単衣の仕立て⑤

先回は、単衣の縫い額縁まで説明させていただきました。

肩当てについて

今回は、肩当てと衿について説明させていただきます。

肩当ては、衿肩明きの大きく切った部分を補強する布で、以下のようなものがあります。

・ハート型

私達はこの形が一番多く付けています。浴衣やウールなどの透けない物に付けます。

一昔前の浴衣や透けない単衣物などに多く付けられている形です。これもハート型です。

・三日月

絽や紗など透ける物は、以下のような肩当てがあります。

一番スタンダードな「三日月型」です。

上の写真は長襦袢の三日月布です。

羽織やコートなど透ける生地に付ける長い三日月布です。

◆衿について

原則、女物浴衣はバチ衿ですが、着る方の要望に合わせ広衿にする場合もあります。広衿にする場合、衿裏は生地の素材に合わせて衿裏を用意します。浴衣は新モス、化繊は化繊の衿裏、麻と絹物は絹の衿裏というようにします。

女物着物の広衿の縫製方法は、本衿と裏衿で身頃を挟み、標を合わせて縫い合わせます。本衿を先に付けてから、本衿に掛衿を縫い付けますので(このことを掛衿の別付けと言います)、掛衿が汚れた場合、比較的スムーズに掛衿を外すことができ、掛衿のみの染み抜き等ができます。それに対し浴衣の衿は、掛衿を本衿(地衿)に付けてから、衿付けをします。(掛け衿の束付けと言います)

・その他の衿の種類

女物長襦袢:広衿・バチ衿・広バチ衿・田之助衿 男物・子供物(着物・長襦袢):棒衿

単衣の仕立て④

単衣の仕立て④

先回は単衣の着物の衽まで説明させていただきました。

浴衣は「切り額縁」でそれ以外の物は、今回は衽の先端の「縫い額縁」で縫製します。

縫い額縁

1.浴衣(綿物)以外の物(絹・ウール・麻等)には縫い額縁をします。立妻は0.5cm、裾は1cmの出来上がりの場合下図のように裏側に標を付けます。線①②③④は外表に折りを付けます。

2.線③上で裾の出来上がり幅1cm上の点をA、線④上で立妻の出来上がり幅0.5cm内側の点をC、線②と線③の交点をBとし、この3つの点を一直線に結びます。

3.点Aと点Cを中表に合わせ、線上を細かく半返しで縫い合わせます。

4・半返し縫いで縫ったところを縫い割にします。

5.表に返し、額縁先端を整え、くけ代を内側に折り込みます。

6.図のように衽布にくけ付けます。

表側には折りぐけのくけ目が出ます。

単衣の仕立て③

先回は単衣の着物の脇まで説明させていただきました。

今回は、衽(おくみ)付け等を説明させていただきます。

◆ウールなどの衽納め

ウールなどのミシン仕立てや、化繊などの安価なものは前幅の標と衽幅の標を縫い合わせ、縫い代は衽側へ倒します。(浴衣と同様です)

衽納めは前身頃の縫い代を1cm程度折り、衽布にくけ付けます。(浴衣の折りぐけと同様です)

◆正絹(絹織物)の式服などの衽付け縫い目隠し

正絹(絹織物)の式服などは、以下のように縫い目隠しで縫製します。

1. 前身頃の前幅標の4mm外を裏側へ折ります。

2.衽布を手前にし、衽の幅の標と前幅の標を縫い合わせます。

3.衽布側へ被折りをします。

4.下図のように衽布と前身頃を広げ、前身頃縫い代を衽側へ倒します。

5.前身頃縫い代に裾くけ幅分切り込みを入れ、前身頃縫い代を折り、衽布にくけ付けます。絽など布地が薄く透ける場合には、衽布縫い代と重なるように前身頃縫い代を深く折り、衽布にくけ付けます。

次に続きます。

単衣の仕立て②

単衣の仕立て②

先回は、単衣の背縫いまで説明させていただきました。

(先回のブログはこちらから)

今回は、脇縫いを説明させていただきます。

◆単衣着物の脇

脇縫いの方法として、脇縫いをして脇縫い代を前身頃側に倒し脇納めをする方法と、ウールなどで行うミシン縫いをした場合に「縫い割る」方法、絹単衣着物などに行う「縫い目隠し」の方法があります。

◆片側に倒す方法

手縫いの場合は、浴衣より細かく、素材に応じた針目で脇を縫います。次に前身頃に縫い代を倒し、裾から裾くけ代分上がったところで、折りぐけ代分切り込みを入れ、脇縫い代を折りぐけで身頃にくけ付けます。後身頃いっぱいに居敷当てが付く場合、この方法で居敷当ても一緒に、くけ付ける場合がありますが、薄物や絽小紋など裏側の色が透けてしまう場合は、くけ代や居敷当てを織り込む位置など、工夫をします。(ミシン仕立てでもこの方法で行うことがあります)

折りぐけ

◆ウール着物などミシン縫いの場合で縫い割りにする方法

ウール着物などのミシン仕立てで行う方法です。脇縫いをした後、脇縫い代を下図のように脇縫い縫い目で縫い割り(縫い代を広げて割る)にします。

鏝(こて)などで、しっかり縫い目を押さえます。

裾から裾くけ代分上がったところで、折りぐけ代分切り込みを入れ、脇縫い代を折りぐけで身頃にくけ付けます。

◆絹単衣着物などに行う「縫い目隠し」

始めに通常通り脇縫いをし、その縫い目から約4mm程度上を空縫いします。

脇縫いで被折りをし、前身頃へ縫い代を倒します。次に空縫いに沿って脇縫い代を開きます。

裏側から脇縫いと空縫いの間に綴じを入れます。

裾から裾くけ代上がったところで、脇納めのくけ代分、切り込みを入れます。絽など表側から見て、透ける物などは脇納めのくけ代分を深くする場合があります。

居敷当てが付く場合は、「片側に倒す方法」で脇納めをします。地方によって、呉服店によっても「縫い目隠し」をしたり、しなかったりします。

縫い目隠しにまつわる師匠との雑談で・・・・

この縫い目隠しの方法(脇、衽、など縫い目隠しにします)は、中部地方あたりで行われ始めたそうで、昔、東京から来られた和裁の先生が、この縫い目隠しの方法を見て、「縫い目が見えないなんて、粗く縫って飛ばす方法だ!縫い目のあら隠しだ。東京の職人は、縫い目を見せて仕立てをしている。」と言われたことがあるそうです。

この言葉を胸に、私達はきちんと単衣の縫い目で縫っています。

次回に続く・・・・・

単衣の仕立て①

単衣の仕立て①

先回は、浴衣の仕立て方について説明させていただきました。

今回からは、単衣の仕立て方について説明いたします。

浴衣以外の単衣物の生地としては、絹物は夏大島や夏塩沢など全国津々浦々産地がありますが、麻は○○上布と名前が付く越後上布が有名で、他には小千谷縮などが有名ですね。木綿生地では久留米絣やしじら織りなど。沖縄の芭蕉布もありますが、その他、化繊やウールなども単衣着物の反物として使われています。

余談ですが・・・・・

そう言えば、現在ではもう見ることが殆どなくなってしまったウール・・・・30年以上前、私の修業時代、晩秋から年末はウールアンサンブル(着物と羽織)の仕立物が、ドーンと来ました。修業1年目ではウールの仕立てが多く、ウールの毛が部屋中に漂う中、仕事をしていました。また、モス(毛斯と書きます。ウール製)の長襦袢も、男物、女物問わずありました。お正月には皆さん、ウールのアンサンブルを着て、初詣に行ったり、コタツでミカンを食べながらくつろいでいましたっけ。

今では、反物を織る業者さんも殆どなくなってしまい、私たちの所へ来る仕立物は、皆無となってしまいました。

本物のウール織物は染めた糸で織ってあるので、表裏が区別付きません。中にはプリント(片面染めのもの)の物もありました。女物は主に連続した椿や井桁、格子柄などの柄があしらわれていて、可愛らしい子供用の物もありました。アンサンブルは羽織と着物の柄の関係など考慮し、裁断時には何度も確認をして鋏を入れます。

絹などの単衣物の仕立て方は、浴衣より手間暇掛けて仕立てます。縮みますのでアイロンを掛けて地直しをし、横糸を真っ直ぐにします。裁断にも気を遣います。着物は後で縫い直せるように内揚げ(身頃の腰あたりに摘まむ縫い代)と衽や衿などの各パーツの縫い代も考慮して裁断します。

浴衣はパリッとしていて糊が効いていますので、サッと折りが付けられますが、縮緬など絹物は柔らかくて薄く、手縫いの場合は、浴衣より細かい針目で縫い、折りが付きにくいので、時間を掛けてしっかり押さえながらの作業となります。単衣着物の仕立て方は、伸び縮みもしますので、浴衣よりワンランク上の仕立て方となり時間が掛かります。

◆単衣着物の背縫い

単衣着物の背縫いは、浴衣とは違い、袋縫い・伏せ縫い・別背伏せ布・共背伏せ布などの方法があります。

袋縫い

1.ウール生地などの背縫いに「袋縫い」という方法で背縫いを行います。始めに身頃の生地を外表(外側に表側が来るように)に合わせ、下図のように右身頃を4mmずらし、2mmの所を空縫いします。(ずらさずに縫う方法もあります)四ッ山から裾くけ代分上がったところまで、縫います。

2.裾で、裾くけ代分(2cm程度)のところで、下図のように空縫いより少々深く切り込みを入れます。

3.左身頃側に、空縫い縫い目より極浅い被(きせ)折りをします。

4.中表にして、3で折った被(きせ)山から2mm程度、右身頃を出して折りを付けます。背縫い代は左身頃側に倒れるため、右身頃を2mm程度出します。

5.下図のように、裾から1cmの深さで背縫いをします。その後、縫い返しもします。(背縫い代は左身頃側に倒れるため、裾を右側にして見える方を手前にして縫うためです。サウスポーの方は、逆で、四ッ山から縫い始めます。)裏側から背縫いの縫い目が見えます。

伏せ縫い

1.「伏せ縫い」という方法も、主にウールなどの背縫いで行います。中表(表側を合わせ、内側が表になるように)に合わせ、5mmほどずらし、下図のように1cmの深さで背縫いをします。縫い返しも行います。この状態で、身頃の標付けを行います。

2.標付け後、裾から裾くけ代分のところで、ずらした身頃(右身頃)の5mmの深さで切り込みを入れます。背縫い代を左身頃側に倒し、被(きせ)折りをします。

3.切り込みを入れた裾から、四ッ山まで、1cmの背縫い代を包み、身頃に「折りぐけ」でくけ付けます。裏側からは背縫いの縫い目が見えます。

4.表側には、くけ目が出ます。縫い代が動かない背縫いの方法です。

別背伏せ布

別の布を使って、背縫いをする方法です。主に絹単衣物に使われます。色は様々なものがあり、私が知る限りでは、絹物と化繊の背伏布があります。

幅は3㎝程で長さは1.7m程度の薄いテープ状の布です。

1.身頃の布を中表に合わせ、裾から裾くけ代分あがったとことから、四ッ山まで別背伏布を付けます。1cmの背縫い代が包めるように、背伏布の幅を考慮して背伏布の縫い代(私は6mm位です)を決め3枚一緒に縫い合わせます。背伏布は、殆ど縮みませんので、身頃の生地の性質を考えて付けます。

2.背縫いの縫い目に対して、殆ど被(きせ)をかけず背伏布を縫い目に沿って折り返します。

3.1cmの背縫い代を包み、縫い目に背伏布を本ぐけ(ほぼ縫いと同じ間隔)でくけ付けます。裏側から見ても、背縫いの縫い目が見えません。

別背伏布

※呉服店によって、上記2の状態で標付けをして、その後、伏せ縫いのように別背伏布を身頃にくけ付ける場合もあります。(この場合は、表側にくけ目が出ます)

共背伏せ布

上の別背伏布を、同じ生地で背縫いをする場合「共背伏」と言います。衿・衽の中央からテープ状に共背伏を取ったり、残布から何本かを継ぎ合わせて背伏布にします。縫い目にくけ付けたり、身頃にくけ付けたりします。厚みが増して、別背伏布等より背縫い代がゴロゴロします。

次回に続きます・・・・・・

浴衣の仕立て④

浴衣の仕立て④

先回は、肩当てまで説明させていただきました。

(先回のブログはこちらから)

◆浴衣の衿について

浴衣の衿は、掛け衿を本衿(地衿)に付けてから、衿付けをします。(掛け衿の束付けと言います)それに対してウールや絹物などは、本衿を先に付けてから、本衿に掛け衿を縫い付けますので(このことを掛け衿の別付けと言います)、掛け衿が汚れた場合、比較的スムーズに掛け衿を外すことができ、掛け衿のみの染み抜き等ができます。浴衣は先に掛け衿を付けるので、掛け衿のみを取り外すことができないので、本衿も外さないとできません。

愛知県という土地柄?なのか、地方によっても違うのかもしれませんが、私たちは、浴衣の掛け衿丈(背から掛け衿先までの距離)を約45cmにしています。背から剣先(衽の先端)までの距離が約35cmで、剣先から10cm位の所に掛け衿先となるようにします。繰り越しが大きい方は、剣先の距離が長くなりますので、掛け衿丈も長くします。男物は剣先が比較的高いのと繰り越しが付かないので、掛け衿丈も短めで43cm前後としています。

浴衣はお風呂上がりにはおり、夏場の夕方から着はじめる着物ですので、その他の着物と比較して軽装で、涼しさを演出するため?なのかもしれませんが、あまり重苦しくならないように掛け衿も短め。それに対して色無地、付下げや訪問着など浴衣以外の着物は、浴衣より長めです。30年前では浴衣以外の着物の掛け衿丈は47~49cm位でしたが、10年程前からそれよりも更に2cm位長くなってきています。着方や体型にもよりますが、掛け衿先が帯の中に隠れる程度の長さとなっていますね。

女物浴衣の衿はバチ衿が原則です。綿紅梅など高級浴衣を広衿にして着られる方もいますが、広衿とバチ衿の裁断方法が違いますので、急に変更されると困ってしまう場合がありますので注意が必要です。

バチ衿の衿幅

衿先 7.6cm

剣先 6.7cm

衿肩廻り 5.7cm

広衿の衿幅

11.4cm

◆浴衣の袖

振袖以外の式服等の着物の袖丸み(袂丸)は殆ど2cm丸みですが、女物浴衣の袖の丸みは、着る方の年齢、柄の大きさを考慮して、4cmとか、3cmとか、大きな丸みを付けています。

袖振り納めは、原則「耳ぐけ」で、袖付けより4cm位上までくけ付けます。(折りぐけの場合もあります)

◆浴衣の居敷当て

浴衣居敷当て

以前のブログ(浴衣の居敷当てについて)でも紹介しましたが、女物の場合、裾から45cm位の所に同じ生地で、上の図のように付けます。ちょうどお尻あたりに付けます。

また、絞りの浴衣などで、伸びてしまわないように、また、下着が透けないように、繰り越し摘まみの位置から裾まで晒木綿等で、下の写真の様に長く居敷当てを付ける場合もあります。

絞り浴衣の居敷当て

◆浴衣について・その他

以上が、浴衣の仕立て方についてでした。

縫製する方法で「手縫い」と「ミシン仕立て」があります。

「手縫い仕立て」は全て、縫いも、くけも手縫いで行い、「ミシン仕立て」は背縫い・脇縫い・衽付け・衿付け・袖付けのみミシンで縫い、後の部分の脇納め・衽納め・裾立褄のくけ・衿納めなどは、手縫いで行います。表側から見たら、手縫いなのかミシン縫いなのかは分かりません。

「洗濯などするのでミシンの方がしっかりするから」という理由から、真岡木綿の場合、ミシン仕立てが多いです。絞り染めや薄い生地の浴衣は、ミシン仕立てをすると生地の性質から縫い目が伸びてしまうので、ミシン縫いは適さず、手縫いが一般的です。

浴衣絞り染め

【浴衣の仕立て代について:税抜きです】

真岡木綿の浴衣

手縫い・・・15,000円程度

ミシン仕立て・・・12,000円程度

絞り・ちじみ・綿紅梅・綿絽等高級浴衣

手縫い・・・20,000円程度

広衿にする場合・・・3,000円追加

居敷当て付け(短い物)・・・1,000円追加(布代別)

居敷当て付け(腰から裾まで)・・・2,000円追加(布代別)

仕立て上がり品に居敷当てを付ける場合は5,000円~(布代別)

些細なことでもご相談承ります。お気軽にお電話ください。

次回は、単衣着物の仕立て方です。

浴衣の仕立て②

浴衣の仕立て②

先回は、浴衣の反物まで説明させていただきました。

【先回の補足説明です】

女物を中心に説明させていただきましたが、男物浴衣の反物の長さも女物浴衣の反物の長さも同じくらいです。男物は、お端折りせず着ますので、その分、短い身丈となりますが、後々女物浴衣にも仕立て換え出来るように、また、お端折りのない男物ですので縮んだら直せるように、男物を仕立てる際には、最大15cm位を目安に身頃に内揚げを入れ、その他の部分にも仕立て直しが出来るように縫い代を入れて仕立てています。(居敷当てと肩当てを取って、残りを内揚げに入れていますので、身長がとても大きい方の浴衣は、内揚げが少なくなります)

今回は、針目から説明いたします。

◆浴衣の針目

浴衣の真岡生地は、糊が効いていて、パリッとした生地です。絹物などと比べて厚手なので手縫いの場合、縫い目も絹物などと比べて少々粗い縫い目となりなります。真岡生地と比べ、絞りや綿紅梅、綿絽など高級浴衣生地は、薄地なので細かい針目にしています。(縫い目に規定について『和服裁縫「針目・縫い目」の話を』ご覧下さい。

また、縫い代が幾重にも重なっている部分や、袖付けや衿先、脇止まり(身八ッ口)、裾など力が加わる箇所は半返し縫いや縫い返しをしています。

◆浴衣の地直し

ウール、麻、絹物などの仕立ては、地の目(横糸)のねじれ等を修正する地直し(アイロン掛け)をしますが、真岡生地の浴衣はしません。よっぽどひどいものは、霧吹きを掛けて手で引っ張り整える程度です。その他の浴衣生地で、絞りや綿紅梅、綿絽など高級浴衣生地がありますが、絞り以外の綿紅梅や綿絽等の太い糸で格子状に織られている物や、横糸が目立つ生地については、蒸気アイロン等で出来るだけ横糸のねじれを整え、裾の出来上がりが横糸真っ直ぐになるようにしています。(出来ない場合もあります)

◆浴衣の背縫い

浴衣の背縫いは、2度縫いという方法で縫います。

背縫い(本縫い)は、深さ1~1.2cm程度で縫い合わせ、補強の意味で裾から75~80cmほど縫い返しをします。あと、背縫い代が広がらないように、耳端より数ミリの所を1度縫います。

◆浴衣の脇納め・衽納め

脇縫いと衽付けは、裾から約10cm、裾の補強のために縫い返しをしています。

また、「納め」という言葉は、縫い代などを始末することを言います。脇納め・衽納め・衿納め・振り納めというように言葉を使います。

浴衣の脇納めは、原則、「耳ぐけ」という方法で脇縫い代を身頃にくけ付けます。縫い代側(裏側)の耳端にに2つ、その間に表側に1つ小さな針目を出します。間隔は、2.5cm程度で、縫い代の幅が細い箇所は、間隔を小さくします。

浴衣の耳ぐけ

最近の若い女性は裄が長いため、後幅と肩幅の差が大きくなり、縫い代が身頃について行かない場合があります。身八ッ口のあたりの縫い代に、部分的に霧吹きを吹き、鏝で耳端を伸ばしますが、耳ぐけの脇納めでは出来ない場合、「折りくげ」にします。

折りぐけ

浴衣脇の出来上がり

浴衣脇の出来上がり

衽納めにも、「折りぐけ」で納めます。

次回に続きます・・・・・・

浴衣の仕立て①

浴衣の仕立て①

5月も後半。浴衣や単衣の仕立て依頼が来始めています。

浴衣は、大型スーパーなどで○点セット○○○○円とか、既製品のものが多く出回っています。洋裁サイズの生地でミシン縫いっぱなしの仕立てのようです。既製品の浴衣を「サイズが合わないから、直してください」と、持ってこられるお客さんも、ちらほら来られますが、直し代を含めると、気に入った柄の反物から仕立てた方が、お値打ちになる場合もございます。

今回は、「浴衣の仕立て」と「単衣の仕立て」の違いについて説明をします。浴衣といえば、綿の生地で当然、単衣仕立てです。他の素材ではウールや化繊、麻、絹物などの生地でも、単衣仕立てがあります。私たちは、同じ単衣仕立てでも、違った仕立て方をしています。

◆浴衣の仕立て

・岡木綿・真岡(まおか・もおか)木綿の浴衣生地の仕立て

私たちは、普通の浴衣生地を真岡(まおか)と呼んでいます。どんな生地かというと、温泉旅館などで着る浴衣生地を想像してください。

私は知らなかったんですが、仕事や業界の慣れって恐ろしいもので、調べてみると真岡は「もおか」という読み方が殆どでした(-_-;)

私が和裁の修行に入った30年以上前では、浴衣の生地は真岡が多く、藍染めが主流。当然色も紺や濃紺、女性ものは赤い花柄などをあしらったもの、男物は白と紺の2色が殆どでした。

使う糸も白・黒・紺程度の色で太口綿の糸を使って縫い、くけは細口糸と決まっていました。修業に入りたての頃で、今に比べると、糊がとても効いていて、堅く、縫うのも一苦労だったような思い出があります。今、思えばその苦労が運針の練習になったと思いますが、縫った後は、指ぬきも指先も、掛け張りのゴムも真っ青!でした。

DARUMA HPより

今では、藍染めのものは少なくなり、様々な色のものや、織り方が変わったものが多く出回っています。化学染料のため、藍染めのものでやっていた「色止め」をする事はなくなってきました。太口糸の色も、そんなに多く色の種類がないので、現在、私たちは化繊の糸を使って縫っています。

真岡生地は糊付けしてあるので折りも付きやすく、仕立て上がりもパリッとしていてますが、シワが付きやすいというデメリットもあります。アイロン掛けが出来るご家庭ならば、洗濯も可能ですが、糊が取れて柔らかくなり、縮みます。

この真岡生地の女物浴衣は、着られる方の身長にもよりますが、反物の長さが短く、繰り越し摘まみは取ることが出来ても、身頃の内揚げ(胴あたりに摘まんで縫ってある縫い代)を入れることができません。衽や衿などの縫い代もあまりないので、身丈を伸ばすといった仕立て直しは出来かねます。

次回に続きます(←クリックするとジャンプします)

最近多くなってきている「仕立て直し」

最近多くなってきている「仕立て直し」

早いもので、平成29年がスタートしてもう2月半ばになりました。先日、豊橋市では鬼祭りが行われ、この鬼祭りが終わると春になると言われています。しかし、立春も過ぎたと言うものの、梅の花が咲いているところもあれば、雪が降っている場所もあり、まだまだ春は遠いのかな?とも思ったりしています。

さて、最近、裄直しなどの寸法直し、長襦袢の半衿掛けなどの仕事が多いですが、仕立て直しも多くなってきています。

先日では、仕立て上がった振袖・長襦袢・袋帯を持ってお母様がお越しくださいました。お母様の姉妹が着て、今度は娘さんが着ることとなり、身長も、体型も似ているのでそのままでも着られそうなのですが、裏地などの汚れが目立つのと綺麗にして着せてあげたいとのことで、洗い張り(解いて生地を洗うこと)をして、裏地取り替え・仕立て直しをしました。

以上の内容の振袖仕立て代(振袖仕立て代・洗い張り代・裏地代・縫い跡の修正代等を含め)は、合計で10万円程度です。(※染み抜きや修正箇所等によって仕立て代は変わります)

私が七五三と成人式に着た着物は、息子2人とも着ています。息子達の着た姿を見ると、嬉しくもあり、頼もしくもあり、私が二十歳の頃のこれからの大きな希望と不安が入り交じった気持ちも思い出し、息子達も同じ気持ちかな・・・なんていろんな事を思ったりしました。

日本にはいろんな通過儀礼があって、和服は深く関わっています。親が着たものを、その子供が着る。親の気持ちが衣服に宿って、「がんばれ~」とか「立派な成人になってね」とか、子供が着ることによって伝わるような気がしますね。20年以上の前の衣類が、次の世代でも着ることができ、リメイク・リフォーム・リサイクルできる和服は、世界でも珍しいのではないのかな??

以前、テレビで成人式の様子をニュースで放送していました。ある女性の新成人が無地の振袖を着てインタビューに「お母さんが着た振袖です。無地の振袖の方が他の人と違って目立つから、着ることにしました!」と答えていたことが印象的でした。成人式全体の様子も映像が流れましたが、仕立て屋の仕事をしているせいか、男性の羽織袴もなんか・・・・・殆どが柄が同じに見えてしまいます。

以前のブログにも載せましたが、七五三でも同じように感じてしまいます。(七五三の以前のブログはこちら)成人式も七五三の延長のような・・・・・一つ一つの着物を見ていれば、蛍光色っぽい花が全体に散りばめられていて、可愛いく豪華に見えますが、同じ雰囲気の柄が集まると、見栄えがしない気がします。昔の方が日本の色を使い古典調柄をあしらったものが多く、それぞれが主張していたようにも思えます。

また、別の日には、喪服と長襦袢を持って来られた方がいました。嫁いだ時に持ってきた喪服ですが、今まで一度も着ていなく、躾も付いている状態でした。近々着られる予定があるので、はおってみたら幅が狭くて・・・・と相談に来られました。

見てみてみると・・・・・

喪服ですので、一度も着ていなくても身幅を広げる場合、縫った跡(標)や折り跡が出てしまいますので、その跡を目立たなくする修正が必要

裏地は時間が経っているため、黄ばみが出ているので、取り替えた方が良いのでは

体型が変わったために、身幅(脇)のみの寸法直しでは着やすくならない。衽幅や抱き幅などの寸法直しが必要かと思われる。

身丈も短く、また、袖丈が長い。

縫い跡修正と着やすい幅直し、袖丈直し、裏地取り替え等という方法もあるが、殆ど解いてしまうため、仕立て直しとの価格の差はあまり無い

仕立て直しの方が、一から仕立て直すので部分寸法直しより、きっちり仕立てることができる。

と、説明させていただき、縫い跡修正、裏地取り替え、仕立て直しをさせていただきました。縫い跡の修正は、染み抜き屋さんにお願いしていますが、昔の喪服の生地は染めも織り糸もしっかりとしていて、綺麗に修正できました。

以上の袷喪服の仕立て代(仕立て代・裏地代・着用時に見える箇所の上前の部分と裾の修正等を含め)は、6万円程度でした。(※染み抜きや修正箇所等によって仕立て代は変わります)

最近、喪服の仕立ては海外で行っており、私たちの所へは殆ど来ません。今、作られている喪服の生地は、全てではないですが以前よりだいぶ薄くなったものが多くなっているように思います。そのような喪服の生地を仕立てる時に注意しなければならないのは、一度縫ったら、伸びてしまい、染料がはげてうっすらと白くなってしまうので、縫い直しができません。そして、この様な生地は幅を広げたり、丈を直すという仕立て直しは無理かと思われます。

また、和裁組合の研修会で、紋屋さんの講演があったのですが、現在の喪服の生地は、「カラスの濡れ羽色」のように黒色をよく見せるために、ワックスを掛けるそうです。なので、紋入れの際には染料が乗らず、一度ワックスを取ってから、紋を入れるそうです。

今でも、しっかりと織り糸から吟味して、古くから伝わる技法で柄を染め、作り直しを考えた反物もありますが、反面、デザインのみに目が行ってしまいがちな、反物(きのも)もありますね~

袋帯の仕立て方(垂先・手先)

袋帯の仕立て方(垂先・手先)

袋帯の垂先・手先の仕立て方には、いろいろな方法があります。

以前に説明した織り止め(垂先・手先に太く織ってある線)の出し方については「袋帯の地方色(帯について その2)」をご覧ください。(クリックするとジャンプします)

・垂先・手先を縫う方法

裏側を数ミリ控えて、縫う方法です。中表にひっくり返した後、垂先の出来上がりで縫い、帯芯を入れて綴じ、表にひっくり返して手先を本ぐけで縫う方法です。表地と裏地がピタッと、くっついている仕立て方です。

◆表側

◆裏側

帯芯を入れた後、手先・垂先を出来上がりに折って、スクラップかがり(束かがり)にする方法もあります。

・垂先・手先の中で縫う方法

垂先は約3cm~4cm、手先は約2cmの深さで表裏を縫い合わせる方法です。表地と裏地がある程度の深さで、開きます。

呉服店によってまちまちですが、某○○加工や呉服店の名前の入ったネームタグを付ける場合、この様な仕立て方をしてタグは垂先の中央に付けます。

深く縫い合わせる方法は、垂先のみの場合もあります。また、縫い合わせるのではなく千鳥でかがる場合もあります。

直接持ってこられる方のご要望によって1・2の仕立て方を提案させていただいていますが、殆どの方が「どちらでもいいです」といわれます。中には2の仕立て方は、先が広がってしまうからと言われる方もみえます。地方によっても仕立て方は、様々なようです。