を「扇付け」と言われています。

袖付けの「扇付け」

袖付けの「扇付け」

注意点

  • 注意しなければならないのは、長襦袢の上に着物を着ますので、着物の裄直しをする場合は、長襦袢の袖幅や肩幅、裄の寸法がどのようになっているのか、確認する必要があります。いろいろな仕立て屋さんや呉服屋さんで、長襦袢の控え寸法(着物より控える寸法)は異なりますが、私どもは、裄は着物-1.2cm、袖幅は着物-0.8cm、肩幅は着物-0.4cmで仕立てます。また、長襦袢の生地幅が非常に伸びる場合(着用するときに引っ張りますので)や、単衣の紬などの生地で、長襦袢が着物にくっついてしまう場合、袖口明きが大きい男物の場合など、長襦袢の裄を-2cm程度にする場合があります。

 

  • 逆に着物の上に着るコートや羽織は、着物の裄(袖幅・肩幅)を広くします。アンサンブルは同時に仕立てるので、着物と羽織の寸法は整合性がありますが、オークションで購入された着物や長襦袢、羽織などは寸法がバラバラなので、注意する必要があります。

 

  • 羽織(コート)→着物→長襦袢 の順序で裄(袖幅・肩幅)も短くしてゆきます。幅の関係が良くないと、振りから長襦袢が出てしまったりしてしまいます。長襦袢はポルトガル語の「ジュバン」が語源で下着と言う意味です。長襦袢が出てしまうと「みっともない」と言われかねません。ちょっと意味が違いますが・・・・「人の振り見て、我が振り直せ」とも言いますので・・・・(^_^;)ちょっと違う意味ですが・・・・・・

 

 

 

浴衣の着姿

夏、真っ盛りですね~

街を歩いていて花火大会や納涼祭りで、また、テレビのCMやバラエティー番組などなど、浴衣の着姿を目にすることが多くなりました。

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浴衣の着姿を見ていて、仕立て屋目線で気になることがあります。それは、衿元で衿の打ち合わせ具合です。男性の浴衣は、胸元が見え少々はだけていてもワイルドっぽさを演出?する事ができますが、女性の場合、浴衣は長襦袢を着ないので(衿元に半衿を出すことはありません)胸元が開いているのはちょっといただけませんね。衣紋もあまり抜かず、衿をある程度深く重ね、詰めて着た方が清楚さがあり(詰めすぎると暑苦しくなりますが・・・)、逆に胸元が開いていて衣紋が抜きすぎていると妙にケバケバしく、いやらしい変な感じがします。(仕立て屋だけかもしれませんが・・・)もちろん、着付け方にもよりますが、既製品では寸法上、胸元のことまでは何ともならない場合があります。

衿元の打ち合わせ

衿元の打ち合わせ

 

標準とされる寸法で仕立てると以下のようになります。

衽下がりの違い01

衽下がりは標準で23cm(6寸)です。

バストが大きい方は胸元が開きやすいので、衽下がりを20cm程度にして、胸元の布幅(脇から衿付けまでの距離)を広くします。特殊な例では衽下がりを15cm位にしている方もいました。

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上の図で比較すればよく分かると思いますが、衽下がりを短く(剣先を高く)する事によって①よりも②の方が広くなっていることが分かります。もちろん、バストによって抱き幅(身八ッ口での脇から衽付けまでの距離)を広くしますが、抱き幅と前幅との関係や剣先までの衿付けの斜め具合も計算し、着る方の体型に合わせて寸法を変えて仕立てています。もっと、ふくよかな方は衿付けを湾曲させて付けたりもします。

 

「浴衣」で検索すると、着姿の画像がいっぱい出てきて、「ちょっとな~」と思うものもあります。また、ネットショップなどで見ることができますが、長襦袢?なのか嘘つき長襦袢?を着て半衿を出して浴衣?なのか単衣?なのか分からないものを着ている姿を「浴衣」として販売もしています。

もともと浴衣は、「湯帷子:ゆかたびら」ともいい、風呂上がりに着用する単衣の和服(帷子)のことで、汗を吸うように綿で出来ている物です。お殿様は、風呂上がりに浴びるように着て汗を取ったともされ、浴衣という名前が残っています。なので、夕方から着始める和服です。真っ昼間から、着ない和服なんですね~(お年を召した方がよく仰っています。チェックが厳しいですね(^_^;))

時代と共に浴衣も夏の風物詩、ファッションとしても取り入れられ、丈の短いものや、衿にレースをあしらったものなど色々あります。私としても和服を着ていただける事は、大変嬉しいのですが、「本来はこうなんだよ」ということも知りつつ、カッコ良く着ていただきたいなあ~と思います!

 

夏の和服地「絽」

梅雨も明け、夏本番となりました。暑いですね~

夏の和服地として、織り方の種類によって分類されるもので 羅(ら)・紗(しゃ)・絽(ろ)があります。

着用する時期は・・・・・・
  • 絽・・・6月中旬頃から8月末頃
  • 紗・・・7月上旬から8月まで(盛夏と呼ばれる時期の着用で9月からは着用できないとされています)
  • 紗袷(しゃあわせ)・・・盛夏には着用できなくて、5月中旬から6月までと、9月の1ヶ月間とされているようです。
  • 透けるもの・・・6月下旬頃から9月上旬頃まで

暦から「衣替え」などで、○○はもう着る時期ではないとか、お茶やお花、歌舞伎などの世界では守られている様ですが、昔からの暦に当てはまらなくなってきている最近の異常気象の影響で、和服生地の織り屋さんでは、絽とか紗が着られない時期でも涼しく和服を楽しめる様に、熱伝導率が良い和服生地などを研究開発をされているようです。また、それ以外に普段に和服を着られる方は、暦に関係なく和服を選択されている方も多いようですね。

 

「絽」の絽の目をよ~く見てみると

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絽の種類は、平絽・駒絽・紋絽・絽縮緬(ろちりめん)・絽綴(ろつづれ)などがあります。織り方は、平織りとからみ織りを組合わせたもので、縦糸と横糸をからめて絽目を作り、この横糸の本数から三本絽・五本絽の名前が付いています。(日本和裁士会発行 新版和服裁縫上巻 参照)

 

三本絽

三本絽

三本絽のものは、絽の目の間隔が細く、付下げや訪問着などに使われることが多いようです。

 

五本絽

五本絽

反物端に「五泉」の印が記されているものがありますが、新潟県の五泉市で織られているもので、五泉駒絽(五本絽)です。五本絽は喪服や小紋などに使われています。

 

七本のものもあります。

七本絽

七本絽

どれも横糸が奇数ですね。

本数を組合わせて変形させた絽もあります。

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横糸に強撚糸を使った「絽縮緬」

とてもしなやかで、涼しげですが、少々縮みやすい生地です。

絽縮緬

絽縮緬

きものの生地以外で絽の裏衿があります。

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横糸を数えてみると13本ありました。

糸の太さや本数で、絽の目の間隔が変わります。

絽

 

その他に、絽の帯もあります。

絽八寸帯 (かがり帯・袋名古屋帯)

絽八寸帯
(かがり帯・袋名古屋帯)

絽の目を拡大すると・・・・

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暑い時に、和服は洋服に比べて袖口や脇など隙間が多く風通りも良いので、組合の行事などに「洋服より涼しいから」と、和服を着て来る女性が多いです。ある女性の方は、脇をグッと紐で締めると汗が出ないとも言われていました。また、和服の薄い布がひらひらと揺れる様子は、見ていても涼しげですよね。

 

 

袖にまつわる慣用句

以前「都市伝説ならぬ幽霊の片袖伝説」という題名でブログにアップさせていただきましたが、辞典で「袖」を調べてみると、「袖」という字が入った慣用句が結構ありました。目にとまったものを幾つか紹介したいと思います。

辞典を見ていて感じたのは、「袖」という言葉で表現すると、直接的ではなく心情を奥ゆかしく表し、多彩です。特に涙にかかわることが多いように感じました。(小学館:大辞泉を参考にさせていただきました)

◆涙にかかわる袖

袖時雨・袖の雨・袖の浦(地名の場合もあり)・袖の氷・袖のしがらみ・袖の時雨・袖の雫・袖の露・袖の淵(ふち)・袖湊(そでのみなと)など

袖06

  • 袖に時雨る
    袖に時雨が降りかかる。袖に涙が落ちるたとえ。
  • 袖に露置く
    露がかかって袖が濡れる。また、涙で袖が濡れること
  • 袖に湊(みなと)の騒ぐ
    港に波が打ち寄せて騒ぐように、袖に涙がひどく流れること。
  • 袖を絞る
    涙で濡れた袖を絞る。ひどく涙を流すことを意味します。
◆あまり良くない場合に使う袖


袖03

  • 袖移し
    他人から見えないように自分の袖から他人の袖へ、こっそり渡すこと。内密に渡すこと。
  • 袖の下
    人目に付かないように袖の下から贈る物。内密に贈る物品や金銭。そでした・わいろ
  • 袖にする
    親しくしていた人を、ないがしろにする。冷淡にあしらう。
  • 袖乞い
    こじきをすること。また、こじき・ものもらい。
  • 袖の梅
    悪酔いや二日酔いの薬。
◆男女にまつわる袖


袖07

  • 袖褄を引く
    異性に言い寄ること。
  • 袖の別れ
    男女が互いに重ね合わせた袖を解き離して別れること
  • 袖返す
    袖を裏返しにする。こうして寝ると、夢に恋人が現れるという俗信があった。
  • 片袖敷く
    片袖を敷いて寝る。つまり、独り寝をすること。
◆その他


袖04

  • 袖打ち合わす
    かしこまって左右の袖を寄せ合わせる。相手に対する敬意を表す。(袖掻き合わすと同じ)
  • 袖にすがる
    袖にとりついて哀れみを請う。助けを求める。
  • 袖振り合うも多生の縁
    道で人と袖を触れ合うようなちょっとしたことでも、前世からの因縁によるものだ。(多生とは、何度も生まれ変わってくることを意味します。)
  • 袖振る
    別れを惜しんだりという意味と、好きな人に愛情を示したりするために袖を振るという意味。
  • 袖を連ねる
    大勢の人が連れたって行く。また、行動を共にするという意味。
  • 袖を通す
    衣服を着るという意味や、特にはじめてその衣服を着ることを意味します。
  • 袖を引く
    袖を引いて人を誘う。催促すること。また人の袖を引いてそっと注意することを意味します。

上記以外にも色々ありますが、「袖」を使って作文をしてみました。
若い頃、友人数人と起業し、何とか仕事を取る付けるために、新しいスーツにを通し、仲間とを連ね、打ち合わせ、にすがる思いで企業を回り、やっとの思いで大手企業との契約までこじつけた。数年間は順調だったが、不景気となり仕事が減ってきたある日、大手企業幹部から仕事を発注する代わりにの下を要求された。私は、従業員も数名抱えていたのでそれに従っていたが、仲間に発覚。次第に仲間からはにされ、さらに倒産をしてしまった。羽振りが良かった頃、褄を引いた女性達も、だんだんといなくなり、唯一だった彼女ともの別れとなり、を絞る毎日が続いた。やけ酒との梅を飲む日々が続き、貯金も底を突き、今では乞いとなってしまった・・・・・

」の慣用句は、ネガティブですね~ 何か、悲しいものがあります(T_T)

袖の他にも、「衿」や「裾」、建築物や建具にも使われている「褄」など調べてみるのも面白そうですね。

浴衣身丈直し

3年前に仕立てた男物浴衣の身丈直しの仕事依頼がありました。

お客様にお話を聞いてみると、毎年この時期にお祭りで浴衣を着て、クリーニング店に出したところ身丈が縮んでしまったようです。身丈を測ってみると約10cm縮んでいました。私どもでは、男物浴衣の反物から仕立てる場合、反物の長さや身丈にもよりますが、男物は対丈で着るために身丈は重要な寸法なので、後々身丈を伸ばせるように身頃などに内揚げや縫い代を入れて裁断します。また、男物浴衣以外の男物では、女物に仕立て直しできるように、縫い代を入れておくともされています。

今回のように縮んでしまった場合でも、ある程度内揚げや縫い代があれば、身丈を直すことができます。

  • 身丈直しをする場合、始めに確認をするのが、身頃の内揚げの量です。
    男物きもの 内揚げ
    裏側から見ると
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    摘まんで縫ってあるの内揚げです。男物の場合、殆ど前身頃と後身頃の内揚げの量は一緒です。縫い目から摘まみ山まで測って2倍すると身頃を伸ばすことができる長さです。
  • 次に確認しなければならないのは、衽の上・衿の中に入っている衽縫い代の量です。
    男物縫い代03
    身頃を伸ばしても、衽が届かない!という場合もあり、それでも直す場合には、胸の布幅が狭くなってしまうので、胸元がはだけるといった着辛い原因となります。身頃の内揚げ分+縫い代があるか、確認をします。(縫い目を解き、確認する場合があります)
  •  そして、衿先の縫い代も確認します。
    男物縫い代04
    およそ、内揚げ分の半分+縫い代があるか、確認をします。妻下寸法はは身丈の半分から計算しますので、内揚げ分の半分を目安にしています。この縫い代がないと、衿先が腰に掛からないといった事が起きます。これも、着にくさに繋がりますね。(縫い目を解き、確認する場合があります)

 

以上が、男物浴衣や単衣物の身丈直しをする場合、チェックする主なポイントです。今回のような、男物浴衣の身丈直し代は、手縫いの場合8,000円(税別)・ミシン縫いでは7,000円(税別)程度です。

 

女物浴衣の場合は、身丈に対して反物の長さも短く、身頃も繰り越しつまみ程度しか摘まんで縫っていませんので身丈を伸ばすことは、あまりできません。

 

 

都市伝説ならぬ「幽霊の片袖伝説」

私達仕立て屋には、先輩や師匠から言い伝えられていることがあります。それが「幽霊の片袖伝説」です。

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「幽霊の片袖」の話は、全国あちらこちらのお寺に掛け軸と共に伝わっていたり、片袖が寺宝として展示されていたり、落語にもなっていて、話の内容も様々です。
私が聞いた話しは・・・・・

とあるお寺の住職が就寝中のすぐ横で、誰かが歩く音を聞き、「泥棒だ!捕まえてやる」と思った住職は、とっさに手を伸ばし袖を掴みましたが、袖が取れ逃げられてしまいました。住職が寝ている部屋の床の間には、幽霊の絵の掛け軸が掛かっていましたが、翌日、その掛け軸を見ると、幽霊のきものの片袖が無くなっていた、というお話です。

 

で、修行中、片袖だけ身頃に付けずに残して1日の仕事を終えると、「幽霊が『私の袖では』と探しに現れる」とか「お化けが出るよ」と言われました。
袖を付けるのは、きものを1枚仕立てる工程の中で、比較的完成間近の作業です。(単衣のきものは最後に袖を付けます)理由は、身頃に袖が付いていると作業がしづらいためです。ですから、「もう少しで完成するのであれば、袖を付けて1日の仕事を終えなさい。」という戒めでしょうか。

信じるか、信じないかは あなた次第です。