浴衣身丈直し

浴衣身丈直し

3年前に仕立てた男物浴衣の身丈直しの仕事依頼がありました。

お客様にお話を聞いてみると、毎年この時期にお祭りで浴衣を着て、クリーニング店に出したところ身丈が縮んでしまったようです。身丈を測ってみると約10cm縮んでいました。私どもでは、男物浴衣の反物から仕立てる場合、反物の長さや身丈にもよりますが、男物は対丈で着るために身丈は重要な寸法なので、後々身丈を伸ばせるように身頃などに内揚げや縫い代を入れて裁断します。また、男物浴衣以外の男物では、女物に仕立て直しできるように、縫い代を入れておくともされています。

今回のように縮んでしまった場合でも、ある程度内揚げや縫い代があれば、身丈を直すことができます。

身丈直しをする場合、始めに確認をするのが、身頃の内揚げの量です。

裏側から見ると

摘まんで縫ってあるの内揚げです。男物の場合、殆ど前身頃と後身頃の内揚げの量は一緒です。縫い目から摘まみ山まで測って2倍すると身頃を伸ばすことができる長さです。

次に確認しなければならないのは、衽の上・衿の中に入っている衽縫い代の量です。

身頃を伸ばしても、衽が届かない!という場合もあり、それでも直す場合には、胸の布幅が狭くなってしまうので、胸元がはだけるといった着辛い原因となります。身頃の内揚げ分+縫い代があるか、確認をします。(縫い目を解き、確認する場合があります)

そして、衿先の縫い代も確認します。

およそ、内揚げ分の半分+縫い代があるか、確認をします。妻下寸法はは身丈の半分から計算しますので、内揚げ分の半分を目安にしています。この縫い代がないと、衿先が腰に掛からないといった事が起きます。これも、着にくさに繋がりますね。(縫い目を解き、確認する場合があります)

以上が、男物浴衣や単衣物の身丈直しをする場合、チェックする主なポイントです。今回のような、男物浴衣の身丈直し代は、手縫いの場合8,000円(税別)・ミシン縫いでは7,000円(税別)程度です。

女物浴衣の場合は、身丈に対して反物の長さも短く、身頃も繰り越しつまみ程度しか摘まんで縫っていませんので身丈を伸ばすことは、あまりできません。

袋帯のだぶり直し

袋帯のだぶり直し

帯の仕立ての仕事が来ました。

検品をすると、表地と裏地のつり合いが悪く、表が緩くとてもだぶっています。柄の感じから古そうで、時間が経っているので表生地と裏生地の材質が違いすぎて、つり合いが悪くなっていますいます。さらにガード加工を施したので裏地が縮んでしまったのかもしれません。お客さんこのことを告げ確認をしていただき、端縫いを解き、つり合いを直します。

縫いを解く前にどれだけ縮んでいるか、手先の織り止めの位置で、裏地に糸標をしておきます。

両端のミシン縫いを解き、手先を見てみると、約6cm強、表地の方が長いようです。

表地、裏地共に、霧吹きと業務用スチームアイロンでこれ以上縮まないように地直しをし、生地を整えます。

元の縫い目でミシン縫いをして、縫い代は縫い割りをします。

表側にひっくり返して、さらに被山を整えながらアイロンを当て整え、その後は通常通り帯芯を入れて仕立てました。

これで、スッキリとつり合いもよくなりました。

この場合のつり合い直しと仕立て代は、帯芯別で14,000円(税別)程度です。

なお、はじめの縫い跡が出てしまう場合や、帯幅が多少狭くなる場合もございます。端の縫い方や生地の具合によって出来ない場合があります。また、下の写真のような縫い目がない本袋帯などは、つり合いを直すことはできません。お気軽にご相談下さい。

本袋帯端

2016年5月11日 | カテゴリー : 仕立て, | タグ : | 投稿者 : 和裁屋

都市伝説ならぬ「幽霊の片袖伝説」

私達仕立て屋には、先輩や師匠から言い伝えられていることがあります。それが「幽霊の片袖伝説」です。

「幽霊の片袖」の話は、全国あちらこちらのお寺に掛け軸と共に伝わっていたり、片袖が寺宝として展示されていたり、落語にもなっていて、話の内容も様々です。
私が聞いた話しは・・・・・

とあるお寺の住職が就寝中のすぐ横で、誰かが歩く音を聞き、「泥棒だ!捕まえてやる」と思った住職は、とっさに手を伸ばし袖を掴みましたが、袖が取れ逃げられてしまいました。住職が寝ている部屋の床の間には、幽霊の絵の掛け軸が掛かっていましたが、翌日、その掛け軸を見ると、幽霊のきものの片袖が無くなっていた、というお話です。

で、修行中、片袖だけ身頃に付けずに残して1日の仕事を終えると、「幽霊が『私の袖では』と探しに現れる」とか「お化けが出るよ」と言われました。
袖を付けるのは、きものを1枚仕立てる工程の中で、比較的完成間近の作業です。(単衣のきものは最後に袖を付けます)理由は、身頃に袖が付いていると作業がしづらいためです。ですから、「もう少しで完成するのであれば、袖を付けて1日の仕事を終えなさい。」という戒めでしょうか。

信じるか、信じないかは あなた次第です。

袴の紐の畳み方

袴の紐の畳み方

現在、よく仕立てる袴では

  • 行燈(あんどん)袴

スカート式。お手洗いが楽です。ちょっと持ち上げて用を足せます。

  • 襠付(まちつき)袴

別名:馬乗袴とも言い、キュロットスカートのような袴です。股(襠)の高さは40cm弱程度ですので、お手洗いの時には、片側に足を突っ込んで、袴を上げて用を足せます。襠高が高い袴はその都度紐を解かないと用が足せません。

  • 女物袴

明治時代に女学校の制服とされ、現在のセーラー服の原型です。巫女さんの袴もこれにあたります。卒業式などによく着用されていますね。

男袴の袴で行燈と襠付き、「どちらが正式ですか?」という質問をよくされますが、見た目余り変わりが無く、私達もよく分かりません。強いて言えば、あんどん袴の方が襞が広がりやすいと言ったところでしょうか。まあ、好みだと思いますが・・・・

その他、剣道袴、仕舞袴(日本舞踊で使われる)や水戸黄門がはいている又シャレ袴など色々な袴がありますが、どれも前紐が長く後紐が短いです。反物から新品で仕立てた時には前紐は一文字に畳み紙で封じ、後紐は身頃の上で交差させ、糸で留めて納品をしています。

一度、履いたら下のイラストの様に紐をたたみます。二種類の畳み方が主流でしょうか。ネットでは「袴の紐の畳み方」で検索すると動画で紹介されています。

・石だたみ

石だたみ

((一社)日本和裁士会編 新版和服裁縫 下巻より)

・菱だたみ

菱だたみ

((一社)日本和裁士会編 新版和服裁縫 下巻より)

よく袴を着用していた頃は、睦月はこの畳み方と言うように紐の結び方が12種類あって、前にはいた時が分かるようになっていたそうです。

2016年4月27日 | カテゴリー : | タグ : | 投稿者 : 和裁屋

オリンピックエンブレムが決まって・市松文様

オリンピックエンブレムが決まって・市松文様

2020年東京オリンピックのエンブレムが決まりました。

2020年東京オリンピックエンブレム

4つの案の中で、一番日本らしいとは思っていました。

私達にとってはよく目にする市松文様を変形させ、さすが!デザイナーさんが作っただけのことはあります。

(一社)日本和裁士会の手島会長の話によると、東京オリンピックは夏に開催なので、「閉会式には選手全員に浴衣を着ていただこう!」なんて話が、きもの業界や都議会で出ているそうです。きっと市松柄の浴衣でしょう。市松なので、白地に1色で染めることができ、コストもかかりませんよね!

でも、きっと仕立てはアパレル関係の企業が、ミシンで大量に作ってしまうでしょうね(=_=)

さて、話は変わりますが市松柄は、江戸時代のとある歌舞伎俳優が好んで使った柄だそうです。その時代の歌舞伎俳優はオシャレで「粋」な柄を身に付け、ファッションリーダー的な存在だったのでしょう。熱狂的なファンは、お気に入りの歌舞伎俳優と同じ柄のきものを着ていたのでしょうか?弁慶の役では弁慶格子、老人の役には翁格子、尾上菊五郎の柄は「キと四本線と五本線(たして九)、そして呂」の語呂合わせで菊五郎格子など、今に伝わっている格子の文様は数多くあります。

格子柄

1回目のオリンピックエンブレム決定の際に「パクリではないか?」と騒動が起きましたが、この市松柄、ブランドの○イ・ヴィト△がパクったのかな?

七宝文様

この七宝柄も、ブランドの柄に・・・似ていますよね~

今回のオリンピックエンブレム、また騒動が起こらないことを願っています!

2016年4月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 和裁屋

都市伝説ならぬ『袴伝説』

今から30数年前、私が初めて自分の襠付き袴(馬乗り袴)を作った時に、ふと疑問に思ったことがありました。

それは、袴の後身頃、中心の縫い代を倒す方向が「きもの」の背縫いと逆であることです。

きものや長襦袢の場合、下の写真のように、裏側から見て(裾を手前にして)縫い代は右側に倒れています。

背縫い代の方向 (きもの)

背縫い代の方向

(きもの)

袴の場合は、きものなどと逆で左側に倒れています。

男襠付き袴縫い代の方向

襞を畳む方向にも影響していますが、普通に考えた場合、道理を通す日本という文化の中の和服は、背縫いや中心の縫い目がどれも同じ方向に倒れていてもいいんじゃあないの?って思っていました。

わざわざ逆に縫い代を倒すきものと言えば・・・・経帷子(きょうかたびら:死者に着せるきもの)で、反物から仕立てる時に、布は裂き、糸の端に玉留めはせず、返し針りや継ぎ足て縫わず、背縫いは通常の方向とは逆に倒して仕立てています。

じゃあ、なぜ、男袴は???????(?_?)

以前、同業者の先輩方との雑談で、同じ疑問を持っている方がみえ、他の同業者に質問をしているのを聞いてみると

「今のように安全ではない昔、袴は主に武士の衣服で、武士は不意に斬られたり、のたれ死んだり、仇討ちにあったり、いつ死んでもいいように死装束として、またそのような覚悟をして袴を付けた」とのこと・・・

信じるか信じないかは、あなた次第です!

熊本地震で被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。

平成28年4月14日に起きた熊本地震により被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。
九州での思い出は、若い時に1週間程度、数回旅したことがあり、後輩宅では、家族の方々に良くしていただきました。修行が終わり、バイクに跨がりふらっと行った時には、阿蘇の雄大な自然を体験し、突然、修業先の先輩に電話し、お宅に押しかけた時も九州の同業者を紹介していただいたり、「泊まるところが無かったら、家に来い」と気良く泊まらせていただいたり、大変お世話になりました。また、近年では、熊本へ愛知県内の仕立て屋と共に(一社)日本和裁士会熊本県支部が主管となって行われた研修会に参加し、夜には馬刺しを堪能、帰省する日には熊本城を見学しました。
ニュースを見るたびに、その時の思い出と、変わり果てた熊本の大地、市電が走る街並み、熊本城の姿を目の当たりにし、ため息と残念な気持ちでいっぱいになります。今なお余震が続いていますが、早い復興を目指して欲しいと願うばかりです。

2016年4月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 和裁屋

羽織から名古屋帯

まで何本も羽織から帯を仕立てていますが、今回は黒絵羽織(ポイント柄の羽織)から名古屋帯を仕立てる仕事の依頼がありました。

羽織から名古屋帯

洗い張りの状態で来ましたので、まずは検品と、柄の位置などを確認し、設計図を作成します。

羽織から名古屋帯

(設計図)

☆注意するポイントは、

お客様の体型で、お太鼓のポイント柄から垂先と垂境の距離、垂境から胴(手)のポイント柄までの距離、手の長さの確認。

幅の確認

胴回りから計算して、締めた時に継ぎ目が出てしまわないか

胴(手)のポイント柄は両面に出ることが出来ない場合、お客様がいつも胴(手)を締められる方向が逆になってしまわないかどうか

などなど、詳しくチェックします。

今回は、お太鼓(垂)の柄は左身頃の大きな柄を使って、胴(手)は片側によっている右身頃の小さな柄を使います。衿や袖の無地の部分は、お太鼓の裏(垂裏)や手先などに使いました。

羽織から名古屋帯 (お太鼓の柄と胴の柄)

羽織から名古屋帯

(お太鼓の柄と胴の柄)

お太鼓のポイント柄から垂先と垂境の接ぐ位置を確認し、余分な部分を裁断します。

羽織から名古屋帯

その他も設計図通りに裁断し、ミシンで縫い、つなげてゆきます。

つながったら、標付けをしますが、お太鼓の柄が右側に寄っていますので、左右の縫い代をできるだけ違えて標を付けます。

羽織から名古屋帯

(標付け)

帯芯を入れて完成です。

今回、5カ所継ぎ接ぎし、お仕立代は15,000円(税別、芯代別)でした。柄の位置や大きさ、接ぐ位置、好みなどによって仕立代は変動します。

半衿なども取り扱っています。

半衿、衣紋抜き、長襦袢の衿芯や居敷当て、単衣着物の衿裏、男物袖口布なども扱っています。(税別価格です)

衿芯  500円

衣紋抜き 400円

長襦袢用居敷当て(正絹) 1,500円

長襦袢用居敷当て(化繊) 1,000円

半衿(正絹)   1,800円~

半衿(化繊)   1,000円~

男物袖口布    1,300円~

単衣着物の衿裏(正絹)   1,700円

単衣着物の衿裏(化繊)   1,500円

その他 ご要望があれば取り寄せします。

(上記価格は変更する場合がございます)

2016年4月1日 | カテゴリー : 取り扱い品 | 投稿者 : 和裁屋

帯芯各種を揃えています。

袋帯や名古屋帯などの帯芯を取り扱っています。厚みやしなやかさ、軽涼芯など各種揃えております。また、在庫に無い物やカラー芯などは取り寄せとなりますが、見本帳にてお好みの芯を選んでいただけます。

カラー芯見本帳

◆帯芯価格(税別)
  • 袋帯・名古屋帯用帯芯
    2,000円~
  • 軽涼芯
    2,600円程度
  • カラー芯(色見本帳より)
    3,000円程度
  • 真綿芯
    3,800円程度
  • 帯裏地(正絹)
    袋帯1本分 11,500円
    1,000円/1尺(38cm)

※諸事情により価格が変わる場合があります。

2016年3月30日 | カテゴリー : 取り扱い品 | 投稿者 : 和裁屋