浴衣の仕立て③

浴衣の仕立て③

先回は、衽納めまで紹介させていただきました。

今回は、裾、立褄からです。

地方によって、くけ幅は変わりますが、浴衣は立褄は約6mm、裾は約1cm上がりの三ッ折りぐけにします。立褄と裾の交点(先端)が褄先で、単衣物は額縁(額縁の角に似ていることから)と言います。

◆浴衣は折り額縁(切り額縁)

浴衣は、「折り額縁(切り額縁)」という方法で作ります。それに対して、ウールや絹物、麻、高級綿地などは「縫い額縁」という方法で縫います。「縫い額縁」については、後日、紹介いたします。

立褄・裾の三ッ折りぐけの折りを付けます。

立褄6mm上がりの場合は、6mm弱の折を付け、そこから6mmの折を付けます。同様に裾も、1cm弱と1cmの折を付けます。内側に折り込むくけ代は、少々折り幅を狭くしておかないと、うまく内側に入らないためです。

裾より2cm弱あがった所で、深さ6mm弱の切り込みを入れます。

立褄側の6mm弱のくけ代を折り・・・・・

6mm幅の部分をさらに折ります。

下の写真の様に対角線を折ります。

裾の1cm弱のくけ代を折ります。

更に、1cmくけ代を折り、身頃にくけ付けます。

脇納め、衽納め、そして裾・立褄の折りぐけは、ミシン糸を使って、くけ付けます。表側に小さな針目を出してくけ付けますが、写真のような2色で染めてある物は、どちらかの色糸でくけ付けますが、くけ目が目立たないようにするのが、プロの仕事です。自画自賛ですが・・(-_-;)

◆浴衣の肩当て

浴衣の肩当ては、原則、共の生地でハート型の物を衿肩廻り(首のあたり)に付けます。布の裁ち切りから4mm程度の所をまわるく折り、共色の糸で綴じ、身頃にくけ付けます。出来上がりの幅は約5cmで、深く切り込みが入っている衿肩明き(衿が付いている背のあたり)の補強の意味があります。反物の長さや身丈などにより、共布の肩当てが取れない場合は、白の新モス(綿の生地)を使用します。

その他の肩当てとしては、肩から袖付け・身八ッ口あたりまで、晒木綿で布幅を使って、大きく付ける肩当てを付ける場合もあります。(お客様のご要望によります)

次に続きます・・・・・・

浴衣の仕立て②

浴衣の仕立て②

先回は、浴衣の反物まで説明させていただきました。

【先回の補足説明です】

女物を中心に説明させていただきましたが、男物浴衣の反物の長さも女物浴衣の反物の長さも同じくらいです。男物は、お端折りせず着ますので、その分、短い身丈となりますが、後々女物浴衣にも仕立て換え出来るように、また、お端折りのない男物ですので縮んだら直せるように、男物を仕立てる際には、最大15cm位を目安に身頃に内揚げを入れ、その他の部分にも仕立て直しが出来るように縫い代を入れて仕立てています。(居敷当てと肩当てを取って、残りを内揚げに入れていますので、身長がとても大きい方の浴衣は、内揚げが少なくなります)

今回は、針目から説明いたします。

◆浴衣の針目

浴衣の真岡生地は、糊が効いていて、パリッとした生地です。絹物などと比べて厚手なので手縫いの場合、縫い目も絹物などと比べて少々粗い縫い目となりなります。真岡生地と比べ、絞りや綿紅梅、綿絽など高級浴衣生地は、薄地なので細かい針目にしています。(縫い目に規定について『和服裁縫「針目・縫い目」の話を』ご覧下さい。

また、縫い代が幾重にも重なっている部分や、袖付けや衿先、脇止まり(身八ッ口)、裾など力が加わる箇所は半返し縫いや縫い返しをしています。

◆浴衣の地直し

ウール、麻、絹物などの仕立ては、地の目(横糸)のねじれ等を修正する地直し(アイロン掛け)をしますが、真岡生地の浴衣はしません。よっぽどひどいものは、霧吹きを掛けて手で引っ張り整える程度です。その他の浴衣生地で、絞りや綿紅梅、綿絽など高級浴衣生地がありますが、絞り以外の綿紅梅や綿絽等の太い糸で格子状に織られている物や、横糸が目立つ生地については、蒸気アイロン等で出来るだけ横糸のねじれを整え、裾の出来上がりが横糸真っ直ぐになるようにしています。(出来ない場合もあります)

◆浴衣の背縫い

浴衣の背縫いは、2度縫いという方法で縫います。

背縫い(本縫い)は、深さ1~1.2cm程度で縫い合わせ、補強の意味で裾から75~80cmほど縫い返しをします。あと、背縫い代が広がらないように、耳端より数ミリの所を1度縫います。

◆浴衣の脇納め・衽納め

脇縫いと衽付けは、裾から約10cm、裾の補強のために縫い返しをしています。

また、「納め」という言葉は、縫い代などを始末することを言います。脇納め・衽納め・衿納め・振り納めというように言葉を使います。

浴衣の脇納めは、原則、「耳ぐけ」という方法で脇縫い代を身頃にくけ付けます。縫い代側(裏側)の耳端にに2つ、その間に表側に1つ小さな針目を出します。間隔は、2.5cm程度で、縫い代の幅が細い箇所は、間隔を小さくします。

浴衣の耳ぐけ

最近の若い女性は裄が長いため、後幅と肩幅の差が大きくなり、縫い代が身頃について行かない場合があります。身八ッ口のあたりの縫い代に、部分的に霧吹きを吹き、鏝で耳端を伸ばしますが、耳ぐけの脇納めでは出来ない場合、「折りくげ」にします。

折りぐけ

浴衣脇の出来上がり

浴衣脇の出来上がり

衽納めにも、「折りぐけ」で納めます。

次回に続きます・・・・・・

浴衣の仕立て①

浴衣の仕立て①

5月も後半。浴衣や単衣の仕立て依頼が来始めています。

浴衣は、大型スーパーなどで○点セット○○○○円とか、既製品のものが多く出回っています。洋裁サイズの生地でミシン縫いっぱなしの仕立てのようです。既製品の浴衣を「サイズが合わないから、直してください」と、持ってこられるお客さんも、ちらほら来られますが、直し代を含めると、気に入った柄の反物から仕立てた方が、お値打ちになる場合もございます。

今回は、「浴衣の仕立て」と「単衣の仕立て」の違いについて説明をします。浴衣といえば、綿の生地で当然、単衣仕立てです。他の素材ではウールや化繊、麻、絹物などの生地でも、単衣仕立てがあります。私たちは、同じ単衣仕立てでも、違った仕立て方をしています。

◆浴衣の仕立て

・岡木綿・真岡(まおか・もおか)木綿の浴衣生地の仕立て

私たちは、普通の浴衣生地を真岡(まおか)と呼んでいます。どんな生地かというと、温泉旅館などで着る浴衣生地を想像してください。

私は知らなかったんですが、仕事や業界の慣れって恐ろしいもので、調べてみると真岡は「もおか」という読み方が殆どでした(-_-;)

私が和裁の修行に入った30年以上前では、浴衣の生地は真岡が多く、藍染めが主流。当然色も紺や濃紺、女性ものは赤い花柄などをあしらったもの、男物は白と紺の2色が殆どでした。

使う糸も白・黒・紺程度の色で太口綿の糸を使って縫い、くけは細口糸と決まっていました。修業に入りたての頃で、今に比べると、糊がとても効いていて、堅く、縫うのも一苦労だったような思い出があります。今、思えばその苦労が運針の練習になったと思いますが、縫った後は、指ぬきも指先も、掛け張りのゴムも真っ青!でした。

DARUMA HPより

今では、藍染めのものは少なくなり、様々な色のものや、織り方が変わったものが多く出回っています。化学染料のため、藍染めのものでやっていた「色止め」をする事はなくなってきました。太口糸の色も、そんなに多く色の種類がないので、現在、私たちは化繊の糸を使って縫っています。

真岡生地は糊付けしてあるので折りも付きやすく、仕立て上がりもパリッとしていてますが、シワが付きやすいというデメリットもあります。アイロン掛けが出来るご家庭ならば、洗濯も可能ですが、糊が取れて柔らかくなり、縮みます。

この真岡生地の女物浴衣は、着られる方の身長にもよりますが、反物の長さが短く、繰り越し摘まみは取ることが出来ても、身頃の内揚げ(胴あたりに摘まんで縫ってある縫い代)を入れることができません。衽や衿などの縫い代もあまりないので、身丈を伸ばすといった仕立て直しは出来かねます。

次回に続きます(←クリックするとジャンプします)

最近多くなってきている「仕立て直し」

最近多くなってきている「仕立て直し」

早いもので、平成29年がスタートしてもう2月半ばになりました。先日、豊橋市では鬼祭りが行われ、この鬼祭りが終わると春になると言われています。しかし、立春も過ぎたと言うものの、梅の花が咲いているところもあれば、雪が降っている場所もあり、まだまだ春は遠いのかな?とも思ったりしています。

さて、最近、裄直しなどの寸法直し、長襦袢の半衿掛けなどの仕事が多いですが、仕立て直しも多くなってきています。

先日では、仕立て上がった振袖・長襦袢・袋帯を持ってお母様がお越しくださいました。お母様の姉妹が着て、今度は娘さんが着ることとなり、身長も、体型も似ているのでそのままでも着られそうなのですが、裏地などの汚れが目立つのと綺麗にして着せてあげたいとのことで、洗い張り(解いて生地を洗うこと)をして、裏地取り替え・仕立て直しをしました。

以上の内容の振袖仕立て代(振袖仕立て代・洗い張り代・裏地代・縫い跡の修正代等を含め)は、合計で10万円程度です。(※染み抜きや修正箇所等によって仕立て代は変わります)

私が七五三と成人式に着た着物は、息子2人とも着ています。息子達の着た姿を見ると、嬉しくもあり、頼もしくもあり、私が二十歳の頃のこれからの大きな希望と不安が入り交じった気持ちも思い出し、息子達も同じ気持ちかな・・・なんていろんな事を思ったりしました。

日本にはいろんな通過儀礼があって、和服は深く関わっています。親が着たものを、その子供が着る。親の気持ちが衣服に宿って、「がんばれ~」とか「立派な成人になってね」とか、子供が着ることによって伝わるような気がしますね。20年以上の前の衣類が、次の世代でも着ることができ、リメイク・リフォーム・リサイクルできる和服は、世界でも珍しいのではないのかな??

以前、テレビで成人式の様子をニュースで放送していました。ある女性の新成人が無地の振袖を着てインタビューに「お母さんが着た振袖です。無地の振袖の方が他の人と違って目立つから、着ることにしました!」と答えていたことが印象的でした。成人式全体の様子も映像が流れましたが、仕立て屋の仕事をしているせいか、男性の羽織袴もなんか・・・・・殆どが柄が同じに見えてしまいます。

以前のブログにも載せましたが、七五三でも同じように感じてしまいます。(七五三の以前のブログはこちら)成人式も七五三の延長のような・・・・・一つ一つの着物を見ていれば、蛍光色っぽい花が全体に散りばめられていて、可愛いく豪華に見えますが、同じ雰囲気の柄が集まると、見栄えがしない気がします。昔の方が日本の色を使い古典調柄をあしらったものが多く、それぞれが主張していたようにも思えます。

また、別の日には、喪服と長襦袢を持って来られた方がいました。嫁いだ時に持ってきた喪服ですが、今まで一度も着ていなく、躾も付いている状態でした。近々着られる予定があるので、はおってみたら幅が狭くて・・・・と相談に来られました。

見てみてみると・・・・・

喪服ですので、一度も着ていなくても身幅を広げる場合、縫った跡(標)や折り跡が出てしまいますので、その跡を目立たなくする修正が必要

裏地は時間が経っているため、黄ばみが出ているので、取り替えた方が良いのでは

体型が変わったために、身幅(脇)のみの寸法直しでは着やすくならない。衽幅や抱き幅などの寸法直しが必要かと思われる。

身丈も短く、また、袖丈が長い。

縫い跡修正と着やすい幅直し、袖丈直し、裏地取り替え等という方法もあるが、殆ど解いてしまうため、仕立て直しとの価格の差はあまり無い

仕立て直しの方が、一から仕立て直すので部分寸法直しより、きっちり仕立てることができる。

と、説明させていただき、縫い跡修正、裏地取り替え、仕立て直しをさせていただきました。縫い跡の修正は、染み抜き屋さんにお願いしていますが、昔の喪服の生地は染めも織り糸もしっかりとしていて、綺麗に修正できました。

以上の袷喪服の仕立て代(仕立て代・裏地代・着用時に見える箇所の上前の部分と裾の修正等を含め)は、6万円程度でした。(※染み抜きや修正箇所等によって仕立て代は変わります)

最近、喪服の仕立ては海外で行っており、私たちの所へは殆ど来ません。今、作られている喪服の生地は、全てではないですが以前よりだいぶ薄くなったものが多くなっているように思います。そのような喪服の生地を仕立てる時に注意しなければならないのは、一度縫ったら、伸びてしまい、染料がはげてうっすらと白くなってしまうので、縫い直しができません。そして、この様な生地は幅を広げたり、丈を直すという仕立て直しは無理かと思われます。

また、和裁組合の研修会で、紋屋さんの講演があったのですが、現在の喪服の生地は、「カラスの濡れ羽色」のように黒色をよく見せるために、ワックスを掛けるそうです。なので、紋入れの際には染料が乗らず、一度ワックスを取ってから、紋を入れるそうです。

今でも、しっかりと織り糸から吟味して、古くから伝わる技法で柄を染め、作り直しを考えた反物もありますが、反面、デザインのみに目が行ってしまいがちな、反物(きのも)もありますね~

きものの仕立て直しで、綺麗になります。

きものの仕立て直しで、綺麗になります。

お母様が「きものを娘に譲りたいのですが、どのようにしたらよいのでしょうか?」と、ご相談がありました。お話を伺うと、地元の呉服店は廃業してしまって、どこに持って行けばよいのか分からなかったようでした。

きものを見てみると、

胴裏地には沢山のシミがあり、八掛の色もちょっと派手なので、もう少し優しい色目が良いとのことで、胴裏と八掛は新品に取り替えることとなりました。

時間がだいぶ経っているので、表生地が縮み裏側の生地が緩んでいます。袖口は・・・・

裾も表生地が緩んでいます。(点々のように見えるのは、縫い躾(ぬいびつけ)またはグシという躾が掛かっています)

当初は、裏地取り替えと裄や身幅などの寸法直しというお話でしたが、表生地のねじれなどで、寸法直しでは思ったほど仕立て上がりがよくない事や、洗い張りして仕立て直す費用と比較しても、さほど変わりないことをお話させていただきました。

また、表生地にも全体にシミがあり、全ての染み抜きをするのには、費用が掛かりすぎてしまいますので、まず、洗い張りをして、その後、シミの位置を確認し、寸法を測り、縫い代に入る箇所や、着て目立たなく気にならない場所の染み抜きはせず、上前(左身頃の前)や衽、後身頃のお尻あたりなど目立つ部分のみだけ染み抜きをして、仕立て直しをした方が、出来上がりも綺麗に仕立て上がるのではと説明させていただきました。

仕立て後の袖口は、

裾は

裏地のつり合いも綺麗になりました。

寸法は、娘さんが持っている長襦袢に合わせて着られるように、また体型に合わせた寸法で仕立てました。

和裁屋では、仕立てた寸法や内容は保存しています。また、きもの寸法を一度寸法を決めれば、長襦袢や羽織る物など、その他の和服を仕立てるときに、合わせることができます。仕立てのお客様には寸法表をお渡ししています。(寸法直しの方は、この限りではありません)

七五三の季節となりました。

七五三の季節となりました。

現在、七五三の仕事が多くなってきています。加えて、振袖の仕事もちらほら入ってきています。

◆お母さんの着物から(本断ち総絞りの着物)

7歳の娘さんを連れて、お越しくださいました。お母さんが7歳の時に着た総絞りの着物を持って来られ、お話を伺うと「私が7歳の時、とても身長が高く、長く仕立ててあり、小柄な娘の身長に合わせて腰揚げをすると、モコモコになってしまいます。重さもあり、どうしたらよいのでしょうか?」とのこと。着物を見てみると、仕立て方は四ッ身ではなく、大人用(本断ち)の仕立て方で、多分「十三詣り」で仕立て直しをして着られるように、内揚げ(身頃に摘まんである縫い代)や衽、衿にも縫い代が縫い込んでありました。

この状態で娘さんの身長に合わせ、肩腰揚げや袖揚げをすると、その摘まむ量が多く二重揚げでモコモコになってしまいます。絞りなので尚更です。「寸法直しでなんとかなりませんか?」とも提案されましたが、身丈・裄・身幅・袖丈など、ほとんどバラバラにして直すことになります。値段もほとんど仕立て直しと変わらない程になってしまいますので、全て解き、地直しをして仕立て直しをすることとなりました。今後、この着物は着ないとのことなので、軽くするためにも大四ッ身で作らせていただきました。

7歳の娘さんの身長を伺い、持ってこられた着物を家内が着せて、どのくらい長いのかを測り、娘さんの丁度よい腰揚げ・肩揚げ寸法で仕立てることができました。

着物の解き・地直し・仕立て・肩腰揚げ・紐作り付け・・・約4万円程度(生地等によって変わります)

◆お母さんの着物から(小紋の着物)

お祖母様、娘さん、お孫さんの3名で、お越しくださいました。娘さんが7歳の時に着た小紋の着物、長襦袢を持って、お孫さんが着られるのかどうか相談に来られました。約30年前に着たままで、小じわなど付いていました。私達が反物から仕立てる場合、着丈(着る長さ)に38cm位足して身丈(仕立てる長さ:腰揚げ前の長さ)を決めますが、お持ちいただいた着物は少々腰揚げの量が少ないものの(20数センチ)、腰揚げ位置のバランスを見て仕立てることができます。

30年前のそのままなので、一度生き洗いをしてリフレッシュしてから、揚げを行いました。

7歳のお祝いは「帯解きの儀」と言われ、肩揚げはしますが、紐付きの着物を着ず、大人の様にお端折りをして着物を着始めるお祝いの儀式です。しかし、現在では、紐を付け、腰揚げをする方がほとんどです。考えてみても、まだ7歳なので嬉しくて、跳んだり跳ねたりする頃で、着物の裾を踏んだらお端折りが出てしまい、着崩れしてしまいますよね~

今回も家内が着付けをして、正確な肩腰揚げ寸法を測り、着物と長襦袢の肩腰揚げと紐付けをさせていただきました。

※揚げの糸を取ってみると・・・・・

私達はチャコは一切使わず揚げをしますが、お持ちいただいた着物には腰揚げや肩揚げの摘まむ線を、青いチャコで標を付けて縫ってありました。蝋チャコと呼ばれるもので、繊維に浸み込んでしまいます。揚げの糸を抜き揚げ直しをすると結構目立ちます。生き洗いでは取れず、染み抜きが必要となってしまいました。

着物の生き洗い・チャコ染み抜き・肩腰揚げ・紐付け+長襦袢の肩腰揚げ・紐付け・・・約2万円程度(あくまで目安です)

◆3人娘の振袖

お祖母様、娘さん、お孫さん達で、お越しくださいました。娘さんが成人式に着た振袖を、お孫さん3名に着せたいとのこと。お孫さん3名は体型は同じですが、身長が少しずつ違います。「何とかなりませんか」とご相談しに来られました。家内が着付けをしたところ、体型が同じなので身幅はだいたいOKです。身丈もお端折りで何とかカバーできるほどで、大がかりな寸法直しは必要ないと判断しましたが、袖は、始めに成人式を迎える一番背の低い方が着ると、床に付いてしまったので、着物は袖丈直しをさせていただきました。

問題なのは長襦袢です。対丈で着るため一番背の低い方は裾を引きずってしまいました。身丈直しをしてしまうと一番背の高い方には、短くなってしまいますので、長襦袢の褄下あたりで、長い分を摘まんで腰揚げをしました。初めの方が着た後、腰揚げの糸を抜けば、その後の方が着られるようになっています。

着物の袖丈直し+長襦袢の袖丈直し・腰揚げ・・・1万5千円程度(あくまでも目安です)

後日談:お祖母様が後日、尋ねてこられ、私達の所に来られる前に、地元の呉服店に持って行ったところ、あれもこれも直さなければならないと、結構な値段を言われたそうです。呉服店の店員さんも着物をよく知っている方が、もういなくなってきていると感じました。

着物の長所は直せるところ

着物は、作り直せる衣類です。私の七五三の時に着た祝い着は、私の弟、従兄弟が着て、私の息子達が着ました。私の成人式の着物も、息子達が着ています。

七五三詣り

私の家内は、従姉妹のお下がりの着物を長女・次女そして三女の私の家内が着ました。

七五三詣り

日本の「衣の文化:和服」の「モノを大切にする文化」・「もったいない文化」は、まだまだ根付いています。

11月頃、神社に参拝すると、祝い着を着た子供で賑わっていますが、職業柄、既製品と誂えた着物と、ついつい比べてしまいます(^_^;)

浴衣の着姿

浴衣の着姿

夏、真っ盛りですね~

街を歩いていて花火大会や納涼祭りで、また、テレビのCMやバラエティー番組などなど、浴衣の着姿を目にすることが多くなりました。

浴衣の着姿を見ていて、仕立て屋目線で気になることがあります。それは、衿元で衿の打ち合わせ具合です。男性の浴衣は、胸元が見え少々はだけていてもワイルドっぽさを演出?する事ができますが、女性の場合、浴衣は長襦袢を着ないので(衿元に半衿を出すことはありません)胸元が開いているのはちょっといただけませんね。衣紋もあまり抜かず、衿をある程度深く重ね、詰めて着た方が清楚さがあり(詰めすぎると暑苦しくなりますが・・・)、逆に胸元が開いていて衣紋が抜きすぎていると妙にケバケバしく、いやらしい変な感じがします。(仕立て屋だけかもしれませんが・・・)もちろん、着付け方にもよりますが、既製品では寸法上、胸元のことまでは何ともならない場合があります。

衿元の打ち合わせ

標準とされる寸法で仕立てると以下のようになります。

衽下がりの違い

衽下がりは標準で23cm(6寸)です。

バストが大きい方は胸元が開きやすいので、衽下がりを20cm程度にして、胸元の布幅(脇から衿付けまでの距離)を広くします。特殊な例では衽下がりを15cm位にしている方もいました。

衽下がりの違い

上の図で比較すればよく分かると思いますが、衽下がりを短く(剣先を高く)する事によって①よりも②の方が広くなっていることが分かります。もちろん、バストによって抱き幅(身八ッ口での脇から衽付けまでの距離)を広くしますが、抱き幅と前幅との関係や剣先までの衿付けの斜め具合も計算し、着る方の体型に合わせて寸法を変えて仕立てています。もっと、ふくよかな方は衿付けを湾曲させて付けたりもします。

「浴衣」で検索すると、着姿の画像がいっぱい出てきて、「ちょっとな~」と思うものもあります。また、ネットショップなどで見ることができますが、長襦袢?なのか嘘つき長襦袢?を着て半衿を出して浴衣?なのか単衣?なのか分からないものを着ている姿を「浴衣」として販売もしています。

もともと浴衣は、「湯帷子:ゆかたびら」ともいい、風呂上がりに着用する単衣の和服(帷子)のことで、汗を吸うように綿で出来ている物です。お殿様は、風呂上がりに浴びるように着て汗を取ったともされ、浴衣という名前が残っています。なので、夕方から着始める和服です。真っ昼間から、着ない和服なんですね~(お年を召した方がよく仰っています。チェックが厳しいですね(^_^;))

時代と共に浴衣も夏の風物詩、ファッションとしても取り入れられ、丈の短いものや、衿にレースをあしらったものなど色々あります。私としても和服を着ていただける事は、大変嬉しいのですが、「本来はこうなんだよ」ということも知りつつ、カッコ良く着ていただきたいなあ~と思います!

袋帯のだぶり直し

袋帯のだぶり直し

帯の仕立ての仕事が来ました。

検品をすると、表地と裏地のつり合いが悪く、表が緩くとてもだぶっています。柄の感じから古そうで、時間が経っているので表生地と裏生地の材質が違いすぎて、つり合いが悪くなっていますいます。さらにガード加工を施したので裏地が縮んでしまったのかもしれません。お客さんこのことを告げ確認をしていただき、端縫いを解き、つり合いを直します。

縫いを解く前にどれだけ縮んでいるか、手先の織り止めの位置で、裏地に糸標をしておきます。

両端のミシン縫いを解き、手先を見てみると、約6cm強、表地の方が長いようです。

表地、裏地共に、霧吹きと業務用スチームアイロンでこれ以上縮まないように地直しをし、生地を整えます。

元の縫い目でミシン縫いをして、縫い代は縫い割りをします。

表側にひっくり返して、さらに被山を整えながらアイロンを当て整え、その後は通常通り帯芯を入れて仕立てました。

これで、スッキリとつり合いもよくなりました。

この場合のつり合い直しと仕立て代は、帯芯別で14,000円(税別)程度です。

なお、はじめの縫い跡が出てしまう場合や、帯幅が多少狭くなる場合もございます。端の縫い方や生地の具合によって出来ない場合があります。また、下の写真のような縫い目がない本袋帯などは、つり合いを直すことはできません。お気軽にご相談下さい。

本袋帯端

2016年5月11日 | カテゴリー : 仕立て, | タグ : | 投稿者 : 和裁屋

作り帯の着付け

姪っ子の結婚式に招待されました。妻はとても楽しみにしていますが、ちょっと遠方で、しかも朝が早く、着付けに時間をかけられないので、ささっと着付けが出来るように袋帯を作り帯にしました。手(胴)の柄によって、手を右側に出したり、左側に出したりすることが出来ます。

作り帯(袋帯)

作り帯に帯枕・帯揚げをセットします。

作り帯の着付け前の準備

好みの手(胴)幅で折り、帯板を入れてピンチで止めます。

作り帯の着付け前の準備02

帯枕を背負います。

作り帯の着付け01

帯揚げを仮に結びます。

作り帯の着付け02

手(胴)を巻き、先をお太鼓の下に入れます。

作り帯の着付け03

手(胴)を整えて

作り帯の着付け04

垂先の具合を確認して

作り帯の着付け05

帯に付いている紐を結び、帯の下に入れます。

作り帯の着付け06

帯締めを結び・・・・・

作り帯の着付け07

帯枕の紐を整えて結び・・・・・・

作り帯の着付け08

帯揚げも整えて結びます。

作り帯の着付け09

時間短縮することが出来ました!(^^)!

作り帯の着付け10

最近、出来上がった袋帯や名古屋帯を切らずに畳んで綴じ付ける作り帯にして欲しいという依頼が多いです。慣れてくれば早く着付けが出来ます。帯結びがネック!という方も多く、特に袋帯はちょっと締めにくい感がありますよね。作り帯、切り帯については以前のブログにも載せましたようにデメリットもあります。

以前、組合で作り帯や、切り帯を取り上げたことがあり、組合員さんに締めていただきましたが、とある方は、「締めにくい」と言われたことがありました。

どんな物でも一長一短ですが、興味のある方は、一度試してみてはどうでしょうか?

掛け衿の話(経験談)

以前のブログで「掛け衿と半衿の話」では、掛け衿について私達が日頃、この様に仕事をしていますという内容を載せましたが、今回は掛け衿(共衿)についての、経験談をちょっと載せてみます。地方や呉服店、和裁の修業先によっても違いますので、ご了承くださいね。今から十数年前の話ですが・・・・・・

夕方、当時仕事をしていた地元の呉服店から、翌日の朝7時頃、お店に来て欲しいとの連絡がありました。急なことでしたので困惑しましたが、掛け衿について、お客さんに説明をして欲しいとのこと。

内容をよく聞いてみると、

  • 付下げを購入したお客さんの掛け衿を二枚取って欲しいという要望が、呉服店に伝わっていなかったらしい。
  • しかし、もうすでに他の仕立屋で仕立て中であったため、付下げを解き、洗い張りに出して元の状態にしたとのこと。
  • 洗い張りが上がってきたので、その反物を持ってお客さん宅へ行き、説明をして欲しい。
  • お茶の先生で、着物に詳しく、早朝にしか都合が付かない。

と言った内容でした。正直、私は朝が苦手なのですが、承諾し、早朝、物差しなど和裁道具を持って呉服店に行き、商用車で店員の方と一緒にお客さん宅へと向かいました。
お客さん宅に着き、反物を広げたところ、幸いにも掛け衿と本衿(地衿)の柄がなく、無地でした。本衿と掛け衿がまだ切れていなく、衿衽の布丈が通常より長かったことなどを確認し、お客さんの寸法で衿丈を計算。本衿布の長さをぎりぎりで取り、残りの布丈を測ると約47cm位の掛け衿が二枚取れることが分かりました。

お客さんには、「掛け衿を二枚取ることは出来ますが、この長さは浴衣などの長さで、ちょっと短めです。本衿もぎりぎりなので、洗い張りなどをした場合、縮んで妻下の寸法が変わってしまうかもしれません。」などなど・・・・作り直したりする場合の縫い代のバランスなども説明しました。でも、お客さんは、気に入った柄で長く着たいので、掛け衿を二枚取って欲しいということでした。その後、その付下げを仕立てることとなり、掛け衿は別付け別納めで縫ったことを思い出します。

今思うと、私はずいぶんと若かった頃で・・・・・この様なことは初めての体験。どきどきしながら、とても緊張したことを思い出します。
そして、仕立てをする時にはスリーサイズから割り出した、決まった寸法で作るのではなく、着物をどんな使い方をするのかとか、着る方の要望をよく聞き、分かりやすく説明しないといけないなあ~と感じた日でした。