名古屋帯の真綿引き

名古屋帯の真綿引き

最近、帯芯の種類が増え、キラキラの帯芯やら、軽涼芯、起毛芯、真綿芯などなど・・・

昔は帯芯のことを「ゴム芯」と言っていた方がいました。綿製ですがゴムのように?伸び縮みがあるのでそのように言われていましたが、現在では防縮加工や防カビ加工されているものが殆どですね。

透けるもの、帯地が薄いもの、用途や好みに合わせて帯芯を変えたり、ある程度、御客様にアドバイスもしています。

その帯芯の中で、主に塩瀬羽二重の名古屋帯に使用され、芯の片面に帯地とくっつきやすいように綿飴(綿菓子)のようなものを施した帯芯があります。色々、帯芯屋さんも考えているんだな~と感心させられます。

そんな帯芯がない頃、塩瀬羽二重の名古屋帯の仕立ては、普通の帯芯に真綿を引いて仕立てていました。必ず真綿を引いていたわけではありませんが、呉服屋さんの指示やお好みで真綿を引いていました。

実際は帯芯に真綿を伸ばしてくっつけます。

保温性を持たせるわけではなく、帯地と帯芯があまりずれないようにするためと、ちょっとボリュームを持たせるために、真綿を薄く引きます。使用するのは角真綿で、布団屋さんなどで販売していました。

角真綿

薄い一枚を接がし、手で伸ばして帯芯にくっつけます。

現在、呉服店でもこの仕立て方を知っている方はあまりいないんじゃあないかな?

作り帯・切り帯

作り帯・切り帯

最近、作り帯や切り帯の仕立て依頼がちょくちょく来ています。これらは、簡単に帯を締めるために工夫されたもので、早く着付けをしたいとか、腕が回し辛くなった方などに好評です。

呼び名は地方によって色々あると思いますが、作り帯は帯を切らずに作る仕立て方で、切り帯とか、付け帯はお太鼓(垂)・胴・手先の三つの部分に切って作ります。

・作り帯

切らずにお太鼓(垂)部分を畳み、手先をお太鼓に差し込み、胴回りを二重にし、紐を付けます。

お太鼓の大きさや手先を出す量は、お好みで、少々短い帯でも締められるメリットはありますが、上の写真の様に胴・手(お腹)のポイント柄の場合、初めに決めた位置から自由に動かせないというデメリットがあります。

・切り帯

作り帯に対して、お太鼓(垂)・胴・手先の三つのパーツに切って、お太鼓(垂)と手先を組み合わせて畳んで綴じ、胴には両端に紐を付けます。この形以外にも、お太鼓結びの形に畳まず、垂に手先を付けただけのものもあります。上の作り帯に対して、胴(手)が切り離されていますので、お腹のポイント柄の位置はある程度自由に移動ができます。

デメリットは、やはり切ってしまうことですね。切る位置は締めた時に見えない位置ですので、継ぎ足せば元の帯に戻りますが、長さは短くなります。

・変わり結び

切り帯(変わり結び)

日本舞踊を踊っている方からの依頼で、見本をお借りし、袋帯を変わり結びにしました。但し、真っ平らにはならないので、保管には箱に入れて収納しないといけませんね。

【注意点】

以前、作り帯や切り帯にしていない長い帯に締め慣れている方に、切り帯を締めてもらったところ、「締め辛い」とのことでした。いつも締め慣れているものが、一番でしょうか?

また、着付け初心者の方は、古い帯を切り帯にしたところ締めやすいと好評で、その後、何本も持ってこられました。

現在、七五三などの既製品で裏側に金具が付いていて、胴(手)に差し込むだけで簡単に締めることができる帯が出回っています。これで気軽に着物を着ていただけることには嬉しいのですが、歩く後ろ姿はパカパカと浮いて、おかしなものもあります。着物を使うTPOに合わせて帯も使い分けないといけないのでしょうね。

こんな名古屋帯 作ってみました。

こんな名古屋帯 作ってみました。

ネットで調べると、けっこう販売している「両面名古屋帯」 「リバーシブル名古屋帯」を別の形で

和裁屋風にアレンジして作ってみました。

初め作ってみたのは、垂境(お太鼓と胴の境目、半幅になっている部分)がゴロゴロするので、切って真っ平らにしたらと思い・・・・

両面名古屋帯(試作)

何か、垂境の角のところが邪魔かな・・・・・・・・・・というわけで、切り落とし

切り口を始末して、着付けてもらいました。

反対の面では、

横から見ると、裏面が覗きます。

作ったのは、お正月休みでしたので、めでたい柄の生地を手芸屋さんで調達しました。

家内曰く「垂境のところがすっきりして、何となく締め易いかな」

生地の素材が綿製なので、ちょっと滑りが悪いとも言っていました。この帯自体は真っ平らなので、畳みやすいですね。表裏のコントラスト、素材を考慮するのが、今後の課題でしょうか・・・・

でも、あちらこちら切ってしまっているので、この帯を作ったあと何かに・・・というのは難しいですね。古くなった着物や袋帯などで、作ることができそうです。

2015年8月1日 | カテゴリー : | 投稿者 : 和裁屋

「俵かがり」をやってみました・八寸名古屋帯(かがり帯・袋名古屋帯)の色々な仕立て方

「俵かがり」をやってみました・八寸名古屋帯(かがり帯・袋名古屋帯)の色々な仕立て方

 

名古屋帯は、生地の幅によって呼び名が変わります。約36cmの幅の物を九寸名古屋帯、約30cmの幅の物を八寸名古屋帯と呼びます。

九寸名古屋帯の生地は、紬や縮緬、塩瀬羽二重などがあり、中に帯芯を入れます。それに比べ八寸名古屋帯は生地の厚い博多織や綴織りなどがあり、帯芯は入れません。耳端をかがり、仕立てます。締められる方の好みで、生地が薄い場合や厚目が良い方は、お太鼓や手の裏側に帯芯を綴じ付ける場合もあります。

 

◆八寸名古屋帯の仕立て方は、大きく別けて3種類あります。

1.総かがり

 

総かがり

 

お太鼓、胴(垂れ境から手先)全てをかがります。出来上がりの形は九寸名古屋帯と同じですが、耳端をかがりますので、九寸名古屋帯のように帯幅の融通はききません。

 

2.松葉かがり

 

松葉かがり

 

垂(お太鼓)は全部かがり、手先から約38cmかがります。胴の部分はかがっていないので、好みによって幅を変えることが出来ますが、帯地の厚みにもよりますが、幅が決まらずプカプカして浮いてしまう場合もあります。

 

3.トンネルかがり

 

トンネルかがり

 

垂先から20~30cm程度と、垂境から約10cmをかがり、お太鼓中心はかがりません。夏帯の絽や紗の場合に、この様な仕立て方をする場合があります。お太鼓中心は、かがっていないので、2枚の布が重なり動く様が涼しげです。手先は細く三つ折りにして、ミシンで押さえたり、くけたり、かがったりします。「2.松葉かがり」の様に手先のみ短くかがる場合もあります。

 

◆かがり方について

かがり方の方法として、巻きかがり・スカラップかがり・千鳥かがり・俵かがりがあります。帯地の織り方、色、などを考慮して一番目立たない方法でかがります。

 

巻きかがりの様子

 

上の写真は巻きかがりの様子です。

 

私は、4cmの間に38針程度でかがっています。

 

間隔は、帯地にもよります。

 

◆特殊なかがり方・俵かがり

私が和裁の世界に入った頃(今から約30年前)、綴帯の垂裏には織り止めから数10cm位(記憶は定かではありません)無地の部分が長く織ってあり、その部分の横糸を取って、かがりの糸にしました。現在ではその無地の部分が付いている綴帯は少なくなったような気がします。無地の部分から取り出した織り糸を使って、耳端を三つ編みのように、かがってゆくのが「俵かがり」または「蛇腹かがり」です。

 

2つの駒に糸を巻きます。特大の安全ピンで作った物です。

 

取り出した糸を駒に巻き、特大の安全ピンで作った物にセットし、穴に通します。写真は三つ編みの状態が分かるように、糸の色を変えてあります。

 

けんちょうき(懸吊機)を2台くっつけて布を張ります。(撮影のため短い布を使っています)

 

けんちょうき(懸吊機)2台を紐で縛り、2つの掛け張りを使って布を張ります。(撮影のため帯芯で短い布を使っています)

 

俵かがり

三本の糸を使ってかがります。

 

かがり始めは、2つの駒に巻いた糸の結び目を、布の間に入れ、かがる糸で固定します。(撮影のため、糸の色を変えています)

 

俵かがり

 

駒を返す順序を間違えないように、かがってゆきます。

 

私は、このくらいの間隔でかがっています。

 

この様に、三つ編みのかがり方が俵かがりです。実際は同色の糸でかがります。

 

結構、時間がかかって、目が疲れます~

 

本綴総かがり(俵かがり)の仕立て代は25,000円(税抜き)です。

帯にも寸法があります。(帯について その1)

帯にも寸法があります。(帯について その1)

帯について説明します。

名古屋帯を締めたところです。

帯でよく締めらている「袋帯」と「名古屋帯」の寸法です。

1.名古屋帯の寸法

名古屋帯の基本的な寸法です。

お太鼓(垂)と胴に締める境目(三角に畳んでありかんぬき留めのところ)を垂境と呼びます。そこから、お太鼓の先(垂先)までの長さを垂丈といい、垂丈は体型にかかわらず105cm~115cm位です。

特殊な方で98cmで仕立ててくださいという方もいましたが、ごくまれなケースで、この長さが一般的です。

垂境から胴に巻く部分を「手」と呼び、その長さを手丈といいます。手丈はヒップ寸法に合わせて決めます。適当に仕立ててしまうと、ふくよかな方で手先がお太鼓まで回らないといったことが起こります。

ヒップ寸法に合わせるのは、きものを着られる時に、補整をし、寸胴体型にしてきものを着られるため、体型で一番太いホップを目安にします。

おおよそヒップ85cmの方で手丈は245cm位、90cmの方で255cm位、ヒップ100cmの方は275cm位です。絞め方にもよりますが計算をして目安にしています。

名古屋帯の幅は、垂幅を約30cm、手幅を約15cmを基本とし、垂幅÷2=手幅となっています。ふくよかな方は垂幅を31cm位にしたりします。また、背の高く痩せている方は手幅のみを広くしたり、背が低くふくよかな方は、垂幅のみを広くすることも可能です。

現在、名古屋帯の生地は、総尺(布端から布端の長さ)約4.7~5m弱、幅は35cmのものが多いようですが、比較的塩瀬羽二重などの染物の名古屋帯が長めの帯地となっているようです。

2.名古屋帯の柄の位置

名古屋帯の柄の位置です。

全通柄(全体に柄があるもの)や六通柄(垂先から手の途中、無地の箇所を挟んで手先に柄があるもの)以外で、ポイント柄の名古屋帯では垂境をどこにするのかがポイントとなります。

「1.名古屋帯の寸法」の各箇所の寸法とを加味して、垂丈の長さが融通が聞くので、手丈や手の柄中心を測って垂境の位置をきめます。垂境から手柄中心までの距離は、おおよそヒップ85cmの方で51cm位、ヒップ90cmの方で54cm位、ヒップ100cmの方は59cm位です。

3.袋帯の寸法

袋帯の基本的な寸法です。

袋帯は二重太鼓に結びますので、その分垂丈が長く、その他は基本、名古屋帯と同じです。

主に端を縫ってあるものが殆どで、帯幅は30cm~31.5cm位で、近年は31cmの幅のものが多いです。

柄は名古屋帯と同様、全通柄(全体に柄があるもの)や六通柄(垂先から手の途中、無地の箇所を挟んで手先に柄があるもの)、ポイント柄のものがあります。

名古屋帯も、袋帯も、手丈がプラスマイナス10cm~15cm位は締められますが、30cmも40cmも短かったり長かったりするものは、大変締めづらい、または、締めることが出来ません。

着る当日になって「あれ?長さが足りない!」っていう方がみえますので、購入時や仕立ての際には、「この帯、締められますか?」と聞いた方が良いですね。昔の帯で極端に短い物もあります。30年ほど前の帯の並寸法では、現代の女性の体型には合わなくなってきている帯地もあります。

長さは端から端までで4.5m~4.9m位のものが多いですが、縫い代が長く付いているものもあり、織り留め(太い織り線)の位置や柄付けなど、出来上がりの長さを確認してください。また、振り袖などに変わり結びをする場合は長めの帯(出来上がり4.5m位)を選ぶと良いでしょう。