袖の種類②

・留袖(式服の袖)
女性が着る留袖というと現在では裾に柄をあしらった着物というイメージがありますが、元々、袖の長さを表したものでした。結婚式で花嫁の振袖をナタで切って短くする地域もあったようですが、袖の長さを切り留める(切る)ことから、短い袖の着物の事を留袖と呼んだそうです。
現在では、他の訪問着や付下など式服の基準となる袖丈で、長さは身長の1/3を目安とし、式服の丸みは 2cm(5分)が多いです。

・女物の小紋などの袖について
呉服店の仕事をしていて、かわいい柄や大きな柄なのに、着物の袖丈を一律1尺3寸(49.2cm)としているお店が多いように感じます。長襦袢を着る着物、留袖とか訪問着などとの袖丈を揃えることで、長襦袢が共有できるメリットがあります。
しかし小紋などは、お洒落着なので袖丈はもうちょっと自由であってもいいように思えます。例えば、若い方は少々長めにした方が、小粋な着物になったりもします。大きな柄のものも袖丈を長くすることで雰囲気が変わったりします。丸みの大きさなども変化することで式服とは違った自由な表現が出来るような気がします。

参考資料

  • 「知っておきたい和裁の知識」日本和裁士会編著
  • 「日本和裁新聞」日本和裁士会発刊
  • 「和裁教科書全巻」日本和裁士会発行
  • 「わさい」愛知県和裁教授連盟発行
  • 「新和裁全書」金園社発行

袖の種類①

和服の袖の形は、年齢や職業、フォーマルなものや仕事着など、和服の使い方によって袖の形は変わります。例えば女性用の着物の袖の長さは年齢を表したりします。若い方は振袖を代表する様に長く、老いた方は短くします。筒袖や船底袖などは仕事着として使われる和服の袖となっています。

袖の名称は以下のようです。

丸み(袂丸)の大きさは、半径によって表します。

・振袖
振袖は袖の長さによって呼び方を変えています。一番長いものを本振袖(大振り袖)、順次長い順に中振袖、小振袖と呼んでいます。

・本振袖(大振袖)
一番袖丈が長いのは本振袖(大振袖)で、袖丈が約115cm(3尺)以上のもを指します。「袖は出来るだけ長く」という場合、私たちは身長×0.7を目安に袖丈を算出しています。例えば身長150cmの方が本振袖の115cm以上希望する場合、(150×0.7=105となり)袖を引きずってしまう可能性があります。貸衣装やリサイクル品などの振袖を着られる場合には注意が必要です。


しかし、江戸時代の振袖で袖丈4尺(152cm)とか5尺(190cm)のものが残っているそうですが、当時の日本人は今日ほど身長が高くなかった頃ですので、当然引きずって歩いていたと思われます。一般庶民はともかく、宮中では着物の裾を引きずって歩いていたわけですから、袖を引きずって歩くのがファッションの最先端だったかもしれません。でも、生活するのにはとても不便だったと思います。

・中振袖・小振袖
中振袖の袖丈は90cm~100cm位のもので、小振袖は身長の1/2を目安にして80cm位のものです。

本振袖~小振袖まで様々な袖丈の長さがありますが、この袖丈に対して丸み(袂丸)の大きさも変化させます。現在、一般に本振袖では11.4cm(3寸)で、小振袖では7.6cm(2寸)程度の丸みを付けています。袖丈も丸みも決まりはありませんが、使い勝手や好みであったり、柄の大きさを加味して変化させるのがよいでしょう。

参考資料

  • 「知っておきたい和裁の知識」日本和裁士会編著
  • 「日本和裁新聞」日本和裁士会発刊
  • 「和裁教科書全巻」日本和裁士会発行
  • 「わさい」愛知県和裁教授連盟発行
  • 「新和裁全書」金園社発行

掛衿の位置について

着物の本衿(地衿)の上にもう一枚布を縫い付けてあるのが掛け衿で、その役目は布の補強とか、汚れたら掛衿を取り外し、洗えるという布です。昔はクリーニングも無かった時代で、洗うと言えば縫い目を解き、「洗い張り」だったので、よく汚れる首回りの掛け衿だけを、簡単に取り外せる工夫をしたのでしょうね。長襦袢の半衿も元来、同じ役目でしたが、柄物や刺繍などをあしらった物が出回り、お洒落なものが多くなりました。

今回は、その掛け衿の長さなどについてお話しします。

上図のように現在では、剣先(衽の一番先端)より下に掛け衿先があります。浴衣の場合は、剣先から10cm程度でしょうか。フォーマルな着物では13cm程度です。この着物を着てみると、下のイラストのような状態になります。
十数年前に一部の呉服店より掛け衿をもう少し長くして欲しいとの要望があり2cmほど長くしました。その結果、身長の低い方は特に、それを着てみると下記のような着姿になります。
掛け衿先が、帯の中に隠れてしまう場合があります。もちろん、着る方の身長や帯を締める位置などにもよりますが、掛け衿先が見えていません。最近のテレビコマーシャルの着物姿でたまに見かけます。

昔、一度見たことがある掛け衿が下のイラストです。

掛け衿先が剣先の上にあります。最近の着物では全く見ない掛け衿です。このパターンは、お祭りの衣装にも見られ、衿布の補強や汚れたら外して洗うといった必要最小限の掛け衿の役目を果たしている物ですね。

今では、掛け衿の縫い目を外して掛け衿だけを洗ったりする方は全くいません。殆どの方は、着物を丸々「生き洗い」にしたり、お化粧などで汚れたら部分的にシミ抜きができます。現代での掛け衿の役目はあまり無いような気がします。

以前の掛け衿のブログ

掛け衿と半衿の話

掛け衿の話(経験談)

単衣の仕立て⑤

先回は、単衣の縫い額縁まで説明させていただきました。(先回のブログはこちら)

今回は、肩当てと衿について説明させていただきます。

肩当てについて

肩当ては、衿肩明きの大きく切った部分を補強する布で、以下のようなものがあります。

・ハート型

私達はこの形が一番多く付けています。浴衣やウールなどの透けない物に付けます。

一昔前の浴衣や透けない単衣物などに多く付けられている形です。これもハート型です。

・三日月

絽や紗など透ける物は、以下のような肩当てがあります。

一番スタンダードな「三日月型」です。

上の写真は長襦袢の三日月布です。

羽織やコートなど透ける生地に付ける長い三日月布です。

衿について

原則、女物浴衣はバチ衿ですが、着る方の要望に合わせ広衿にする場合もあります。広衿にする場合、衿裏は生地の素材に合わせて衿裏を用意します。浴衣は新モス、化繊は化繊の衿裏、麻と絹物は絹の衿裏というようにします。

一般的な着物の衿の名称

女物着物:広衿・バチ衿

女物長襦袢:広衿・バチ衿・広バチ衿・田之助衿

男物・子供物(着物・長襦袢):棒衿

女物着物の広衿の縫製方法は、本衿と裏衿で身頃を挟み、標を合わせて縫い合わせます。本衿を先に付けてから、本衿に掛衿を縫い付けますので(このことを掛衿の別付けと言います)、掛衿が汚れた場合、比較的スムーズに掛衿を外すことができ、掛衿のみの染み抜き等ができます。それに対し浴衣の衿は、掛衿を本衿(地衿)に付けてから、衿付けをします。(掛け衿の束付けと言います)

掛衿についての以前のブログかこちらから

・体験談

・半衿と掛け衿の話し