布の性格を考えて(大島の仕立て)

先回のブログに関連した内容です。

袷着物は、表地(きもの地)・胴裏地・八掛と三種類の生地で成り立っています。
胴裏地は糸の太さ、糊の量などいろいろありますが、縮み具合はそれほど大差はありません。
八掛は染めや糸の太さ、織り方も様々で紬の八掛以外は、とても縮むものもあります。
表地は縮緬、お召し、羽二重、紬等など八掛以上に、千差万別で地直しの作業は、布の端で色々試してから行っています。

その中の紬といえば結城紬、白山紬、信州紬などありますが、大島紬は同じ紬絹織物でも織り糸の性質が違い殆ど縮みません。(布の縮み具合:参照)
大島紬を仕立てて時間が経過すると、下の写真のように胴裏地や八掛が縮んだ結果、表側がビリ付き、緩んだ状態になってしまいます。

P1010027

私どもが、大島紬を仕立てる場合、胴裏地と八掛の地直しは出来るだけ時間を掛けます。パレスやチェニー地など縮みやすい八掛は、当て布の上から霧吹きを掛け、じっくり時間を掛けてアイロンを当てます。数時間後には少し伸びてくるため、仕立て始めるのは一晩置いてから行います。
それでも、仕立て中に鏝を当てたり、仕上げでアイロンを使ったりすると裏が縮みます。出来上がってからも、長く綺麗な状態で着ていただくことが出来るように、裏側をふんわり緩めに仕立てます。
標通り(へら付け通り)に表と裏を同寸法に仕立ててしまうと、大変なことになってしまいます。
表生地と胴裏地、八掛と胴裏地、表生地と八掛といった組み合わせがあり、厚みも考慮し、それぞれ緩み具合を加減して縫い合わせてゆきます。
なので裏側の縮み具合を考慮して仕立てると、下の写真のように裏側が緩めになります。

大島紬の裏地・緩み具合

大島紬の裏地・緩み具合

「裏側が緩んでますけど・・・・」というご指摘を受けたこともありますが、上に書いた様な説明させていただきました。
大島だけでなく、その他のきものも表裏生地の縮み具合を考え、緩みを調節をして仕立てています。