いろんな幅でも、きものが出来ます。2

先回説明した様々な幅の生地を使って、女物きものを仕立てる場合、どのくらい長さが必要か計算してみました。

標準とした体型は、身長155cmでヒップ95cm位の普通体系です。袖丈は50cmで縫い代を4cmとし、身頃は繰越3cm、縫い代は4cmとしました。(内揚げは殆どない状態です)柄などによって、各パーツの位置を移動する場合や、衿など工夫する部分もありますので、注意して下さい。また、後々、縮んだりして直すことを考える場合は、身頃には内揚げを入れ、内揚げの量と同等の縫い代を衽や衿などに入れておきましょう。

※布幅によっては、裄や身幅が出来ない場合がありますので注意して下さい。

1.小幅物(並幅物)

幅36~40cm位  長さ12m~  通常の裁断方法です。

2.小幅物(並幅物)

幅36~40cm位 長さ約11m

長さが不足している場合かぎ衽裁ち:両面物(うば衽裁ち:片面物)にします。

衿は摘まむなどして掛衿とし、摘まみ代に別布を挟み込むなどします。

3.大幅物(広幅物)幅70~80cm  長さ6.2m~

4. 大幅物(広幅物)幅70~80cm  長さ6m~

5.ヤール幅 幅90cm位(裄、身幅に制約あり) 長さ4.4m

6. ヤール幅 幅90cm位(裄、身幅に制約あり) 長さ4.6m

※衿を継ぎ足すので工夫が必要

7.普通幅 幅120cm 長さ4.4m(残布が出ます)

8.ダブル幅 幅150cm  長さ2.4m(残布が出ます)

洋服生地などできものを作る場合、裁ち目の処理や裁ち合わせの複雑さがネックですね。やはり和服生地の幅はきものを仕立てるのに合理的な幅になっています。きものを仕立てる場合「縫い代は一切裁ち落とさない」が大原則ですのが、最近の40cm以上の布幅で、痩せている方のきものを作る場合、作り辛いことがあります。お相撲さんのきものを作る場合は、同じ反物を2反用意してもらって、脇や袖付けに足し布をします。その方が合理的と考えられています。
参考資料:新版和服裁縫上巻(社団法人日本和裁士会)

いろんな幅でも、きものが出来ます。

 最近、和服の反物以外の生地、手芸店で売られている生地での仕立てが続いてありました。110cm幅の麻と綿の混紡で単衣の着物を、115cm幅の縦縞プリント柄でお祭り用の袴を仕立てました。


帯以外で、きもの等の生地(反物)の幅は、私が和裁の勉強をしはじめた40年ほど前では36cm程でした。その後、ウールアンサンブル生地でキングサイズやクイーンサイズといった少々広めの物が登場し、現在では40cm幅を越える物もあります。私達ではそれらの幅の物を小幅物(並幅物)といい、小幅物の倍の幅の物を広幅物(大幅物)といっています。大幅物は主に裏地(胴裏地)や居敷当て・男物長襦袢や男物羽織裏(額裏)などに使われています。きものなどの生地ではこの2種類の幅の反物を使っています。


和服生地以外で、手芸店には様々な幅の物が販売されています。普通幅として110~120cm幅の物や、ゴルフで距離を示すヤードからきているヤール幅は91cmまたは96cmです。

シングル幅は、28インチの71cm幅の物と36インチ92cmの物があります。また、カーテンやベッドカバーなどに使われるワイド幅やダブル幅は140cm~180cmです。


これらの生地を使ってきものを仕立てる場合、衿などを工夫することが必要です。また、余分な残り布が出てしまう幅の物もあります。

次回は、これらの幅の物を使って女物きものの裁断図を説明します。

繰越について②

・繰り越しとは

上図のように平らな場所で前身頃と後身頃の裾を合わせ、山になるところが肩山で、肩山からどれくらい深く衿が付いているかというのが繰り越し寸法です。明治時代頃までは、繰り越しは付いていなかったと言われています。

衿肩明きでもそうでしたが、繰り越し寸法も2種類の寸法表示があります。私のところでは呉服店の仕立てをする際の寸法伝票には、肩山から衿肩明きまでの距離が示されていてます。出来上がりの繰り越しの距離は衿付け縫い代(1cm強)を加えた寸法となります。(衿肩明きについてはここから)

もう一つの寸法表示は出来上がりの寸法で示す場合がありますので、出来上がり寸法か、そうではないのかを確認する必要があります。

また、下図のように衿肩明きを肩山で切り、衿付け縫い代を1cm以上深くする「付け込み」という方法もあります。

現在、女物には繰り越しを付けますが、標準体の男物や子供物には付けません。なので、下図のように繰り越し無しといっても、1cm強肩山より深く衿が付いています。

男性で肥満体の方などは、0.8cm程度から繰越を付ける場合があります。

掛衿の位置について

着物の本衿(地衿)の上にもう一枚布を縫い付けてあるのが掛け衿で、その役目は布の補強とか、汚れたら掛衿を取り外し、洗えるという布です。昔はクリーニングも無かった時代で、洗うと言えば縫い目を解き、「洗い張り」だったので、よく汚れる首回りの掛け衿だけを、簡単に取り外せる工夫をしたのでしょうね。長襦袢の半衿も元来、同じ役目でしたが、柄物や刺繍などをあしらった物が出回り、お洒落なものが多くなりました。

今回は、その掛け衿の長さなどについてお話しします。

上図のように現在では、剣先(衽の一番先端)より下に掛け衿先があります。浴衣の場合は、剣先から10cm程度でしょうか。フォーマルな着物では13cm程度です。この着物を着てみると、下のイラストのような状態になります。

十数年前に一部の呉服店より掛け衿をもう少し長くして欲しいとの要望があり2cmほど長くしました。その結果、身長の低い方は特に、それを着てみると下記のような着姿になります。

掛け衿先が、帯の中に隠れてしまう場合があります。もちろん、着る方の身長や帯を締める位置などにもよりますが、掛け衿先が見えていません。最近のテレビコマーシャルの着物姿でたまに見かけます。

昔、一度見たことがある掛け衿が下のイラストです。

掛け衿先が剣先の上にあります。最近の着物では全く見ない掛け衿です。このパターンは、お祭りの衣装にも見られ、衿布の補強や汚れたら外して洗うといった必要最小限の掛け衿の役目を果たしている物ですね。

今では、掛け衿の縫い目を外して掛け衿だけを洗ったりする方は全くいません。殆どの方は、着物を丸々「生き洗い」にしたり、お化粧などで汚れたら部分的にシミ抜きができます。現代での掛け衿の役目はあまり無いような気がします。

以前の掛け衿のブログ

・掛け衿と半衿の話

・掛け衿の話(経験談)

単衣の仕立て⑤

先回は、単衣の縫い額縁まで説明させていただきました。

肩当てについて

今回は、肩当てと衿について説明させていただきます。

肩当ては、衿肩明きの大きく切った部分を補強する布で、以下のようなものがあります。

・ハート型

私達はこの形が一番多く付けています。浴衣やウールなどの透けない物に付けます。

一昔前の浴衣や透けない単衣物などに多く付けられている形です。これもハート型です。

・三日月

絽や紗など透ける物は、以下のような肩当てがあります。

一番スタンダードな「三日月型」です。

上の写真は長襦袢の三日月布です。

羽織やコートなど透ける生地に付ける長い三日月布です。

◆衿について

原則、女物浴衣はバチ衿ですが、着る方の要望に合わせ広衿にする場合もあります。広衿にする場合、衿裏は生地の素材に合わせて衿裏を用意します。浴衣は新モス、化繊は化繊の衿裏、麻と絹物は絹の衿裏というようにします。

女物着物の広衿の縫製方法は、本衿と裏衿で身頃を挟み、標を合わせて縫い合わせます。本衿を先に付けてから、本衿に掛衿を縫い付けますので(このことを掛衿の別付けと言います)、掛衿が汚れた場合、比較的スムーズに掛衿を外すことができ、掛衿のみの染み抜き等ができます。それに対し浴衣の衿は、掛衿を本衿(地衿)に付けてから、衿付けをします。(掛け衿の束付けと言います)

・その他の衿の種類

女物長襦袢:広衿・バチ衿・広バチ衿・田之助衿 男物・子供物(着物・長襦袢):棒衿

単衣の仕立て④

単衣の仕立て④

先回は単衣の着物の衽まで説明させていただきました。

浴衣は「切り額縁」でそれ以外の物は、今回は衽の先端の「縫い額縁」で縫製します。

縫い額縁

1.浴衣(綿物)以外の物(絹・ウール・麻等)には縫い額縁をします。立妻は0.5cm、裾は1cmの出来上がりの場合下図のように裏側に標を付けます。線①②③④は外表に折りを付けます。

2.線③上で裾の出来上がり幅1cm上の点をA、線④上で立妻の出来上がり幅0.5cm内側の点をC、線②と線③の交点をBとし、この3つの点を一直線に結びます。

3.点Aと点Cを中表に合わせ、線上を細かく半返しで縫い合わせます。

4・半返し縫いで縫ったところを縫い割にします。

5.表に返し、額縁先端を整え、くけ代を内側に折り込みます。

6.図のように衽布にくけ付けます。

表側には折りぐけのくけ目が出ます。

単衣の仕立て③

先回は単衣の着物の脇まで説明させていただきました。

今回は、衽(おくみ)付け等を説明させていただきます。

◆ウールなどの衽納め

ウールなどのミシン仕立てや、化繊などの安価なものは前幅の標と衽幅の標を縫い合わせ、縫い代は衽側へ倒します。(浴衣と同様です)

衽納めは前身頃の縫い代を1cm程度折り、衽布にくけ付けます。(浴衣の折りぐけと同様です)

◆正絹(絹織物)の式服などの衽付け縫い目隠し

正絹(絹織物)の式服などは、以下のように縫い目隠しで縫製します。

1. 前身頃の前幅標の4mm外を裏側へ折ります。

2.衽布を手前にし、衽の幅の標と前幅の標を縫い合わせます。

3.衽布側へ被折りをします。

4.下図のように衽布と前身頃を広げ、前身頃縫い代を衽側へ倒します。

5.前身頃縫い代に裾くけ幅分切り込みを入れ、前身頃縫い代を折り、衽布にくけ付けます。絽など布地が薄く透ける場合には、衽布縫い代と重なるように前身頃縫い代を深く折り、衽布にくけ付けます。

次に続きます。

単衣の仕立て②

単衣の仕立て②

先回は、単衣の背縫いまで説明させていただきました。

(先回のブログはこちらから)

今回は、脇縫いを説明させていただきます。

◆単衣着物の脇

脇縫いの方法として、脇縫いをして脇縫い代を前身頃側に倒し脇納めをする方法と、ウールなどで行うミシン縫いをした場合に「縫い割る」方法、絹単衣着物などに行う「縫い目隠し」の方法があります。

◆片側に倒す方法

手縫いの場合は、浴衣より細かく、素材に応じた針目で脇を縫います。次に前身頃に縫い代を倒し、裾から裾くけ代分上がったところで、折りぐけ代分切り込みを入れ、脇縫い代を折りぐけで身頃にくけ付けます。後身頃いっぱいに居敷当てが付く場合、この方法で居敷当ても一緒に、くけ付ける場合がありますが、薄物や絽小紋など裏側の色が透けてしまう場合は、くけ代や居敷当てを織り込む位置など、工夫をします。(ミシン仕立てでもこの方法で行うことがあります)

折りぐけ

◆ウール着物などミシン縫いの場合で縫い割りにする方法

ウール着物などのミシン仕立てで行う方法です。脇縫いをした後、脇縫い代を下図のように脇縫い縫い目で縫い割り(縫い代を広げて割る)にします。

鏝(こて)などで、しっかり縫い目を押さえます。

裾から裾くけ代分上がったところで、折りぐけ代分切り込みを入れ、脇縫い代を折りぐけで身頃にくけ付けます。

◆絹単衣着物などに行う「縫い目隠し」

始めに通常通り脇縫いをし、その縫い目から約4mm程度上を空縫いします。

脇縫いで被折りをし、前身頃へ縫い代を倒します。次に空縫いに沿って脇縫い代を開きます。

裏側から脇縫いと空縫いの間に綴じを入れます。

裾から裾くけ代上がったところで、脇納めのくけ代分、切り込みを入れます。絽など表側から見て、透ける物などは脇納めのくけ代分を深くする場合があります。

居敷当てが付く場合は、「片側に倒す方法」で脇納めをします。地方によって、呉服店によっても「縫い目隠し」をしたり、しなかったりします。

縫い目隠しにまつわる師匠との雑談で・・・・

この縫い目隠しの方法(脇、衽、など縫い目隠しにします)は、中部地方あたりで行われ始めたそうで、昔、東京から来られた和裁の先生が、この縫い目隠しの方法を見て、「縫い目が見えないなんて、粗く縫って飛ばす方法だ!縫い目のあら隠しだ。東京の職人は、縫い目を見せて仕立てをしている。」と言われたことがあるそうです。

この言葉を胸に、私達はきちんと単衣の縫い目で縫っています。

次回に続く・・・・・

単衣の仕立て①

単衣の仕立て①

先回は、浴衣の仕立て方について説明させていただきました。

今回からは、単衣の仕立て方について説明いたします。

浴衣以外の単衣物の生地としては、絹物は夏大島や夏塩沢など全国津々浦々産地がありますが、麻は○○上布と名前が付く越後上布が有名で、他には小千谷縮などが有名ですね。木綿生地では久留米絣やしじら織りなど。沖縄の芭蕉布もありますが、その他、化繊やウールなども単衣着物の反物として使われています。

余談ですが・・・・・

そう言えば、現在ではもう見ることが殆どなくなってしまったウール・・・・30年以上前、私の修業時代、晩秋から年末はウールアンサンブル(着物と羽織)の仕立物が、ドーンと来ました。修業1年目ではウールの仕立てが多く、ウールの毛が部屋中に漂う中、仕事をしていました。また、モス(毛斯と書きます。ウール製)の長襦袢も、男物、女物問わずありました。お正月には皆さん、ウールのアンサンブルを着て、初詣に行ったり、コタツでミカンを食べながらくつろいでいましたっけ。

今では、反物を織る業者さんも殆どなくなってしまい、私たちの所へ来る仕立物は、皆無となってしまいました。

本物のウール織物は染めた糸で織ってあるので、表裏が区別付きません。中にはプリント(片面染めのもの)の物もありました。女物は主に連続した椿や井桁、格子柄などの柄があしらわれていて、可愛らしい子供用の物もありました。アンサンブルは羽織と着物の柄の関係など考慮し、裁断時には何度も確認をして鋏を入れます。

絹などの単衣物の仕立て方は、浴衣より手間暇掛けて仕立てます。縮みますのでアイロンを掛けて地直しをし、横糸を真っ直ぐにします。裁断にも気を遣います。着物は後で縫い直せるように内揚げ(身頃の腰あたりに摘まむ縫い代)と衽や衿などの各パーツの縫い代も考慮して裁断します。

浴衣はパリッとしていて糊が効いていますので、サッと折りが付けられますが、縮緬など絹物は柔らかくて薄く、手縫いの場合は、浴衣より細かい針目で縫い、折りが付きにくいので、時間を掛けてしっかり押さえながらの作業となります。単衣着物の仕立て方は、伸び縮みもしますので、浴衣よりワンランク上の仕立て方となり時間が掛かります。

◆単衣着物の背縫い

単衣着物の背縫いは、浴衣とは違い、袋縫い・伏せ縫い・別背伏せ布・共背伏せ布などの方法があります。

袋縫い

1.ウール生地などの背縫いに「袋縫い」という方法で背縫いを行います。始めに身頃の生地を外表(外側に表側が来るように)に合わせ、下図のように右身頃を4mmずらし、2mmの所を空縫いします。(ずらさずに縫う方法もあります)四ッ山から裾くけ代分上がったところまで、縫います。

2.裾で、裾くけ代分(2cm程度)のところで、下図のように空縫いより少々深く切り込みを入れます。

3.左身頃側に、空縫い縫い目より極浅い被(きせ)折りをします。

4.中表にして、3で折った被(きせ)山から2mm程度、右身頃を出して折りを付けます。背縫い代は左身頃側に倒れるため、右身頃を2mm程度出します。

5.下図のように、裾から1cmの深さで背縫いをします。その後、縫い返しもします。(背縫い代は左身頃側に倒れるため、裾を右側にして見える方を手前にして縫うためです。サウスポーの方は、逆で、四ッ山から縫い始めます。)裏側から背縫いの縫い目が見えます。

伏せ縫い

1.「伏せ縫い」という方法も、主にウールなどの背縫いで行います。中表(表側を合わせ、内側が表になるように)に合わせ、5mmほどずらし、下図のように1cmの深さで背縫いをします。縫い返しも行います。この状態で、身頃の標付けを行います。

2.標付け後、裾から裾くけ代分のところで、ずらした身頃(右身頃)の5mmの深さで切り込みを入れます。背縫い代を左身頃側に倒し、被(きせ)折りをします。

3.切り込みを入れた裾から、四ッ山まで、1cmの背縫い代を包み、身頃に「折りぐけ」でくけ付けます。裏側からは背縫いの縫い目が見えます。

4.表側には、くけ目が出ます。縫い代が動かない背縫いの方法です。

別背伏せ布

別の布を使って、背縫いをする方法です。主に絹単衣物に使われます。色は様々なものがあり、私が知る限りでは、絹物と化繊の背伏布があります。

幅は3㎝程で長さは1.7m程度の薄いテープ状の布です。

1.身頃の布を中表に合わせ、裾から裾くけ代分あがったとことから、四ッ山まで別背伏布を付けます。1cmの背縫い代が包めるように、背伏布の幅を考慮して背伏布の縫い代(私は6mm位です)を決め3枚一緒に縫い合わせます。背伏布は、殆ど縮みませんので、身頃の生地の性質を考えて付けます。

2.背縫いの縫い目に対して、殆ど被(きせ)をかけず背伏布を縫い目に沿って折り返します。

3.1cmの背縫い代を包み、縫い目に背伏布を本ぐけ(ほぼ縫いと同じ間隔)でくけ付けます。裏側から見ても、背縫いの縫い目が見えません。

別背伏布

※呉服店によって、上記2の状態で標付けをして、その後、伏せ縫いのように別背伏布を身頃にくけ付ける場合もあります。(この場合は、表側にくけ目が出ます)

共背伏せ布

上の別背伏布を、同じ生地で背縫いをする場合「共背伏」と言います。衿・衽の中央からテープ状に共背伏を取ったり、残布から何本かを継ぎ合わせて背伏布にします。縫い目にくけ付けたり、身頃にくけ付けたりします。厚みが増して、別背伏布等より背縫い代がゴロゴロします。

次回に続きます・・・・・・

浴衣の仕立て④

浴衣の仕立て④

先回は、肩当てまで説明させていただきました。

(先回のブログはこちらから)

◆浴衣の衿について

浴衣の衿は、掛け衿を本衿(地衿)に付けてから、衿付けをします。(掛け衿の束付けと言います)それに対してウールや絹物などは、本衿を先に付けてから、本衿に掛け衿を縫い付けますので(このことを掛け衿の別付けと言います)、掛け衿が汚れた場合、比較的スムーズに掛け衿を外すことができ、掛け衿のみの染み抜き等ができます。浴衣は先に掛け衿を付けるので、掛け衿のみを取り外すことができないので、本衿も外さないとできません。

愛知県という土地柄?なのか、地方によっても違うのかもしれませんが、私たちは、浴衣の掛け衿丈(背から掛け衿先までの距離)を約45cmにしています。背から剣先(衽の先端)までの距離が約35cmで、剣先から10cm位の所に掛け衿先となるようにします。繰り越しが大きい方は、剣先の距離が長くなりますので、掛け衿丈も長くします。男物は剣先が比較的高いのと繰り越しが付かないので、掛け衿丈も短めで43cm前後としています。

浴衣はお風呂上がりにはおり、夏場の夕方から着はじめる着物ですので、その他の着物と比較して軽装で、涼しさを演出するため?なのかもしれませんが、あまり重苦しくならないように掛け衿も短め。それに対して色無地、付下げや訪問着など浴衣以外の着物は、浴衣より長めです。30年前では浴衣以外の着物の掛け衿丈は47~49cm位でしたが、10年程前からそれよりも更に2cm位長くなってきています。着方や体型にもよりますが、掛け衿先が帯の中に隠れる程度の長さとなっていますね。

女物浴衣の衿はバチ衿が原則です。綿紅梅など高級浴衣を広衿にして着られる方もいますが、広衿とバチ衿の裁断方法が違いますので、急に変更されると困ってしまう場合がありますので注意が必要です。

バチ衿の衿幅

衿先 7.6cm

剣先 6.7cm

衿肩廻り 5.7cm

広衿の衿幅

11.4cm

◆浴衣の袖

振袖以外の式服等の着物の袖丸み(袂丸)は殆ど2cm丸みですが、女物浴衣の袖の丸みは、着る方の年齢、柄の大きさを考慮して、4cmとか、3cmとか、大きな丸みを付けています。

袖振り納めは、原則「耳ぐけ」で、袖付けより4cm位上までくけ付けます。(折りぐけの場合もあります)

◆浴衣の居敷当て

浴衣居敷当て

以前のブログ(浴衣の居敷当てについて)でも紹介しましたが、女物の場合、裾から45cm位の所に同じ生地で、上の図のように付けます。ちょうどお尻あたりに付けます。

また、絞りの浴衣などで、伸びてしまわないように、また、下着が透けないように、繰り越し摘まみの位置から裾まで晒木綿等で、下の写真の様に長く居敷当てを付ける場合もあります。

絞り浴衣の居敷当て

◆浴衣について・その他

以上が、浴衣の仕立て方についてでした。

縫製する方法で「手縫い」と「ミシン仕立て」があります。

「手縫い仕立て」は全て、縫いも、くけも手縫いで行い、「ミシン仕立て」は背縫い・脇縫い・衽付け・衿付け・袖付けのみミシンで縫い、後の部分の脇納め・衽納め・裾立褄のくけ・衿納めなどは、手縫いで行います。表側から見たら、手縫いなのかミシン縫いなのかは分かりません。

「洗濯などするのでミシンの方がしっかりするから」という理由から、真岡木綿の場合、ミシン仕立てが多いです。絞り染めや薄い生地の浴衣は、ミシン仕立てをすると生地の性質から縫い目が伸びてしまうので、ミシン縫いは適さず、手縫いが一般的です。

浴衣絞り染め

【浴衣の仕立て代について:税抜きです】

真岡木綿の浴衣

手縫い・・・15,000円程度

ミシン仕立て・・・12,000円程度

絞り・ちじみ・綿紅梅・綿絽等高級浴衣

手縫い・・・20,000円程度

広衿にする場合・・・3,000円追加

居敷当て付け(短い物)・・・1,000円追加(布代別)

居敷当て付け(腰から裾まで)・・・2,000円追加(布代別)

仕立て上がり品に居敷当てを付ける場合は5,000円~(布代別)

些細なことでもご相談承ります。お気軽にお電話ください。

次回は、単衣着物の仕立て方です。