帯について⑧(名古屋帯の寸法)

先回のおさらいにもなりますが・・・・名古屋帯の各寸法を詳しく。

名古屋帯もきものを止めるベルトのようなものです。トータル3.6m位の布を体に縛って巻き付けます。各部分の寸法にはどのような体型の方が締められても変わらない寸法と、体型によって変化する寸法があります。
上の図のように、変わらない寸法は、垂先からお太鼓柄中心までの距離68cm位と、お太鼓柄中心から垂境までの45~50cmです。
体型によって変化する寸法は、垂境から胴の柄中心までの距離です。この距離は、お腹の中心に、胴の柄中心が来るようにした場合の長さで、この距離の計算式は、胴回り/2+8~10cmを目安にします。胴回りとは、きものを着る時、体型のくぼみを補正し寸胴(ドラム缶体型)にして着るものとしていて、体型で一番太い箇所になります。その他、垂境から手先までの距離(手丈)も体型に合わせます。その長さは、胴回り×2+75~80cmを目安にしています。
帯地の長さはおよそ決まっていますので、計算式などを参考にして、少々手丈が足りまい場合は、垂丈の許容範囲内で短くし、垂境を移動させ、胴柄(前)のポイント柄までの距離と手丈を長くします。
連続した柄の全通帯や六通帯は、ある程度融通が効きますが、ポイント柄のものは、その辺りの長さはシビアになってきます。(※あくまでも目安の計算式です。実際に締めていただいて測ることを心がけています。)
ある程度長い分には畳み込めばよいのですが、短い場合には下図のように足し布をして長くする必要があります。

名古屋帯の直し物


・芯取り替え

以前紹介したものでは、お祖母様の名古屋帯に垂境と手先へ足し布をした名古屋帯や、お年を召した方で芯が硬いし重いとのことで、帯芯取替をしたことがあります。全く逆の芯が柔らかいので、硬い芯に変えたこともあります。

・丈直し

名古屋帯でも、丈の短い物に足し布を足して長くすることができます。お太鼓結びでは、袋帯は二重で名古屋帯は一重です。お太鼓(垂丈)の長さは違いますが、ポイントとなる寸法は同じように考えています。下図は、その比較したものです。袋帯と同様に手丈が短い場合には、手先きで継ぎます。お太鼓のポイント柄から胴のポイント柄までが短い場合には垂境で足し布を足すことができます。


名古屋帯の帯芯に真綿を薄く引くことがあります。

・帯芯について
名古屋帯の帯芯は、袋帯と比べやや厚手・堅めのものを使います。帯芯の種類は、千差万別で新モスのように薄いものから、帆布のような厚手もの、縦糸に絹、横糸に綿の糸で織ってあるもの、100%絹のもの、毛織芯、起毛芯、夏帯の絽など透ける帯に使用されるカラー芯や軽涼芯などなどあります。

2024年3月15日 | カテゴリー : | 投稿者 : 和裁屋

帯について⑦(名古屋帯について)

今回からは名古屋帯についてです。
名古屋帯が考案されるまで女性の帯は丸帯や腹合わせ帯(現在の袋帯のようなもの)など、胴の部分で二つ折りにして締めていたものが、大正時代後期に名古屋地方で考案された現在の名古屋帯は、腹合わせ帯と半幅帯を合わせ備えた帯として「文化帯」とも呼ばれ流行しました。


名古屋帯地の織物では紬や博多織、花織、紗や絽、有職文様や刺繍の施してあるものなどがあります。また、塩瀬羽二重や縮緬などに友禅染めや紅型などの柄を染めてあるものがあり、絹・麻などの他に、特殊なものでは和紙を柿渋でコーティングして織ったものなどもあります。

名古屋帯の反物の幅は35cm~38cm程度、長さは4.6~4.9m程度です。袋帯と同様に全通柄・六通柄・ポイント柄の物があります。
下図のように、お太鼓の部分を「垂:たれ」、その長さを垂丈、垂れの先を垂先といいます。お腹に巻く胴の部分を「手:て」、その長さを手丈、手の先を手先といいます。垂境は、出来上がりで垂の広がっている部分と、手で垂幅の約1/2幅に縫い合わせてある部分との境目で、名古屋帯を作るのに重要なポイントの一つです。

出来上がりの垂幅は30cmからで、体型によって1~2cm程度広くします。手幅(前)は、垂幅÷2を基準にしますが身長や年齢などによって加減します。例えば、高身長の場合は手幅(前の幅)をお太鼓幅/2より広くします。長さは体型によって変わります。


袋帯は二重にお太鼓を締めますが、名古屋帯は一重に締めます。名古屋帯の垂先から手先までの長さは3.6m位で、袋帯と比較すると65cm位名古屋帯が短くなります。

垂先の決め方
名古屋帯は体型によって、手丈など各部分の寸法が変化しますが、垂丈・垂境や手丈などの各寸法の起点となるのが垂先です。また、ポイント柄の名古屋帯は垂先・垂境の位置によって締めにくくなる場合もあります。垂先は、織り留め(かいきり線)がある場合や、垂(お太鼓)柄中心から決める場合があります。また、垂先を「わ」のまにする場合と、摘んで縫う場合があります。垂先に落款(作家の印)などがある場合などもあります。垂裏の長さ、ポイント柄中心から垂先の距離、垂丈・手丈などをよく確認して垂先を決めます。


1.垂表と垂裏の織り留め合わせる場合


2.織り留めの9~10cmのところを垂先とする場合


3.垂表の柄端から数ミリのところを垂先とする場合


4.お太鼓ポイント柄中心から測って垂先を決める場合


5.垂先を縫い摘む場合

垂丈について
垂裏の長さを確認し、垂先から垂丈106~114cmのところを垂境とします。ポイント柄のものは垂先からお太鼓柄中心までの距離が68cm位で、お太鼓柄中心から垂境までの距離が45~50cm位です。これらの寸法は、体型にはあまり関係ありません。垂境から手柄中心(前柄中心)までの距離は、胴回/2+8~10cmを目安にします。以前は標準で45~47cm位でしたが、最近は56cm位のものが多くなってきました。垂境の位置によって手丈も決まってきます。また、ふっくらした方でお太鼓柄中心から手柄中心までの距離が足らない場合は、垂境で足し布を継ぎます。


手丈について
垂境から手先までの距離を手丈と言います。手丈は227~265cm程度で計算では胴回×2+75~80cmを目安にしています。

日頃、これらの長さを測って、確認して仕立てを行っていますが、必ずしも当てはまるわけではありません。きものを仕事で使われていて、ご自分で着られている方で垂丈が98cmの方もいました。戦後、物がない時代では胴に一重しか巻かない方など、こだわってらしゃる方もみえますので、出来るだけ帯の締め方のお話を聞き、一番締めやすいものを見せていただけるようにしています。

2024年3月1日 | カテゴリー : | 投稿者 : 和裁屋

帯について⑥(袋帯購入時の注意点など)

袋帯を購入される際に、一番気になるのが、きものとの柄や色目でしょうか。その次に注意したいのが、サイズです。締められるのかどうか、極端に短いものもありますので、店員さんに確認、または実際に締めてみましょう。

前回、袋帯の寸法より計算した出来上がりの長さは以下の通りになります。

  • 胴回り80cm以下・・・4m10cm以下
  • 胴回り85cm・・・・・・4m20cm位を目安 
  • 胴回り90cm・・・・・・4m30cm位を目安
  • 胴回り95cm・・・・・・4m40cm位を目安
  • 胴回り100cm・・・・・・4m50cm位を目安

(上記、絞め方によっては+-20cm位。ポイント柄の場合はその他細かい寸法に注意)

そして一番やっかいなのは、表と裏のつりあいです。袋帯のほとんどは、表生地と裏生地が縫い合わせてあります。帯を広げてみて、畳んであった折り山に注意してみてください。手で触って妙にボコボコしているものは、修正可能なのか、直してもらえるのか、店員さんに聞いてみるのがよいでしょう。


私たち仕立屋では、仕事の依頼があると、長さを測り、お客様の体型から、全通柄、六通柄・ポイント柄などで、およそ締めることができるかを判断します。傷や汚れがないか検品をし、表と裏のつりあいも確認します。この時点で締められないもの、傷・汚れがあるもの、つりあいの悪いものは、呉服店で確認をしていただいたり、直接持ってこられたお客様に対しては説明をさせていただいています。その後、布生地を整えるために、アイロンで地直しを行います。地直しは袋帯に限らず、仕立ての最中や、その後にも生地の縮みを防ぐために行います。しかし、耳端縫いされている袋帯は、表と裏の素材や織り方によって伸縮率が極端に違い、どちらかがとても縮んでしまうもの、例えば表生地が縮んでしまう縮緬、裏生地がほとんど縮まない紬といった組み合わせは、つりあいが狂ってしまう恐れがあるので極力アイロンを当てないようにします。表裏耳端縫いをしてある状態で販売されている以上、こういった問題は起こってしまいます。また、織り方や織り糸の種類によっては撥水加工を施して縮んでしまうものもあります。つりあいの悪さを修正するのには、端縫いを解き、地直しをして端縫いをしなおす方法しかありませんが、本袋帯の場合は、縫い目がないので修正はできません。
私の経験ですが、以前、呉服店より表生地と裏生地を縫い合わせるところから仕立てる袋帯の依頼がありました。通常の温度のアイロンで生地の地直しをし、両端を縫い合わせ、帯芯を入れ仕立てをしました。その後、呉服店がお客様の要望で仕立て上がった帯に撥水加工を施したため、表生地が縮んでしまい裏地がゆるんでしまいました。修正しましたが、それ以来、端縫いから仕立てる袋帯の地直しは、当て布に霧吹きを吹いて、スチームアイロンで、ゆっくりじっくり時間をかけて縮めます。どのくらい縮むのかと1m間隔に糸標を付けて測ってみたら、3cm程縮んでしまったものもありました。全ての生地が縮むわけではありませんが、表と裏生地の組み合わせによって差が生じます。帯類に限ったことではありませんが、地直しは重要な作業です。

袋帯の直し物について
長年締められている袋帯で、表生地と裏生地の素材が違うことや帯芯が縮んで、波打つほどつりあいが悪くなってしまうケースがあります。そのような帯は端縫いを解き、それぞれしっかりとアイロンで地直しをし整えてから、仕立て直しすることができます。

丈が短い場合
手の長さが足りない場合、少しならば手先の柄の境目で継ぎ足すことが出来ます。とても長さが足りない場合、特にポイント柄の帯はお太鼓の柄と胴の柄(前柄)の間の垂境でも継ぎ足しすることができます。

2024年2月16日 | カテゴリー : | 投稿者 : 和裁屋

帯について⑤(袋帯はサイズがあります)

袋帯もきものを止めるベルトのようなものです。4m位の布を体に縛って巻き付けます。各部分の寸法には、どのような体型の方が締められても変わらない寸法と、体型によって変化する寸法があります。


上の図のように、変わらない寸法は、垂先からお太鼓中心までの距離で133cm位です。体型によって変化する寸法は、お太鼓柄中心から、胴の柄中心までの距離です。この距離は、お腹の中心に、胴の柄中心が来るようにした場合の長さで、昔は90~95cm位でしたが、近年、ふくよかな方も結構いらっしゃるので、現在の袋帯は1m前後のものが多いようです。この距離の計算式は、胴回り/2+53~55cmを目安にします。胴回りとは、きものを着る時、体型のくぼみを補正し寸胴(ドラム缶体型)にして着ますので、体型で一番太い箇所になります。その他、お太鼓柄中心から45~50cmのところを垂境とし、そこから手先までの距離も体型に合わせます。その長さは、胴回り×2+75~80cmを目安にしています。連続した柄の全通帯や六通帯は、ある程度融通が効きますが、ポイント柄のもので、短めのものはシビアになってきます。(※あくまでも目安の計算式です。実際に締めていただいて測ることを心がけています。)

ある程度長い分には畳み込めばよいのですが、極端に短い場合には、足し布をして長くする必要があります。(後日説明をします)

2024年2月2日 | カテゴリー : | 投稿者 : 和裁屋

帯について④(袋帯の手先・垂先・帯芯について)

・織り留めの出し方
袋帯の垂先・手先には、太い線が織られていて、私たちは、「織り留め」とか「織り出し」「かいきり線」と言っています。


呉服店または関西・関東によっても垂先の出来上がりが違います。関西圏あたりでは、「織り留め」を出し、中部地方から東の関東圏あたりは「織り留め」を隠します。

関西圏の垂先

全国でチェーン展開する関東の大手呉服店では、統一された仕立て方により、関西圏でも「織り留め」を隠したため、その仕立て方が全国に広がってしまったと聞きます。

・手先・垂先の仕立て方
手先・垂先を表からスカラップかがり(束かがり)などでかがる方法、

拡大写真

出来上がり折り山のすぐ際の縫い代を裏から縫い合わせる方法、

出来上がり折り山より数センチ深く縫う「比翼仕立て」

袋帯比翼仕立て

または、比翼仕立てで数センチ深く千鳥かがりをする方法などあります。

千鳥かがり
拡大写真


また、比翼仕立ての場合、内側に呉服店や撥水加工のタグなどを付ける場合もあります。

・帯芯について
帯芯は、袋帯や名古屋帯などに入れ、呉服店によって芯の堅さに特徴があるようです。帯芯の種類は、千差万別で新モスのように薄いものから、帆布のような厚手もの、縦糸に絹、横糸に綿の糸で織ってあるもの、100%絹のもの、毛織芯、起毛芯、夏帯の絽など透ける帯に使用されるカラー芯や軽涼芯などなどあります。袋帯にはどちらかというと、柔らかめ・薄手のものを使うことが多いです。

2024年1月19日 | カテゴリー : | 投稿者 : 和裁屋

帯について③(袋帯について)

今回は、袋帯についてです。元々の原型は丸帯で、腹合わせ帯(鯨帯・中合わせ帯・昼夜帯)となり、時を経て袋帯となりました。締め方は、前(胴)は幅を二つ折りにして二重巻き、お太鼓結びでは二重太鼓で、他には振袖などに変わり結びができます。


売られている多くの袋帯は表裏の耳端縫いをしてあり、幅は30~32cm、仕立て上がりの長さは4.2~4.5m位でしょうか。昔、袋帯の長さは1丈1尺(=4.2m)と言っていましたが、近年、振袖には変わり結びをするためや、ふくよかな方にも対応するため、少々長くなり、出来上がり4.5m位の帯も珍しくはありません。

袋帯の柄位置によって大きく3種類に分かれます。※仕立て前の状態です。
・全通柄(ぜんつうがら)
端から端まで帯全体に柄があります。


・六通柄(ろくつうがら)
お太鼓から胴に巻く部分と、手先に柄があり、約6割の部分に柄があるもの。


・ポイント柄
お太鼓と胴に特徴的な柄があるもの。

売られている袋帯は、表生地と裏生地の耳端が合わせて縫ってあるものがほとんどです。その縫い方は3種類で、1つ目は裏側から縫い合わせてあるもの。

袋帯 端縫い

2つ目は出来上がりをジグザグに縫ってあるもの。

袋帯 ジグザグミシン

3つ目は数が少ないですが、縫い目のない本袋帯です。

紗 本袋帯(縫い目無し)


1つ目と2つ目の縫い方で、どれが正式ですか?と質問がありましたが、私の知る限りどれが正式ということはありません。一つ言えることはジグザグミシンの場合、お稽古とか、頻繁に使われる帯の場合、表に糸が出ていますのでお太鼓やお腹に巻くあたりとか、よく触る同じ箇所がすれて糸が弱くなりほころぶ可能性はあります。

袋帯の擦れ
2024年1月5日 | カテゴリー : | 投稿者 : 和裁屋

帯について②(帯の歴史)

弥生時代の男性は布を体に巻き付けた様な衣類で、女性はポンチョのような衣類でした。日本の帯の歴史は、それらを縄の紐を使って体に固定したものが帯の始まりです。


 古墳時代では、埴輪の姿に見られるようにツーピースの衣類を着るようになり、飛鳥・奈良時代では大陸からの文化が大量に入った時代です。聖徳太子が着ているような礼服が定められ、帯は装飾品としての役割が与えられるようになりました。


 平安時代では十二単などのようにゆったりとした衣服が好まれるようになりましたが、庶民は筒袖の付いた小袖を着ていました。時代が進み小袖が発展するにつれ、帯の装飾も徐々に変化して行きました。
 「帯:おび」と呼ぶようになったのは、室町時代以降、全国的に「帯」という名称が広がったのは江戸時代初期ぐらいからとされています。当時の帯は、今の男物角帯より細かったそうで、組紐や上着と同じ布を使っていました。帯の幅が広くなったのは、江戸時代後期で、男女共に幅や丈、染色方法、結び方などが急速に発展しました。特に女性用は著しく発展し、広い帯を締めるのはステイタスシンボルで、同時に袖付けが短くなり振りや身八ッ口ができ、袖丈が長くなりました。その結果、最も完成された帯が「丸帯」(丸帯は広幅の布を半幅に折って作ります)でした。


江戸末期、男性用帯は現在とほば同じとなり、女性用も現在の袋帯と同じサイズの腹合わせ帯(鯨帯・中合わせ帯・昼夜帯)もしくは丸帯が平常着や礼服に使用されるようになりました。腹合わせ帯は、それ以降大正時代まで流行しました。

丸帯


 大正時代末期頃、現在の名古屋帯(文化帯)が考案され、値段の安さと結び方が簡単なことから流行しました。
 さらに時代は進み、昭和時代となり、丸帯は高価なため、広幅の丸帯の生地を半分に切り、裏地を付けて両耳を縫ったことが現在の袋帯の始まりです。丸帯の長さも丈も同じでコストパフォーマンスが高く、現代では袋帯が主流となりました。本来の袋帯とは、縫い目がなく袋状に織ったものを「本袋帯」「丸袋帯」いい、両端を縫ったものは「縫い袋帯」といいます。

十二単は何枚も重ねてきますが、上に重ねて着る度に、下の腰紐を抜き、最後は一本の紐で止められているそうです。

2023年12月29日 | カテゴリー : | 投稿者 : 和裁屋

帯について①

和服姿を思い浮かべると、帯の役割は結構重要であることが分かります。きものを留めるベルトの役割以外に、柄や色目によっては小粋に見えたり、締まって見えたり、女性は腰高に帯を締めるので、すらっとした感じに見えます。もし、ただの紐だったら、きものともマッチしませんし、和装のイメージとしてかけ離れたものになってしまいます。

帯と言えば、まずは袋帯でしょうか。織物が主流で錦織や唐織りなど、金糸銀糸を使った豪華なものもあります。結婚式など格式が高い組み合わせは「染めのきものと織りの帯」といわれ留袖や訪問着・振袖などに合わせて袋帯は締められます。


次によく締められるのは、名古屋帯でしょうか。袋帯より格式は下がりますが、塩瀬羽二重や縮緬に柄を染めたものや、柄を織ったもの、刺繍を施したものなどもあります。ちょっとしたお出かけなどの街着・遊び着には、紬や小紋・無地のきものに名古屋帯を合わせます。


袋帯・名古屋帯以外には、丸帯、子供用帯、八寸名古屋帯(袋名古屋:綴帯などのかがり帯)、半幅帯、角帯、兵児帯などがあり、名古屋帯の形を変えた仕立て方では開名古屋帯、松葉仕立て、京袋帯、二重太鼓トンネル仕立て、作り帯や付け帯(切り帯)などがあります。

2023年12月15日 | カテゴリー : | 投稿者 : 和裁屋

浴衣の帯について

女性が浴衣に合わせる帯として一般的なのは「半幅帯」です。

半幅帯の文庫結び

半幅帯は、浴衣以外にもウールなどの普段着や羽織の下に締める帯としても使われています。絹の博多織が有名ですが、紬織の物やウールといったものもあります。化繊もありますが、とても滑る素材のものは締めにくいので注意しましょう。幅は15~16cm、長さ3.4~3.6m位ですが、市販品の物で幅17cm、長さ4.3mという帯もあります。

半幅帯・貝の口


半幅帯以外では、絞りや縮緬、紬などを用いた兵児帯(へこおび)があります。柔らかく、蝶々結びのように簡単に結ぶことできます。昔は、子供や男性用の帯とされていましたが、最近では女性も締めている姿が増えてきているようです。兵児帯の幅は大幅物68cm位、長さ3.8m位です。

兵児帯

男性が浴衣に合わせる帯は、角帯や兵児帯です。角帯は半幅帯より狭く出来上がり幅は8.4cm~9.5cmで、長さは4~4.2mです。博多織や綴織が有名で、デザイン柄を織った紋織や紬があり、その形は袋状になったものや、単帯、二つ折りになっているものがあります。

角帯・半幅帯・兵児帯を並べるとこんな感じになります。

半幅帯の仕立ては、袋状のものや単帯の裁ち切り端をかがったり、くけたり、三つ折りにしたりします。また、きものの古着で作ったり、ご夫婦で、袋帯を半幅帯と角帯にしたりと、布さえあればいろんなアイデアは広がります。

2023年6月30日 | カテゴリー : | 投稿者 : 和裁屋

お祖母様の名古屋帯を仕立て直し

お客様から「名古屋帯を長くできませんか?」と、メールをいただきました。内容を詳しく尋ねたところ、お祖母様が若い頃締めていた名古屋帯です。黒地に刺繍の草花があしらってあり、とても柄が気に入って締めてみたところ、お腹の柄(胴の柄)がうまく出ないのと、手(胴に巻く部分)が短いとのことでした。「丁度良い締めやすい帯を一緒に送っていただけたら、寸法を確認し、見積もりいたします。」とお返事したところ、お客様から早速送られてきました。

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まずは、ポイントとなる各部分の長さを測ってみると・・・・・・

お太鼓の長さは、丁度良い長さですが、やはり垂境(三角になっているところ)から胴の柄までの距離と手丈が短いです。

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名古屋帯の基本的な寸法です。

名古屋帯の基本的な寸法です。

名古屋帯の柄の位置です。

名古屋帯の柄の位置です。

 

垂境から胴の柄までの距離は、現在の名古屋帯では約57cm位ありますが、この帯は約45cm。昔の物ですので、短くできています。手丈は約224cmで、現在の並寸法は約260cm前後のものが多いので40cm近く短くできています。ちなみに戦中、戦後の物資が足らない時代は、お腹に一重しか巻けない名古屋帯があったそうです。

そして、今では殆ど仕立てられることがないポケット口が付いていました。手先の方に袋状に開いている物で、小物を入れるポケットではなく、帯板を入れるためのポケット口です。

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このポケット口は、体型にもよりますが、手先から中心まで約110cmの所に開けます。

(一社)日本和裁士会編 新版和服裁縫下巻より

(一社)日本和裁士会編
新版和服裁縫下巻より

 

そして、生地の状態をよく見てみると・・・・・

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角は、擦れて薄くなっていたり、

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垂先の、摘まんで縫ってある部分も、陽にかざしてみると薄くなっています。

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とても古い物は、触っただけでポロポロと生地が裂けてしまうものもありますが、今回の生地はそこまで劣化はしていません。でも、耳に切り込みが入っていて、もしかしたら、締めている最中に力が加わると裂けてしまう恐れがあります。

お客様に、この状態を説明し、全面に薄い接着芯を貼ることを提案させていただきました。

しっかりと生地のよれをアイロンで直し、垂先を直角に置き、布幅に裁断した接着芯を貼ってゆきます。

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P1100840

次に、寸法の足らない部分の2箇所に、帯布を継ぎ足します。

名古屋帯足し布

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後は、いつも通りに仕立ててゆきます。

私たちが仕立てた物には他の仕立て屋さんが見ても分かるように、仕立てた内容、寸法などを記入したものを付けてお客様へお渡ししています。

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今回の仕立て代は、

・解き・簡易地のし

・接着芯等

・継ぎ足し布等

・帯芯

・仕立て

など合計25,000円程度でした。

昔の生地は、しっかりとした良い物もあります。仕立て直しで蘇ることもできますよ。