研修会に参加して・・・

研修会に参加して・・・

9月4日・5日と(一社)日本和裁士会中部ブロックの研修会に参加してきました。愛知・三重・岐阜・長野と持ち回りで毎年開催され、今回は30回目となる研修会でした。

第1回は昭和61年に、愛知県蒲郡市で行われました。

第1回中部ブロック和裁指導者研修会

第1回中部ブロック和裁指導者研修会

受講者数はざっと数えても200人弱でしょうか?

第14回は長野県松本市で行われました。

第14回中部ブロック和裁指導者研修会

そして今回の研修会は、40数名の参加者でした。

第30回中部ブロック和裁指導者研修会

参加者の顔ぶれを見ますと、30代、40代の方もちらほらいましたが、殆どが一世代上の方ばかりです。(一社)日本和裁士会の会員以外にも、仕立て職をしている方もいますが、国内の仕立て屋が激減していると痛切に感じます。

2016年10月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 和裁屋

七五三の季節となりました。

七五三の季節となりました。

現在、七五三の仕事が多くなってきています。加えて、振袖の仕事もちらほら入ってきています。

◆お母さんの着物から(本断ち総絞りの着物)

7歳の娘さんを連れて、お越しくださいました。お母さんが7歳の時に着た総絞りの着物を持って来られ、お話を伺うと「私が7歳の時、とても身長が高く、長く仕立ててあり、小柄な娘の身長に合わせて腰揚げをすると、モコモコになってしまいます。重さもあり、どうしたらよいのでしょうか?」とのこと。着物を見てみると、仕立て方は四ッ身ではなく、大人用(本断ち)の仕立て方で、多分「十三詣り」で仕立て直しをして着られるように、内揚げ(身頃に摘まんである縫い代)や衽、衿にも縫い代が縫い込んでありました。

この状態で娘さんの身長に合わせ、肩腰揚げや袖揚げをすると、その摘まむ量が多く二重揚げでモコモコになってしまいます。絞りなので尚更です。「寸法直しでなんとかなりませんか?」とも提案されましたが、身丈・裄・身幅・袖丈など、ほとんどバラバラにして直すことになります。値段もほとんど仕立て直しと変わらない程になってしまいますので、全て解き、地直しをして仕立て直しをすることとなりました。今後、この着物は着ないとのことなので、軽くするためにも大四ッ身で作らせていただきました。

7歳の娘さんの身長を伺い、持ってこられた着物を家内が着せて、どのくらい長いのかを測り、娘さんの丁度よい腰揚げ・肩揚げ寸法で仕立てることができました。

着物の解き・地直し・仕立て・肩腰揚げ・紐作り付け・・・約4万円程度(生地等によって変わります)

◆お母さんの着物から(小紋の着物)

お祖母様、娘さん、お孫さんの3名で、お越しくださいました。娘さんが7歳の時に着た小紋の着物、長襦袢を持って、お孫さんが着られるのかどうか相談に来られました。約30年前に着たままで、小じわなど付いていました。私達が反物から仕立てる場合、着丈(着る長さ)に38cm位足して身丈(仕立てる長さ:腰揚げ前の長さ)を決めますが、お持ちいただいた着物は少々腰揚げの量が少ないものの(20数センチ)、腰揚げ位置のバランスを見て仕立てることができます。

30年前のそのままなので、一度生き洗いをしてリフレッシュしてから、揚げを行いました。

7歳のお祝いは「帯解きの儀」と言われ、肩揚げはしますが、紐付きの着物を着ず、大人の様にお端折りをして着物を着始めるお祝いの儀式です。しかし、現在では、紐を付け、腰揚げをする方がほとんどです。考えてみても、まだ7歳なので嬉しくて、跳んだり跳ねたりする頃で、着物の裾を踏んだらお端折りが出てしまい、着崩れしてしまいますよね~

今回も家内が着付けをして、正確な肩腰揚げ寸法を測り、着物と長襦袢の肩腰揚げと紐付けをさせていただきました。

※揚げの糸を取ってみると・・・・・

私達はチャコは一切使わず揚げをしますが、お持ちいただいた着物には腰揚げや肩揚げの摘まむ線を、青いチャコで標を付けて縫ってありました。蝋チャコと呼ばれるもので、繊維に浸み込んでしまいます。揚げの糸を抜き揚げ直しをすると結構目立ちます。生き洗いでは取れず、染み抜きが必要となってしまいました。

着物の生き洗い・チャコ染み抜き・肩腰揚げ・紐付け+長襦袢の肩腰揚げ・紐付け・・・約2万円程度(あくまで目安です)

◆3人娘の振袖

お祖母様、娘さん、お孫さん達で、お越しくださいました。娘さんが成人式に着た振袖を、お孫さん3名に着せたいとのこと。お孫さん3名は体型は同じですが、身長が少しずつ違います。「何とかなりませんか」とご相談しに来られました。家内が着付けをしたところ、体型が同じなので身幅はだいたいOKです。身丈もお端折りで何とかカバーできるほどで、大がかりな寸法直しは必要ないと判断しましたが、袖は、始めに成人式を迎える一番背の低い方が着ると、床に付いてしまったので、着物は袖丈直しをさせていただきました。

問題なのは長襦袢です。対丈で着るため一番背の低い方は裾を引きずってしまいました。身丈直しをしてしまうと一番背の高い方には、短くなってしまいますので、長襦袢の褄下あたりで、長い分を摘まんで腰揚げをしました。初めの方が着た後、腰揚げの糸を抜けば、その後の方が着られるようになっています。

着物の袖丈直し+長襦袢の袖丈直し・腰揚げ・・・1万5千円程度(あくまでも目安です)

後日談:お祖母様が後日、尋ねてこられ、私達の所に来られる前に、地元の呉服店に持って行ったところ、あれもこれも直さなければならないと、結構な値段を言われたそうです。呉服店の店員さんも着物をよく知っている方が、もういなくなってきていると感じました。

着物の長所は直せるところ

着物は、作り直せる衣類です。私の七五三の時に着た祝い着は、私の弟、従兄弟が着て、私の息子達が着ました。私の成人式の着物も、息子達が着ています。

七五三詣り

私の家内は、従姉妹のお下がりの着物を長女・次女そして三女の私の家内が着ました。

七五三詣り

日本の「衣の文化:和服」の「モノを大切にする文化」・「もったいない文化」は、まだまだ根付いています。

11月頃、神社に参拝すると、祝い着を着た子供で賑わっていますが、職業柄、既製品と誂えた着物と、ついつい比べてしまいます(^_^;)

帯芯の裁断

帯芯の裁断

道具箱の奥からこんな物が出てきました。

帯芯裁ち包丁

名古屋帯や袋帯の帯芯を裁断する時に使う「帯芯裁ち包丁」です。今から20数年前に使っていたものです。畳屋の娘のカミさんがこの包丁を見て、畳表のイグサを切る時にも、この様な包丁を使うと言っていました。

私が名古屋での修行中も、この様な包丁を使って帯芯を裁断していました。帯芯は両端を切って、帯幅に合わせて裁断します。帯芯を八ッ畳みにして、木製の幅広の定規の上に乗って、体重で固定させ、この包丁でザクザクと切り落とします。今となっては、この作業は、おじさんの硬くなった身体では無理です(^_^;)

以前の帯芯の裁断(イメージです)

修行中、包丁を砥石で研ぐのは私の役割でした。

修業後、実家に戻り仕事を始めましたが、実家には幅広の定規がない事と、使っていた定規が削れてしまって真っ直ぐに切れない、下に敷く板のささくれがひどい、どれも木製なので大工さんに真っ直ぐ削ってもらわなければならなく時間が掛かる、定規と板が1セットしか無かった、などの理由で、料理用の厚く長いまな板と、市販のアルミ製定規、カッターナイフを使うようになりました。

帯芯の裁断の道具

私の場合、道具を変えたことで、透ける帯の場合などや帯の厚み、帯芯の厚みによって帯芯の幅を微妙に調節する場合など、思ったような幅に、正確に帯芯を裁断することができるようになりました。

現在のの帯芯の裁断

修行中大変お世話になった師匠のお母さんの話です。

以前は帯の仕立の職人さんが多く、同じ幅の帯芯は3枚とか数枚、多い時で10枚くらい重ねて裁断を行っていました。思い切って、包丁に力を入れて切るので、足の指を切ってしまう方もいた・・・・・・と聞いています。

2016年9月24日 | カテゴリー : | 投稿者 : 和裁屋

浴衣の着姿

浴衣の着姿

夏、真っ盛りですね~

街を歩いていて花火大会や納涼祭りで、また、テレビのCMやバラエティー番組などなど、浴衣の着姿を目にすることが多くなりました。

浴衣の着姿を見ていて、仕立て屋目線で気になることがあります。それは、衿元で衿の打ち合わせ具合です。男性の浴衣は、胸元が見え少々はだけていてもワイルドっぽさを演出?する事ができますが、女性の場合、浴衣は長襦袢を着ないので(衿元に半衿を出すことはありません)胸元が開いているのはちょっといただけませんね。衣紋もあまり抜かず、衿をある程度深く重ね、詰めて着た方が清楚さがあり(詰めすぎると暑苦しくなりますが・・・)、逆に胸元が開いていて衣紋が抜きすぎていると妙にケバケバしく、いやらしい変な感じがします。(仕立て屋だけかもしれませんが・・・)もちろん、着付け方にもよりますが、既製品では寸法上、胸元のことまでは何ともならない場合があります。

衿元の打ち合わせ

標準とされる寸法で仕立てると以下のようになります。

衽下がりの違い

衽下がりは標準で23cm(6寸)です。

バストが大きい方は胸元が開きやすいので、衽下がりを20cm程度にして、胸元の布幅(脇から衿付けまでの距離)を広くします。特殊な例では衽下がりを15cm位にしている方もいました。

衽下がりの違い

上の図で比較すればよく分かると思いますが、衽下がりを短く(剣先を高く)する事によって①よりも②の方が広くなっていることが分かります。もちろん、バストによって抱き幅(身八ッ口での脇から衽付けまでの距離)を広くしますが、抱き幅と前幅との関係や剣先までの衿付けの斜め具合も計算し、着る方の体型に合わせて寸法を変えて仕立てています。もっと、ふくよかな方は衿付けを湾曲させて付けたりもします。

「浴衣」で検索すると、着姿の画像がいっぱい出てきて、「ちょっとな~」と思うものもあります。また、ネットショップなどで見ることができますが、長襦袢?なのか嘘つき長襦袢?を着て半衿を出して浴衣?なのか単衣?なのか分からないものを着ている姿を「浴衣」として販売もしています。

もともと浴衣は、「湯帷子:ゆかたびら」ともいい、風呂上がりに着用する単衣の和服(帷子)のことで、汗を吸うように綿で出来ている物です。お殿様は、風呂上がりに浴びるように着て汗を取ったともされ、浴衣という名前が残っています。なので、夕方から着始める和服です。真っ昼間から、着ない和服なんですね~(お年を召した方がよく仰っています。チェックが厳しいですね(^_^;))

時代と共に浴衣も夏の風物詩、ファッションとしても取り入れられ、丈の短いものや、衿にレースをあしらったものなど色々あります。私としても和服を着ていただける事は、大変嬉しいのですが、「本来はこうなんだよ」ということも知りつつ、カッコ良く着ていただきたいなあ~と思います!

夏の和服地「絽」

夏の和服地「絽」

梅雨も明け、夏本番となりました。暑いですね~

夏の和服地として、織り方の種類によって分類されるもので 羅(ら)・紗(しゃ)・絽(ろ)があります。

着用する時期は・・・・・・

  • 絽・・・6月中旬頃から8月末頃
  • 紗・・・7月上旬から8月まで(盛夏と呼ばれる時期の着用で9月からは着用できないとされています)
  • 紗袷(しゃあわせ)・・・盛夏には着用できなくて、5月中旬から6月までと、9月の1ヶ月間とされているようです。
  • 透けるもの・・・6月下旬頃から9月上旬頃まで

暦から「衣替え」などで、○○はもう着る時期ではないとか、お茶やお花、歌舞伎などの世界では守られている様ですが、昔からの暦に当てはまらなくなってきている最近の異常気象の影響で、和服生地の織り屋さんでは、絽とか紗が着られない時期でも涼しく和服を楽しめる様に、熱伝導率が良い和服生地などを研究開発をされているようです。また、それ以外に普段に和服を着られる方は、暦に関係なく和服を選択されている方も多いようですね。

「絽」の絽の目をよ~く見てみると

絽の種類は、平絽・駒絽・紋絽・絽縮緬(ろちりめん)・絽綴(ろつづれ)などがあります。織り方は、平織りとからみ織りを組合わせたもので、縦糸と横糸をからめて絽目を作り、この横糸の本数から三本絽・五本絽の名前が付いています。(日本和裁士会発行 新版和服裁縫上巻 参照)

三本絽

三本絽のものは、絽の目の間隔が細く、付下げや訪問着などに使われることが多いようです。

五本絽

反物端に「五泉」の印が記されているものがありますが、新潟県の五泉市で織られているもので、五泉駒絽(五本絽)です。五本絽は喪服や小紋などに使われています。

七本のものもあります。

七本絽

どれも横糸が奇数ですね。

本数を組合わせて変形させた絽もあります。

横糸に強撚糸を使った「絽縮緬」

とてもしなやかで、涼しげですが、少々縮みやすい生地です。

絽縮緬

きものの生地以外で絽の裏衿があります。

横糸を数えてみると13本ありました。

糸の太さや本数で、絽の目の間隔が変わります。

その他に、絽の帯もあります。

絽八寸帯 (かがり帯・袋名古屋帯)P1080698

絽八寸帯

(かがり帯・袋名古屋帯)

絽の目を拡大すると・・・・

暑い時に、和服は洋服に比べて袖口や脇など隙間が多く風通りも良いので、組合の行事などに「洋服より涼しいから」と、和服を着て来る女性が多いです。ある女性の方は、脇をグッと紐で締めると汗が出ないとも言われていました。また、和服の薄い布がひらひらと揺れる様子は、見ていても涼しげですよね。

慣用句(番外編)

以前、和服の袖にまつわる慣用句についてアップしました。それを見た家内が、他にも和服にまつわる慣用句がないのかと百均で買った「慣用句集」を見ていたら、ニヤッと笑いながら「面白い慣用句を見つけた~」って。その慣用句とは・・・・・・

鼻毛を数える

ドキッとしました。私はほとんど家の中での仕事なので、その部分のお手入れは、出かける前に洗面所でとか、車中でルームミラーを見てチョキチョッキと切る程度で・・・・・・

スミマセン・・・脱線しましたm(_ _)m

「鼻が高い」とか、「鼻の下を伸ばす」などは、よく使う慣用句ですが、「鼻毛を数える」というのは聞いたことがありませんでした。

その意味は、
多くの場合、女性が男性を適当にあしらうといった意味と、女が自分に惚れている男を思うように操ることの慣用句だそうです。「男性を袖にすること」といったところでしょうか。同じような意味の慣用句としては「尻毛を抜く」とか「鼻毛を読む」などがあるようです。使い方は、「惚れた女に鼻毛を数えられた~」とかでしょうか?

鼻毛の慣用句は他にもありました。

  • 鼻毛が長い:女の色香に迷い、だらしなくなること
  • 鼻毛を抜く:騙したり出し抜くこと
  • 鼻毛を伸ばす:鼻毛が長いと同じような意味です。
    (小学館発行 大辞泉を参考にしました)

鼻毛の慣用句も、あまり良いイメージではありませんね。男性も、エステに通う時代ですから、伸びた鼻毛の本数を数えられないように、そのあたりの身だしなみもしっかりとしないといけませんね。

2016年7月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 和裁屋

電気を使わない足踏みミシン

電気を使わない足踏みミシン

2001年に公開された「クレヨンしんちゃん  嵐を呼ぶ モーレツ オトナ帝国の逆襲」にも登場している足踏みミシン。ご高齢の方にとっては「懐かしい!」という方もみえるかもしれません。カミさんの実家にも足踏みミシンがあり、義母は洋裁が得意で家族のパジャマやワンピース、ブラウスなど3姉妹の服を縫っていました。また、浴衣やきものも作り、和裁にも精通しています。電気を使わない足踏みミシン、大変エコなのですが、今では家庭に電動ミシンすらない状態ですね。

今でも私達が使っているミシンは1960年製で「SINGER職業用モデル188U」です。父が和裁の修業を終え、独立した時に使い始めたミシンです。

SINGER/188U

私が小っちゃい頃、父の見よう見まねでミシンでカタカタと遊んでいて、指を刺してしまった記憶があり、強烈に覚えてます。もう、半世紀以上働いていることになりますね。踏み板付近のベアリングの調子が少し悪いですが、こまめに油を差していれば、まだまだ現役で使えます。

和裁では、殆どが手縫いですが、浴衣やウールなどの生地を縫う場合や、洋裁っぽいコートの縫製や、布を継ぎ合わせたり部分的にもミシンを使います。また、ちょっとした余興や演芸大会、コスプレの衣装などはミシンで仕立てることも出来ます。

水戸黄門衣装

その他に、袋帯の端縫い、名古屋帯の仕立てにもミシン縫いが多く、袋名古屋帯(八寸帯 かがり帯)の仕立ては、手かがり以外にミシンかがりがありますが、私はゆっくり縫える足踏みミシンの特性を生かし、一針ずつ、端糸とその次の縦糸との窪みに細かい針目を入れ、あまり縫い目が目立たないように仕立てています。足踏みミシンは、超スローでも縫うことができるといったスピード調節ができたり、縫い終わりはきっちりと点に針を下ろすことができるところがいいですね。

袋名古屋

ミシンかがりの仕立て

和裁で使用するミシン針は11番から9番程度ですが、私は細めの9番を使用しています。帯など堅い物を縫うと、針先が丸くなり布地を傷めますので、折れたり曲がったりしなくても頻繁に交換しています。

工業用ミシン針

修業終了後、実家に帰ってこのミシンを使い始めていますので、私とは30年弱の付き合いでしょうか?長い付き合いで分かったことは、無駄のない様にボビンに巻く糸の量とか、ボビンに糸が無くなりかけると音が少し変わるとか・・・気温の低い冬場は、少し重く機嫌が悪いですね。ホコリも溜まりますし、油も差さなければなりません。ベルトも伸びてきたら、切って短くしたり、交換したり手入れが必要ですが愛着が涌く和裁道具の一つです。

工業用ミシン ボビンとボビンケースDSC_0099

工業用ミシン

ボビンとボビンケース

修業時代には、この足踏みミシンを改造した電動ミシンを使ったことがあります。自動車のアクセルのように踏み板を少し踏むとゆっくり動き出し、さらに踏み込めばスピードが出ますが、「ここのピンポイントに針を下ろして留める」といった作業は電動ミシンは不向きで、踏み板を戻しても2,3針余分にはみ出てしまいました。主にウールなどの仕立てに使っていました。

日本人の聞き間違いなのかもしれませんが、ミシンの語源はソーイングマシーン(Sewing Machine)の機械=マシーンが、ミシンになったそうです。他には、アイロンは鉄(アイアン:Iron)からだそうです。

映画アイアンマンは、アイロンマンになってしまうのかな(*_*)

2016年7月5日 | カテゴリー : 和裁の道具 | 投稿者 : 和裁屋

袖にまつわる慣用句

袖にまつわる慣用句

以前「都市伝説ならぬ幽霊の片袖伝説」という題名でブログにアップさせていただきましたが、辞典で「袖」を調べてみると、「袖」という字が入った慣用句が結構ありました。目にとまったものを幾つか紹介したいと思います。

辞典を見ていて感じたのは、「袖」という言葉で表現すると、直接的ではなく心情を奥ゆかしく表し、多彩です。特に涙にかかわることが多いように感じました。(小学館:大辞泉を参考にさせていただきました)

◆涙にかかわる袖

袖時雨・袖の雨・袖の浦(地名の場合もあり)・袖の氷・袖のしがらみ・袖の時雨・袖の雫・袖の露・袖の淵(ふち)・袖湊(そでのみなと)など

袖に時雨る

袖に時雨が降りかかる。袖に涙が落ちるたとえ。

袖に露置く

露がかかって袖が濡れる。また、涙で袖が濡れること

袖に湊(みなと)の騒ぐ

港に波が打ち寄せて騒ぐように、袖に涙がひどく流れること。

袖を絞る

涙で濡れた袖を絞る。ひどく涙を流すことを意味します。

◆あまり良くない場合に使う袖

袖移し

他人から見えないように自分の袖から他人の袖へ、こっそり渡すこと。内密に渡すこと。

袖の下

人目に付かないように袖の下から贈る物。内密に贈る物品や金銭。そでした・わいろ

袖にする

親しくしていた人を、ないがしろにする。冷淡にあしらう。

袖乞い

こじきをすること。また、こじき・ものもらい。

袖の梅

悪酔いや二日酔いの薬。

◆男女にまつわる袖

袖褄を引く

異性に言い寄ること。

袖の別れ

男女が互いに重ね合わせた袖を解き離して別れること

袖返す

袖を裏返しにする。こうして寝ると、夢に恋人が現れるという俗信があった。

片袖敷く

片袖を敷いて寝る。つまり、独り寝をすること。

◆その他

袖打ち合わす

かしこまって左右の袖を寄せ合わせる。相手に対する敬意を表す。(袖掻き合わすと同じ)

袖にすがる

袖にとりついて哀れみを請う。助けを求める。

袖振り合うも多生の縁

道で人と袖を触れ合うようなちょっとしたことでも、前世からの因縁によるものだ。(多生とは、何度も生まれ変わってくることを意味します。)

袖振る

別れを惜しんだりという意味と、好きな人に愛情を示したりするために袖を振るという意味。

袖を連ねる

大勢の人が連れたって行く。また、行動を共にするという意味。

袖を通す

衣服を着るという意味や、特にはじめてその衣服を着ることを意味します。

袖を引く

袖を引いて人を誘う。催促すること。また人の袖を引いてそっと注意することを意味します。

上記以外にも色々ありますが、「袖」を使って作文をしてみました。

若い頃、友人数人と起業し、何とか仕事を取る付けるために、新しいスーツにを通し、仲間とを連ね、打ち合わせ、にすがる思いで企業を回り、やっとの思いで大手企業との契約までこじつけた。数年間は順調だったが、不景気となり仕事が減ってきたある日、大手企業幹部から仕事を発注する代わりにの下を要求された。私は、従業員も数名抱えていたのでそれに従っていたが、仲間に発覚。次第に仲間からは袖にされ、さらに倒産をしてしまった。羽振りが良かった頃、褄を引いた女性達も、だんだんといなくなり、唯一だった彼女ともの別れとなり、を絞る毎日が続いた。やけ酒との梅を飲む日々が続き、貯金も底を突き、今では乞いとなってしまった・・・・・

「袖」の慣用句は、ネガティブですね~ 何か、悲しいものがあります(T_T)

袖の他にも、「衿」や「裾」、建築物や建具にも使われている「褄」など調べてみるのも面白そうですね。

浴衣身丈直し

浴衣身丈直し

3年前に仕立てた男物浴衣の身丈直しの仕事依頼がありました。

お客様にお話を聞いてみると、毎年この時期にお祭りで浴衣を着て、クリーニング店に出したところ身丈が縮んでしまったようです。身丈を測ってみると約10cm縮んでいました。私どもでは、男物浴衣の反物から仕立てる場合、反物の長さや身丈にもよりますが、男物は対丈で着るために身丈は重要な寸法なので、後々身丈を伸ばせるように身頃などに内揚げや縫い代を入れて裁断します。また、男物浴衣以外の男物では、女物に仕立て直しできるように、縫い代を入れておくともされています。

今回のように縮んでしまった場合でも、ある程度内揚げや縫い代があれば、身丈を直すことができます。

身丈直しをする場合、始めに確認をするのが、身頃の内揚げの量です。

裏側から見ると

摘まんで縫ってあるの内揚げです。男物の場合、殆ど前身頃と後身頃の内揚げの量は一緒です。縫い目から摘まみ山まで測って2倍すると身頃を伸ばすことができる長さです。

次に確認しなければならないのは、衽の上・衿の中に入っている衽縫い代の量です。

身頃を伸ばしても、衽が届かない!という場合もあり、それでも直す場合には、胸の布幅が狭くなってしまうので、胸元がはだけるといった着辛い原因となります。身頃の内揚げ分+縫い代があるか、確認をします。(縫い目を解き、確認する場合があります)

そして、衿先の縫い代も確認します。

およそ、内揚げ分の半分+縫い代があるか、確認をします。妻下寸法はは身丈の半分から計算しますので、内揚げ分の半分を目安にしています。この縫い代がないと、衿先が腰に掛からないといった事が起きます。これも、着にくさに繋がりますね。(縫い目を解き、確認する場合があります)

以上が、男物浴衣や単衣物の身丈直しをする場合、チェックする主なポイントです。今回のような、男物浴衣の身丈直し代は、手縫いの場合8,000円(税別)・ミシン縫いでは7,000円(税別)程度です。

女物浴衣の場合は、身丈に対して反物の長さも短く、身頃も繰り越しつまみ程度しか摘まんで縫っていませんので身丈を伸ばすことは、あまりできません。

袋帯のだぶり直し

袋帯のだぶり直し

帯の仕立ての仕事が来ました。

検品をすると、表地と裏地のつり合いが悪く、表が緩くとてもだぶっています。柄の感じから古そうで、時間が経っているので表生地と裏生地の材質が違いすぎて、つり合いが悪くなっていますいます。さらにガード加工を施したので裏地が縮んでしまったのかもしれません。お客さんこのことを告げ確認をしていただき、端縫いを解き、つり合いを直します。

縫いを解く前にどれだけ縮んでいるか、手先の織り止めの位置で、裏地に糸標をしておきます。

両端のミシン縫いを解き、手先を見てみると、約6cm強、表地の方が長いようです。

表地、裏地共に、霧吹きと業務用スチームアイロンでこれ以上縮まないように地直しをし、生地を整えます。

元の縫い目でミシン縫いをして、縫い代は縫い割りをします。

表側にひっくり返して、さらに被山を整えながらアイロンを当て整え、その後は通常通り帯芯を入れて仕立てました。

これで、スッキリとつり合いもよくなりました。

この場合のつり合い直しと仕立て代は、帯芯別で14,000円(税別)程度です。

なお、はじめの縫い跡が出てしまう場合や、帯幅が多少狭くなる場合もございます。端の縫い方や生地の具合によって出来ない場合があります。また、下の写真のような縫い目がない本袋帯などは、つり合いを直すことはできません。お気軽にご相談下さい。

本袋帯端

2016年5月11日 | カテゴリー : 仕立て, | タグ : | 投稿者 : 和裁屋