寸法直しについて④

譲ってもらったきものや、古着屋さんやネットから購入したきものなど、寸法直しの依頼が多くなっています。今回から、寸法直しについて説明します。第四回は袖丈や繰越直しなどについてです。

○その他の寸法直し

・袖丈直し・丸み直し

袖底(袖下)を縫い直します。縫い代があるか?色やけがないかなどがポイントです。

男物は女物と違って、振りや身八ッ口がありません。男物きものの場合は、袖付け=袖丈―詰め人形(10cm)なので、袖丈によってある程度袖付け寸法が決められていますので、脇を縫い直す必要がある場合があります。男物羽織の場合は袖丈=袖付けなので、短くする場合は、襠に縫い代があるか確認が必要です。短くするのも、長くするのも襠を縫い直さなければなりません。

・袖付け直し

女物の通常の袖付けが21~23cmですが、胸高に帯を締める振袖の袖付けは、17cmと短いものがあります。ふくよかな肩が着ると、袖付け下から二の腕が見えてしまうということがあります。その場合、袖付けや身八ッ口を長く直すことができます。

・繰越直し

繰越を多く(深く)する場合、簡単に直す方法は衿を取って、背での縫い代を深くする方法があります。逆に繰越を少なく(浅く)する場合は、衿肩明きの位置を前身頃側へ移動させなければならないので、後身頃の揚げを伸ばして、前身頃の揚げを縫い込みます。衽も腰から上は縫い直しをします。

繰越直し

・ほころび直し

寸法直しではありませんが、布が裂けたり、縫い糸が切れてしまったところを補修するほころび直しの多い箇所は、袖付けです。やはり、力が加わるところですね。袖付けは、しっかりと糸で留めているので、布が裂けます。裂けて穴が開いた箇所は、裏側から補強の布を当てて、縫い直しますが、同じ箇所なので、少々弱くなってしまいます。きものを仕事着にしている方は、袖付けは裂けやすいことを知っているので、日頃から注意をしていて、友人に袖の振りを引っ張られてひどく激怒していました。

背縫いや脇縫い、衽付けを「立て縫い」と言いますが、腰やお尻あたりでは時間が経つと縫い糸が弱り、切れてしまう場合があります。

背縫いのほころび

その時点で、あちらこちらの糸が切れてもおかしくない状態なので、仕立て直しをおすすめします。糸が先に切れる場合は、布地が裂けて穴が開くことはあまりありませんが、布地の織り糸が一方向に寄ってしまい薄くなります。

織り糸の寄り

寄りの修正

この場合は、針先で織り糸の寄りを戻し、必要であれば布地等で補強をして縫い合わせます。

・袷衣きものの裏地取替(胴裏取替・八掛取替)

時間が経って、黄変した胴裏(上裏)や八掛、その両方を取り替えることができます。

また、八掛の裾が擦れて穴が開いた場合は、上下を変えることができます。何度か着用すると腰あたりは幅が伸び、身丈は湿気によって縮むものがほとんどです。裏地のみの交換は、初めて仕立て上がった時のようには綺麗になりにくいというのが本音です。

裏地取り替え(前)

裏地取り替え(後)

身丈直し・裄直し・身幅直し・同裏取替など、複数の寸法直しを行う場合、解き洗い張りをして仕立て直しをした方が、きれいに安くできる場合がありますので、ご相談ください。

昔の仕立て屋さんは、蝋チャコを使う方もいて、裄直しでも紹介した表からの色チャコや、下の写真の様な衿付け(流れ)の表からのチャコもやっかいです。洗い張りで薄くなる場合もありますが、浸み込んでしまっているケースもあります。

衿付け(流れ)の表からのチャコ

一番やっかいなのは、カビです。染み抜き屋さんに聞いても、なかなか取れないそうです。乾燥して天気の良い日に吊して陰干しをして、着物にシミがないか、カビなど発生していないか、確認をしましょう。

大島のカビ

お相撲さんのきもの

7月は名古屋場所が開かれます。今年も続々と新幹線でお相撲さんが名古屋駅に到着しました。名古屋場所の最中は市内の地下鉄でも、浴衣姿のお相撲さんを見かけ、鬢付け油のほのかなにおいが漂っていました。

 お相撲さんの和服の反物の幅は、私たちが着ているきものの幅と同寸です。身長も、裄も身幅もビッグサイズですね。なので、裄直しで紹介した「割布」を、袖付け側、脇に入れて、幅を広くします。通常の衽の布幅は半幅程度ですが、お相撲さんは、布の一幅を使います。入門したては、一反しか与えられないので、ちんちくりんの短い浴衣を着ていますが、出世して後援会などのスポンサーが付くと、複数の反物を使うことができますので、体型にあった浴衣やきものを着ることができるようになります。私が、和裁の修行中にお相撲さんの浴衣を仕立てることがあり、汗かきなのでハンカチを入れるようにポケットを付けたこととや、縫って最後に仕上げをして畳みますが、仕上げ台(約90cm×180cm)に乗らなかったことを思い出します。

昇進などのインタビューではそんな「割布」が入っている和服姿を見ることができますよ。

寸法直しについて②

譲ってもらったきものや、古着屋さんやネットから購入したきものなど、寸法直しの依頼が多くなっています。今回から、寸法直しについて説明します。第二回は身幅直しについてです。

○身幅直し

身幅直し

身幅直しも広くするのがほとんどです。身幅算出の基本は、立妻が脇線に揃う着方で、後幅×2+前幅+合妻幅=ヒップ寸法(一番太い寸法)+ゆるみ(4cm~)を基準とします。気を付けるポイントは、以下のようです。

・縫い代があるのか?

裄直しと同様、広くする場合、単衣は裏に返せば縫い代の量が分かりますが、袷衣の場合は、指で触って縫い代の量を測ります。確実なのは裏袖付けの縫い目を解きひっくり返して、表脇縫い代、胴裏生地の縫い代、八掛の縫い代の状態(切り込みが入ってないかどうかなど)確認をし、直せるのかどうかを判断します。また、単衣の場合は、裾くけ縫い代を切り落としてある場合があります。身丈にも影響しますので、注意しています。

・絵羽物(柄合わせがある物)では

訪問着や付下げ、留袖などの絵羽物(柄合わせがある物)は、生地の端まで刺繍や柄が染められていない場合がほとんどです。縫い代があっても身幅が広げられない場合もあります。脇のみで直す場合、柄一杯となり柄は崩れます。

・色の変色

裄直しと同様に、時間が経っている物は色焼けなど変色があります。ひどく色焼けしている場合は、直すのを中止するか、そのまま直すか、色掛け(色の修正)をしてから直すのか一度お客様と相談をします。

・前幅、後幅のバランス

身幅直しは基本、脇で直します。腰骨の位置が脇線になり、お腹が大きければ前幅を広げ、お尻が大きければ後幅を広げます。反物から仕立てる場合、色無地や小紋など前身頃と後身頃の脇縫い代は同寸にしますが、出来上がった物を直すとなると、脇縫いだけで思うような前幅・後幅にならないこともあります。脇縫い代の深さの差が極端に多い場合、生地がねじれてシワが出てしまう場合があります。大幅に直さなければならない場合は、脇のみで直さず、衿・衽も解いて直します。

子供のきもの⑤(仕立て例)

子供のきものの裁断方法を説明してきました。先回にも説明したように、様々な裁ち合わせ方法があり、大人物からの仕立て替えや余った布などを使う場合もあり、限られた布の長さで、工夫して、裁ち合わせをして、極力無駄を省いた裁断方法ともいえます。

大人用反物一反で、四ッ身アンサンブル(着物と羽織)

例えば、着尺地(きじゃくじ:きもの用反物)は約12mありますが、半反では一ッ身きものと袖無し羽織ができます。また、一反で元禄袖の四ッ身のきものと羽織(アンサンブル)が作れます。

子供のアンサンブル裁ち

・半反物(5.7m)で一ッ身きもの(元禄袖・筒袖)と袖無し羽織(またはちゃんちゃんこなど)

・一反使い四ッ身きものと羽織(元禄袖・筒袖)

子供の和服は寸法の決まりはあまりありません。身丈は子供の着丈(きものを着た長さ)に1尺(約38cm)加え、裄は2寸5分(約10cm)加えて作り、肩腰揚げを繰り返して、数年間着ていました。

最後に、お子様の身長から、着丈と裄寸法を割り出し、肩腰揚げをします。袖揚げは、引きずってしまう場合に行います。いずれも子供らしい揚げの位置で行います。詳しくは、次回に紹介します。

先日、お祖母様が着た付下げのきものと長襦袢を、7歳用のお祝い着に仕立て替えしました。

身頃は、背と衽付けの柄を合わせ、内揚げの位置で裁ち切り、つなぎ合わせています。

背縫いを深くして、肩に柄が多く出るようにしました。

※注 きものも長襦袢も、大人用に戻すことはできません。

子供用きもの(右肩の柄)

胸の柄も多く出るようにしました。

袖丈は裁ち切りいっぱいで60cm程にできました。

子供用着物(前)

こんな浴衣もできます

・片身替え浴衣

とある方から、浴衣の仕立て依頼が来ました。一枚は綿絽の浴衣で出来上がっているもので、もう一枚は普通の綿の反物の状態です。この二枚の浴衣を交互にして仕立てて欲しいとのことでした。

右身頃に紺地、左身頃には綿絽の生地で、袖布は身頃と交互になるようにしました。

衽は身頃と同じ生地で、衿は反対の生地を使い

背で布地を入れ替えてあります。

広衿を希望されましたので、裏衿は新モスを使用しています。

素材が大きく違う物は、伸縮率が違いますので出来かねますが、おなじ素材であればこの様な片身替えや腰から下で変化させるのもありですね。お客様とよく相談して、デザインを決めます。

・ネットで購入した綿の生地で

綿生地の製造元でもネット通販されて、比較的安く生地の切り売りをされているようですね。普通の和服の反物の幅は37cm位、大幅物は75cmなど、幅が分かれば、布の長さが分かりますので、無駄がなく仕立てることができます。下の写真も、男物で、縞の合わせ方なども打ち合わせて作りました。

他には変わり種で、ひいきにしているプロ野球の手ぬぐいで作ったという、仕立て屋さんもいます。布生地さえあれば、作ることができます。

連続する柄(柄の合わせ方2)

長方形の連続した柄の着物から袖無しの上っ張りを仕立てました。

背はもちろん、衿も柄を合わせました。

紐の付いているところで継ぎ目が目立たないように衿を継ぎ足して柄を合わせています。

おまけに襠(まち)布も目立たないように合わせてみました。今回は生地が多くあり、ちょうど柄が合うように出来ました。生地があまりにも短い場合などは、バッチリ合わない場合もあります。

私は、仕立て直す事を考えて、仕立てていますが・・・・

私は、仕立て直す事を考えて、仕立てていますが・・・・

4月半ばから、浴衣や単衣の仕立て依頼が来始めています。

単衣着物を数枚、持ってこられ、体型が変わり、身丈、身幅、褄下の寸法も変わってしまい、洗い張りして仕立て直しをして欲しいとのことでした。

洗い張り前の、着物を解く作業は、洗い張り屋さんに任せることもできますが、布の状態と仕立て方を見たいので、私が解きます。

ゆっくりと糸を抜きながら解いてみると、、、、、

なんと~  前身頃の衽付け側の縫い代が切り落としてあります。身幅を広く仕立て直しをしますが、この状態ではこれ以上、広くできませんね。

そして、衽の褄先、単衣の場合は「額縁」と呼ばれている箇所ですが、ここも縫い代が切り落とされています~

以前のブログ(寸法直しが難しい事例:脇縫い代の切り込み)にも書きましたが、縫い代が何枚か重なって厚くなるために、仕立てにくい箇所で、縫い代を切り落とす事で、仕立てやすく、裾のくけ幅をすっきり見せるためです。

今回は、幸いにも内揚げがあり、切り落としてある部分に合わせて裾を切っても、身丈は出来ますが、こんな事をやっていたら、どんどん布丈が短くなってしまいますね。

地方や流派?(あるような、無いような)でいろいろな仕立て方がありますが、私には、チョット解せないですね~

和服は、仕立て直すことを前提に、仕立てます。例外として浴衣(特に真岡のみ・綿紅梅等高級浴衣地は別)は、反物の長さが短い事や綿製なので、内揚げ(身頃の胴で摘まんである縫い代)を取らず、あまり作り直すことを考えず、仕立てます。

お祖母様の名古屋帯を仕立て直し

お祖母様の名古屋帯を仕立て直し

お客様から「名古屋帯を長くできませんか?」と、メールをいただきました。内容を詳しく尋ねたところ、お祖母様が若い頃締めていた名古屋帯です。黒地に刺繍の草花があしらってあり、とても柄が気に入って締めてみたところ、お腹の柄(胴の柄)がうまく出ないのと、手(胴に巻く部分)が短いとのことでした。「丁度良い締めやすい帯を一緒に送っていただけたら、寸法を確認し、見積もりいたします。」とお返事したところ、お客様から早速送られてきました。

まずは、ポイントとなる各部分の長さを測ってみると・・・・・・

お太鼓の長さは、丁度良い長さですが、やはり垂境(三角になっているところ)から胴の柄までの距離と手丈が短いです。

名古屋帯の基本的な寸法です。

名古屋帯の基本的な寸法です。

名古屋帯の柄の位置です。

名古屋帯の柄の位置です。

垂境から胴の柄までの距離は、現在の名古屋帯では約57cm位ありますが、この帯は約45cm。昔の物ですので、短くできています。手丈は約224cmで、現在の並寸法は約260cm前後のものが多いので40cm近く短くできています。ちなみに戦中、戦後の物資が足らない時代は、お腹に一重しか巻けない名古屋帯があったそうです。

そして、今では殆ど仕立てられることがないポケット口が付いていました。手先の方に袋状に開いている物で、小物を入れるポケットではなく、帯板を入れるためのポケット口です。

このポケット口は、体型にもよりますが、手先から中心まで約110cmの所に開けます。

(一社)日本和裁士会編

新版和服裁縫下巻より

そして、生地の状態をよく見てみると・・・・・

角は、擦れて薄くなっていたり、

垂先の、摘まんで縫ってある部分も、陽にかざしてみると薄くなっています。

とても古い物は、触っただけでポロポロと生地が裂けてしまうものもありますが、今回の生地はそこまで劣化はしていません。でも、耳に切り込みが入っていて、もしかしたら、締めている最中に力が加わると裂けてしまう恐れがあります。

お客様に、この状態を説明し、全面に薄い接着芯を貼ることを提案させていただきました。

しっかりと生地のよれをアイロンで直し、垂先を直角に置き、布幅に裁断した接着芯を貼ってゆきます。

次に、寸法の足らない部分の2箇所に、帯布を継ぎ足します。

名古屋帯足し布

後は、いつも通りに仕立ててゆきます。

私たちが仕立てた物には他の仕立て屋さんが見ても分かるように、仕立てた内容、寸法などを記入したものを付けてお客様へお渡ししています。

今回の仕立て代は、

・解き・簡易地のし

・接着芯等

・継ぎ足し布等

・帯芯

・仕立て

など合計25,000円程度でした。

昔の生地は、しっかりとした良い物もあります。仕立て直しで蘇ることもできますよ。

帯の仕立て直しをしていて思うこと

帯の仕立て直しをしていて思うこと

帯の仕立て直しの依頼も承っています。

時間が経つと、表と裏のつり合いが悪くなったり、帯芯が縮んだりしますので、一度全て解いて、染み抜きや洗い張りをして仕立て直しをます。(過去の袋帯仕立て直しブログはこちらをクリック)

もちろん、帯芯も解き、新しい帯芯に交換しますが、原則、付いていた物は全てお客様にお返しします。古い帯芯をお返ししたところ「こんなにカビていたの~」と仰られる方が殆どです。着物の裏地は、広げて見れば分かりますが、袋帯や名古屋帯などは中に帯芯が入っていて見えないので、分かりませんよね。でも、意外とカビています。

下の写真は、一世代時間が経っていて、お母様が成人式の時に締めた袋帯の帯芯です。

綴じてあった糸は切れてしまって、所々帯芯がずれてシワだらけですね。

もちろん、新品の帯芯は真っ白で、「防カビ」とか施してあるものが多いです。

また、お祖母様が若い時に締められていた名古屋帯の帯芯。二世代の時間が経っています。

最近の袋帯は、端縫いの糸に化繊の糸が使われています。とても細く切れにくいのが特徴ですが、果たして時間が経った時、絹物の帯地に対して優しいのか疑問です。糸が先に切れれば、帯地は傷つかないでしょうけど、しかし、糸が切れず、部分的に力が加わったら布は裂けてしまいます。

師匠や先輩方から教えられ続けていますが、この様な理由から絹物は絹糸で縫っています。これも、布を大切にする日本人の智恵ですね。

最近多くなってきている「仕立て直し」

最近多くなってきている「仕立て直し」

早いもので、平成29年がスタートしてもう2月半ばになりました。先日、豊橋市では鬼祭りが行われ、この鬼祭りが終わると春になると言われています。しかし、立春も過ぎたと言うものの、梅の花が咲いているところもあれば、雪が降っている場所もあり、まだまだ春は遠いのかな?とも思ったりしています。

さて、最近、裄直しなどの寸法直し、長襦袢の半衿掛けなどの仕事が多いですが、仕立て直しも多くなってきています。

先日では、仕立て上がった振袖・長襦袢・袋帯を持ってお母様がお越しくださいました。お母様の姉妹が着て、今度は娘さんが着ることとなり、身長も、体型も似ているのでそのままでも着られそうなのですが、裏地などの汚れが目立つのと綺麗にして着せてあげたいとのことで、洗い張り(解いて生地を洗うこと)をして、裏地取り替え・仕立て直しをしました。

以上の内容の振袖仕立て代(振袖仕立て代・洗い張り代・裏地代・縫い跡の修正代等を含め)は、合計で10万円程度です。(※染み抜きや修正箇所等によって仕立て代は変わります)

私が七五三と成人式に着た着物は、息子2人とも着ています。息子達の着た姿を見ると、嬉しくもあり、頼もしくもあり、私が二十歳の頃のこれからの大きな希望と不安が入り交じった気持ちも思い出し、息子達も同じ気持ちかな・・・なんていろんな事を思ったりしました。

日本にはいろんな通過儀礼があって、和服は深く関わっています。親が着たものを、その子供が着る。親の気持ちが衣服に宿って、「がんばれ~」とか「立派な成人になってね」とか、子供が着ることによって伝わるような気がしますね。20年以上の前の衣類が、次の世代でも着ることができ、リメイク・リフォーム・リサイクルできる和服は、世界でも珍しいのではないのかな??

以前、テレビで成人式の様子をニュースで放送していました。ある女性の新成人が無地の振袖を着てインタビューに「お母さんが着た振袖です。無地の振袖の方が他の人と違って目立つから、着ることにしました!」と答えていたことが印象的でした。成人式全体の様子も映像が流れましたが、仕立て屋の仕事をしているせいか、男性の羽織袴もなんか・・・・・殆どが柄が同じに見えてしまいます。

以前のブログにも載せましたが、七五三でも同じように感じてしまいます。(七五三の以前のブログはこちら)成人式も七五三の延長のような・・・・・一つ一つの着物を見ていれば、蛍光色っぽい花が全体に散りばめられていて、可愛いく豪華に見えますが、同じ雰囲気の柄が集まると、見栄えがしない気がします。昔の方が日本の色を使い古典調柄をあしらったものが多く、それぞれが主張していたようにも思えます。

また、別の日には、喪服と長襦袢を持って来られた方がいました。嫁いだ時に持ってきた喪服ですが、今まで一度も着ていなく、躾も付いている状態でした。近々着られる予定があるので、はおってみたら幅が狭くて・・・・と相談に来られました。

見てみてみると・・・・・

喪服ですので、一度も着ていなくても身幅を広げる場合、縫った跡(標)や折り跡が出てしまいますので、その跡を目立たなくする修正が必要

裏地は時間が経っているため、黄ばみが出ているので、取り替えた方が良いのでは

体型が変わったために、身幅(脇)のみの寸法直しでは着やすくならない。衽幅や抱き幅などの寸法直しが必要かと思われる。

身丈も短く、また、袖丈が長い。

縫い跡修正と着やすい幅直し、袖丈直し、裏地取り替え等という方法もあるが、殆ど解いてしまうため、仕立て直しとの価格の差はあまり無い

仕立て直しの方が、一から仕立て直すので部分寸法直しより、きっちり仕立てることができる。

と、説明させていただき、縫い跡修正、裏地取り替え、仕立て直しをさせていただきました。縫い跡の修正は、染み抜き屋さんにお願いしていますが、昔の喪服の生地は染めも織り糸もしっかりとしていて、綺麗に修正できました。

以上の袷喪服の仕立て代(仕立て代・裏地代・着用時に見える箇所の上前の部分と裾の修正等を含め)は、6万円程度でした。(※染み抜きや修正箇所等によって仕立て代は変わります)

最近、喪服の仕立ては海外で行っており、私たちの所へは殆ど来ません。今、作られている喪服の生地は、全てではないですが以前よりだいぶ薄くなったものが多くなっているように思います。そのような喪服の生地を仕立てる時に注意しなければならないのは、一度縫ったら、伸びてしまい、染料がはげてうっすらと白くなってしまうので、縫い直しができません。そして、この様な生地は幅を広げたり、丈を直すという仕立て直しは無理かと思われます。

また、和裁組合の研修会で、紋屋さんの講演があったのですが、現在の喪服の生地は、「カラスの濡れ羽色」のように黒色をよく見せるために、ワックスを掛けるそうです。なので、紋入れの際には染料が乗らず、一度ワックスを取ってから、紋を入れるそうです。

今でも、しっかりと織り糸から吟味して、古くから伝わる技法で柄を染め、作り直しを考えた反物もありますが、反面、デザインのみに目が行ってしまいがちな、反物(きのも)もありますね~

きものの仕立て直しで、綺麗になります。

きものの仕立て直しで、綺麗になります。

お母様が「きものを娘に譲りたいのですが、どのようにしたらよいのでしょうか?」と、ご相談がありました。お話を伺うと、地元の呉服店は廃業してしまって、どこに持って行けばよいのか分からなかったようでした。

きものを見てみると、

胴裏地には沢山のシミがあり、八掛の色もちょっと派手なので、もう少し優しい色目が良いとのことで、胴裏と八掛は新品に取り替えることとなりました。

時間がだいぶ経っているので、表生地が縮み裏側の生地が緩んでいます。袖口は・・・・

裾も表生地が緩んでいます。(点々のように見えるのは、縫い躾(ぬいびつけ)またはグシという躾が掛かっています)

当初は、裏地取り替えと裄や身幅などの寸法直しというお話でしたが、表生地のねじれなどで、寸法直しでは思ったほど仕立て上がりがよくない事や、洗い張りして仕立て直す費用と比較しても、さほど変わりないことをお話させていただきました。

また、表生地にも全体にシミがあり、全ての染み抜きをするのには、費用が掛かりすぎてしまいますので、まず、洗い張りをして、その後、シミの位置を確認し、寸法を測り、縫い代に入る箇所や、着て目立たなく気にならない場所の染み抜きはせず、上前(左身頃の前)や衽、後身頃のお尻あたりなど目立つ部分のみだけ染み抜きをして、仕立て直しをした方が、出来上がりも綺麗に仕立て上がるのではと説明させていただきました。

仕立て後の袖口は、

裾は

裏地のつり合いも綺麗になりました。

寸法は、娘さんが持っている長襦袢に合わせて着られるように、また体型に合わせた寸法で仕立てました。

和裁屋では、仕立てた寸法や内容は保存しています。また、きもの寸法を一度寸法を決めれば、長襦袢や羽織る物など、その他の和服を仕立てるときに、合わせることができます。仕立てのお客様には寸法表をお渡ししています。(寸法直しの方は、この限りではありません)