こんなアプリ、見つけました。
連休中、スマホを触っていると・・・「着物帯合わせ」というアプリを見つけました。
着物や帯の写真を撮って、反映することもできます。
カメラ撮影の距離感がちょっと難しそうですが、着姿をイメージしやすくなりますね。
帯の仕立て直しをしていて思うこと
帯の仕立て直しの依頼も承っています。
時間が経つと、表と裏のつり合いが悪くなったり、帯芯が縮んだりしますので、一度全て解いて、染み抜きや洗い張りをして仕立て直しをます。(過去の袋帯仕立て直しブログはこちらをクリック)
もちろん、帯芯も解き、新しい帯芯に交換しますが、原則、付いていた物は全てお客様にお返しします。古い帯芯をお返ししたところ「こんなにカビていたの~」と仰られる方が殆どです。着物の裏地は、広げて見れば分かりますが、袋帯や名古屋帯などは中に帯芯が入っていて見えないので、分かりませんよね。でも、意外とカビています。
下の写真は、一世代時間が経っていて、お母様が成人式の時に締めた袋帯の帯芯です。
綴じてあった糸は切れてしまって、所々帯芯がずれてシワだらけですね。
もちろん、新品の帯芯は真っ白で、「防カビ」とか施してあるものが多いです。
また、お祖母様が若い時に締められていた名古屋帯の帯芯。二世代の時間が経っています。
最近の袋帯は、端縫いの糸に化繊の糸が使われています。とても細く切れにくいのが特徴ですが、果たして時間が経った時、絹物の帯地に対して優しいのか疑問です。糸が先に切れれば、帯地は傷つかないでしょうけど、しかし、糸が切れず、部分的に力が加わったら布は裂けてしまいます。
師匠や先輩方から教えられ続けていますが、この様な理由から絹物は絹糸で縫っています。これも、布を大切にする日本人の智恵ですね。
うーん なんだったっけ「袂○○」
先日、単衣の仕立て直しの依頼があり、袖を解いている時に、袂の裏側にホコリが溜まっていました。
袂(たもと)とは、袖の丸くなっているところで、「袖丸み」とか簡単に「丸み」とか言います。
今から2,3年前に和裁組合で同席した方と、話の流れで「あっ、そうそう、袂に溜まるホコリって知っていますか?」と聞かれ、私は知らなかったので「なんて言うの?」と聞き返した記憶があり、袖を解いている最中に思い出し、
「なんて言ったっけ?・・袂ゴミ・・・袂埃??・・・・袂垢?? うーん・・・・・・思い出せない・・」
と、思いながら、残りの部分を解いていました。
自宅に帰って、早速、本棚のオブジェになっている辞典「大辞泉」をぱらぱらめくっていると、ありました!
袂糞(たもとくそ):たもとの底にたまるごみ。(小学館「大辞泉」より)
もうちょっと、和風で粋なネーミングかと思っていました。やっぱり、「溜まってきたら取らないといけないョ!」というような、ネーミングですね。勉強になりました。まだまだ、知らないことだらけです。
袂糞(たもとくそ)
紋の位置について
和服に紋を入れる場合があります。一ッ紋・三ッ紋・五ッ紋。数が多いほど格が高いものとされています。一ッ紋は背に1つ、三ッ紋は背と袖に、五ッ紋は背と袖と抱き(前身頃)に付けます。
結婚式での新郎の紋付き羽織袴姿、喪服、留袖などには五ッ紋を入れます。紋の種類には日向紋やかげ紋、縫い紋等があり、家紋ではなく、草花などをあしらった、刺繍のお洒落な伊達紋を無地の振袖などに入れる方もみえます。
紋の位置の目安は、男女大人用着物・四ッ身着物(4~5歳ぐらいまでの着物)・一ッ身(1歳~2歳までの着物)の3種類に別けられていて、それぞれの紋の上端までの距離です。
男女大人用着物
背紋下がり … 衿付けから約6cm
袖紋下がり … 袖山から約7.5cm
抱き(前)紋下がり … 肩山から約15cm
四ッ身着物
背紋下がり … 衿付けから約4.5cm
袖紋下がり … 袖山から約6.5cm
抱き(前)紋下がり … 肩山から約13cm
一ッ身
背紋下がり … 衿付けから約4cm
袖紋下がり … 袖山から約6cm
抱き(前)紋下がり … 肩山から約11cm
と、されています。
仕立ての見積もりをする時に、背紋の位置から身頃の四ツ山位置(衿肩明きを切る位置)を決め、裁ち切る身頃丈を決めます。背紋の上端から衿付け縫い代を加えた寸法で四ッ山を決め、抱き紋までの距離を測り、左右の抱き紋下がりが合っているのかを確認します。また、背の紋中心を測り、背縫い代の深さを決めます。
無地などの仕立てで紋入れからする場合には、予め見積もりをして位置を決めます。注意しなければならないのは、繰り越しが大きい方(衣紋を多く抜く方)や肩の厚みが極端にある方は、背紋下がりの位置や肩山からの抱き紋の距離を考慮しないと、着たときに不自然になってしまいます。
紋の大きさは、女物は直径2cm、男物は直径3.8cmとされていますが、伊達紋などは大きな紋が入ります。
最近多くなってきている「仕立て直し」
早いもので、平成29年がスタートしてもう2月半ばになりました。先日、豊橋市では鬼祭りが行われ、この鬼祭りが終わると春になると言われています。しかし、立春も過ぎたと言うものの、梅の花が咲いているところもあれば、雪が降っている場所もあり、まだまだ春は遠いのかな?とも思ったりしています。
さて、最近、裄直しなどの寸法直し、長襦袢の半衿掛けなどの仕事が多いですが、仕立て直しも多くなってきています。
先日では、仕立て上がった振袖・長襦袢・袋帯を持ってお母様がお越しくださいました。お母様の姉妹が着て、今度は娘さんが着ることとなり、身長も、体型も似ているのでそのままでも着られそうなのですが、裏地などの汚れが目立つのと綺麗にして着せてあげたいとのことで、洗い張り(解いて生地を洗うこと)をして、裏地取り替え・仕立て直しをしました。
以上の内容の振袖仕立て代(振袖仕立て代・洗い張り代・裏地代・縫い跡の修正代等を含め)は、合計で10万円程度です。(※染み抜きや修正箇所等によって仕立て代は変わります)
私が七五三と成人式に着た着物は、息子2人とも着ています。息子達の着た姿を見ると、嬉しくもあり、頼もしくもあり、私が二十歳の頃のこれからの大きな希望と不安が入り交じった気持ちも思い出し、息子達も同じ気持ちかな・・・なんていろんな事を思ったりしました。
日本にはいろんな通過儀礼があって、和服は深く関わっています。親が着たものを、その子供が着る。親の気持ちが衣服に宿って、「がんばれ~」とか「立派な成人になってね」とか、子供が着ることによって伝わるような気がしますね。20年以上の前の衣類が、次の世代でも着ることができ、リメイク・リフォーム・リサイクルできる和服は、世界でも珍しいのではないのかな??
以前、テレビで成人式の様子をニュースで放送していました。ある女性の新成人が無地の振袖を着てインタビューに「お母さんが着た振袖です。無地の振袖の方が他の人と違って目立つから、着ることにしました!」と答えていたことが印象的でした。成人式全体の様子も映像が流れましたが、仕立て屋の仕事をしているせいか、男性の羽織袴もなんか・・・・・殆どが柄が同じに見えてしまいます。
以前のブログにも載せましたが、七五三でも同じように感じてしまいます。(七五三の以前のブログはこちら)成人式も七五三の延長のような・・・・・一つ一つの着物を見ていれば、蛍光色っぽい花が全体に散りばめられていて、可愛いく豪華に見えますが、同じ雰囲気の柄が集まると、見栄えがしない気がします。昔の方が日本の色を使い古典調柄をあしらったものが多く、それぞれが主張していたようにも思えます。
また、別の日には、喪服と長襦袢を持って来られた方がいました。嫁いだ時に持ってきた喪服ですが、今まで一度も着ていなく、躾も付いている状態でした。近々着られる予定があるので、はおってみたら幅が狭くて・・・・と相談に来られました。
見てみてみると・・・・・
喪服ですので、一度も着ていなくても身幅を広げる場合、縫った跡(標)や折り跡が出てしまいますので、その跡を目立たなくする修正が必要
裏地は時間が経っているため、黄ばみが出ているので、取り替えた方が良いのでは
体型が変わったために、身幅(脇)のみの寸法直しでは着やすくならない。衽幅や抱き幅などの寸法直しが必要かと思われる。
身丈も短く、また、袖丈が長い。
縫い跡修正と着やすい幅直し、袖丈直し、裏地取り替え等という方法もあるが、殆ど解いてしまうため、仕立て直しとの価格の差はあまり無い
仕立て直しの方が、一から仕立て直すので部分寸法直しより、きっちり仕立てることができる。
と、説明させていただき、縫い跡修正、裏地取り替え、仕立て直しをさせていただきました。縫い跡の修正は、染み抜き屋さんにお願いしていますが、昔の喪服の生地は染めも織り糸もしっかりとしていて、綺麗に修正できました。
以上の袷喪服の仕立て代(仕立て代・裏地代・着用時に見える箇所の上前の部分と裾の修正等を含め)は、6万円程度でした。(※染み抜きや修正箇所等によって仕立て代は変わります)
最近、喪服の仕立ては海外で行っており、私たちの所へは殆ど来ません。今、作られている喪服の生地は、全てではないですが以前よりだいぶ薄くなったものが多くなっているように思います。そのような喪服の生地を仕立てる時に注意しなければならないのは、一度縫ったら、伸びてしまい、染料がはげてうっすらと白くなってしまうので、縫い直しができません。そして、この様な生地は幅を広げたり、丈を直すという仕立て直しは無理かと思われます。
また、和裁組合の研修会で、紋屋さんの講演があったのですが、現在の喪服の生地は、「カラスの濡れ羽色」のように黒色をよく見せるために、ワックスを掛けるそうです。なので、紋入れの際には染料が乗らず、一度ワックスを取ってから、紋を入れるそうです。
今でも、しっかりと織り糸から吟味して、古くから伝わる技法で柄を染め、作り直しを考えた反物もありますが、反面、デザインのみに目が行ってしまいがちな、反物(きのも)もありますね~
袋帯の仕立て方(垂先・手先)
袋帯の垂先・手先の仕立て方には、いろいろな方法があります。
以前に説明した織り止め(垂先・手先に太く織ってある線)の出し方については「袋帯の地方色(帯について その2)」をご覧ください。(クリックするとジャンプします)
・垂先・手先を縫う方法
裏側を数ミリ控えて、縫う方法です。中表にひっくり返した後、垂先の出来上がりで縫い、帯芯を入れて綴じ、表にひっくり返して手先を本ぐけで縫う方法です。表地と裏地がピタッと、くっついている仕立て方です。
◆表側
◆裏側
帯芯を入れた後、手先・垂先を出来上がりに折って、スクラップかがり(束かがり)にする方法もあります。
・垂先・手先の中で縫う方法
垂先は約3cm~4cm、手先は約2cmの深さで表裏を縫い合わせる方法です。表地と裏地がある程度の深さで、開きます。
呉服店によってまちまちですが、某○○加工や呉服店の名前の入ったネームタグを付ける場合、この様な仕立て方をしてタグは垂先の中央に付けます。
深く縫い合わせる方法は、垂先のみの場合もあります。また、縫い合わせるのではなく千鳥でかがる場合もあります。
直接持ってこられる方のご要望によって1・2の仕立て方を提案させていただいていますが、殆どの方が「どちらでもいいです」といわれます。中には2の仕立て方は、先が広がってしまうからと言われる方もみえます。地方によっても仕立て方は、様々なようです。
きものの仕立て直しで、綺麗になります。
お母様が「きものを娘に譲りたいのですが、どのようにしたらよいのでしょうか?」と、ご相談がありました。お話を伺うと、地元の呉服店は廃業してしまって、どこに持って行けばよいのか分からなかったようでした。
きものを見てみると、
胴裏地には沢山のシミがあり、八掛の色もちょっと派手なので、もう少し優しい色目が良いとのことで、胴裏と八掛は新品に取り替えることとなりました。
時間がだいぶ経っているので、表生地が縮み裏側の生地が緩んでいます。袖口は・・・・
裾も表生地が緩んでいます。(点々のように見えるのは、縫い躾(ぬいびつけ)またはグシという躾が掛かっています)
当初は、裏地取り替えと裄や身幅などの寸法直しというお話でしたが、表生地のねじれなどで、寸法直しでは思ったほど仕立て上がりがよくない事や、洗い張りして仕立て直す費用と比較しても、さほど変わりないことをお話させていただきました。
また、表生地にも全体にシミがあり、全ての染み抜きをするのには、費用が掛かりすぎてしまいますので、まず、洗い張りをして、その後、シミの位置を確認し、寸法を測り、縫い代に入る箇所や、着て目立たなく気にならない場所の染み抜きはせず、上前(左身頃の前)や衽、後身頃のお尻あたりなど目立つ部分のみだけ染み抜きをして、仕立て直しをした方が、出来上がりも綺麗に仕立て上がるのではと説明させていただきました。
仕立て後の袖口は、
裾は
裏地のつり合いも綺麗になりました。
寸法は、娘さんが持っている長襦袢に合わせて着られるように、また体型に合わせた寸法で仕立てました。
和裁屋では、仕立てた寸法や内容は保存しています。また、きもの寸法を一度寸法を決めれば、長襦袢や羽織る物など、その他の和服を仕立てるときに、合わせることができます。仕立てのお客様には寸法表をお渡ししています。(寸法直しの方は、この限りではありません)
和裁屋の仕事の様子です。
袋帯の解き仕立て直し(だぶり直しNo.2)
今まで袋帯について何件かご相談をいただきました。その中の一例ですが、詳細な仕立て方を説明いたします。
袋帯の検品をしてみると、
袋帯仕立て直し01袋帯の解き仕立て直し(だぶり直しNo.2)
今まで袋帯について何件かご相談をいただきました。その中の一例ですが、詳細な仕立て方を説明いたします。
袋帯の検品をしてみると、
時間が経っているせいか、表・裏の縦横の糸の伸縮率が違うためか?表の幅が縮んで裏生地が出てしまっています。また、端縫いの糸が縮んでいるのか、裏地の丈が縮んでいるのか、表生地がダブっています。
相談に持ってこられる袋帯で、こんなにも裏地丈が縮んでいる物もありました。
端縫いがしてあるこの状態で、アイロンを使い、つり合いを直すのは大変難しく、直ったとしても時間が経つと元に戻ってしまいます。お客様に説明をしたところ、端縫いを解き、端縫いを直して仕立てることになりました。
和裁屋では、袋帯の解き・仕立て直し・芯入れ仕立ての手順は、以下のように行っています。
裏側にひっくり返して、ミシン縫いを丁寧に解きます。所々、糸に切り込みを入れ、糸を抜いてゆきます。仕立て屋さんの中には表生地と裏生地を引っ張って、糸を裂く方もいますが、生地が傷んでしまったり、最悪、生地が裂けてしまいますので、糸を抜いて解いてゆきます。注意していることは、刃物の鋏を使うのは必要最小限にして慎重に解いてゆきます。
いつも行っているのは、解く前に織り止め(垂先・手先にある太い織り線)の位置に糸標を付け、解いた後に丈を比べています。裏地が15cm(4寸)も縮んでいる帯もありました。
表裏を解いたら、正絹(絹100%)の帯地の場合は、生地を整えるために当て布の上から霧吹きを掛け、じっくりとアイロンで地直しをします。出来上がっている帯などは、端が延びていたり、生地がねじれている帯もあります。表地・裏地両方とも時間を掛けて、歪みを直し、アイロンを掛けます。(化繊等では極端に縮んでしまったり、変化してしまう場合がありますので、アイロンは当てない、または、必要最小限の地のしをします)
以降、1つの作業を行った後には、縫い目やつり合いなどを整えるために、必ずアイロンを掛けるという仕立て方をしていますので、作業中に生地が狂って縮まないように、初めの地のしは、しっかり丁寧に行っています。
生地が整ったら、少々裏側を張らせ、待ち針を打ちます。
元の縫い目を確認しながら両端を、綿の糸で綴じます。
表、裏の縫い跡や汚れなどを考慮して、ミシン縫いをします。
縫い方はケースバイケースですが、元の縫い目を目安にしたり、標を付けたりしてミシン縫いをします。
今回の裏地幅が出ていた帯は、元の縫い目が出てしまわないように、表帯幅に合わせて縫ってみると、裏地の元の縫い目が2~4mm程度ずれました。結構、幅が縮んでいましたね。
縫ったところをアイロンで整えます。
縫い代の厚みで、当たりが付かないようにボール紙を敷き、鏝で押さえ縫い割りにします。
表側に返し、状態をチェックしながらアイロンを掛け、帯全体を整えます。
再度裏側に返し、垂先を縫い、霧吹きで縮めた帯芯を、帯幅で裁断し、少々帯芯に緩みを入れながら待ち針を打ち
帯芯を綴じてゆきます。
手先から表に返し、帯芯と帯地のつり合いなどを確認し、帯全体をアイロンで整えます。
手先の帯芯を整え縫い代に綴じ付け、手先を一針ずつ本ぐけをします。帯の生地は硬いので、連続して本ぐけをすると、斜め針(生地と生地の間に斜めに糸がわたる針目)となり、力が加わったときに糸が切れてしまうので、一針ずつ本ぐけをします。
最後に、仕上げをして完成となりました。
時間が経って、生地が大きく変化しないように何度もアイロンを掛け、生地の状態を整え、つり合いを確認しながら仕立ててゆきます。
なお、解き仕立て直しをする場合、元の帯幅より若干細くなる場合があります。また、元の端縫いの状態や、時間が経っている等の生地の状態によって、出来ない場合がありますのでご了承ください。
余談ですが・・・・
以前、仕立て上がった帯に撥水加工(ガード加工)をしたところ、表地が大変縮み裏地が手先で吹き出してしまい、仕立て直しをしたことがありました。こんな経験を踏まえ今は、袋帯の解き仕立て直しの場合や、表裏生地の端縫いから行う帯の仕立ては、初めの地のしのは、霧吹きと併用して、時間を掛け、できる限り帯地を縮めながら整える工夫をしています。