絽長襦袢を仕立てています。

喪服一式など結納に必要ということで、正絹(絹100%)絽長襦袢を仕立てています。

絽長襦袢の背縫い

この場合、居敷当てが付かないので、補強の意味で、背縫いは約70cm程度一針ずつ縫い返しをします。

絽長襦袢

背縫いの縫い返し

脇は、10cmほど縫い返しをします。

絽長襦袢

脇の縫い返し

身八ッ口には、力布で補強します。

絽長襦袢

身八ツ口

裾は地の目(絽の目)を通して(揃えて)三つ折りぐけにします。地方や呉服店によっても違いますが、くけ上がり幅が約1cmの場合もあれば、約3.5cmの場合もあります。この場合は、1cmです。

絽長襦袢の裾

生地が透けるのものなので、衿肩明きには、大きな肩当ては付けず、三日月布(力布)を付けます。

絽長襦袢

三日月布

衿先布も、地の目を通して仕立てます。

絽長襦袢の衿先

正絹物(絹100%)のものは、裾や袖底(袖下)など地の目を通して仕立てます。

「地の目を通す」という意味は、布の耳端から耳端まで横糸1本ずれないように通すことをいいます。

例えば、名古屋帯の垂先も地の目を通しますが、縫い合わせる際に下の写真のように綴じます。

名古屋帯

垂先の綴じ

正絹物であれば袷着物や長襦袢の裾など、名古屋帯の垂先・手先など、よっぽどの箔使いや耳端の吊れ、強い生地のゆがみなどがない場合は、地直し(仕立て前にアイロンを掛けること)で生地を真っ直ぐにして、地の目を通して仕立てています。

袋帯の地方色(帯について その2)

袋帯の地方色(帯について その2)

以前、和裁団体の新年会に行った時のこと。とある女性の着物の後ろ姿を見て「何か違う??」と感じ、よく見てみると袋帯の垂先に織り止めが出ていました。

垂先には、2本の織り止め(太く線に織ってある線・かいきり線ともいいます)があるものがあります。1本の物も、無い物もあります。

袋帯の織り止め

私は愛知県在住で、修業先も愛知県でしたので、垂先の織り止めは隠して仕立てをしています。

関東圏の袋帯

垂先出来上がり

知識として、関西圏の場合、織り止めを出すというようなことを聞いていましたが、その新年会での着物姿を見た時に、どことなく違和感を覚えました。

関西圏の袋帯

垂先出来上がり

その女性の方にお話を伺ってみたら、京都で修行されて、岐阜県で仕事をされているとのこと。自分の袋帯は、垂先織り止めを出して仕立てているそうです。

三重県や長野県の方は、出さないとのことでした。

では、この2通りの仕立て方の境目はどこ?という疑問が涌き、とある和裁の先生に聞いたところ、「鈴鹿山脈あたりが境目なんじゃないかな?」とおっしゃっていました。

地方での仕立て方は様々です。湿気の多い日本海側では、布が縮みやすいので立褄や身八ツ口・振り・袖口など束(裏表一緒)に縫い躾を施したり、子供の着物も仕立て方が違ったりします。現在ではNC(ナショナルチェーン店)と呼ばれる呉服屋さんが台頭して、殆どが海外で仕立てられ、全て同じ仕立て方で着物が出来上がっているようです。

仕立屋としては、着られる方の意向をよく聞いて仕立てをしていますが、昔からの地方の気候風土などを考慮した仕立て方が失ってしまいそうな気がしてなりません。

七五三の祝い着について

七五三の祝い着について

七五三祝い着の仕事依頼が多く来ている今日この頃です。多くは、既製品の肩腰揚げ・紐付け・半衿付け・袴の揚げですが、仕立物も来ています。

3才祝い着

七五三のいわれ

以前、名古屋市のイベントで仕立て実演をしていた時、来場者から「七五三の祝はいつやればいいのですか?」と質問を受けたことがあります。写真館やレンタル業者からDMが届くわけですが、最近、子供の名前で性別を判断するのが難しいらしく、7才・5才・3才の子供を持つ家に、DMを届けているような感じもします。

3才:髪置の祝

3才の頃になると男女異なる髪型にて、髪を伸ばし始める儀式。

5才:袴着の祝

幼年から少年に移る儀式で、袴の着始めをいいます。これ以降は男女別様の衣服を着用する習慣がありました。

7才:帯解の祝

子供が成長して紐付きの着物をやめて、初めて帯を着用する時の儀式です。地方の習慣によって異なります。

その他

・お宮詣り

誕生後、初めて氏神様に参拝することをお宮参りといい、多くは生後30日前後にします。地方によっては100日目に行っているところもあります。宮参り初着と呼ばれる二枚重ねの掛け着を使います。

・十三詣り

関西で主に行われる女児の祝で、地方によって褌祝(男児に褌を贈る)、腰巻祝(女児に腰巻きを贈る)などと同様に、性的成長の段階を祝う儀式といわれています。着用する着物も肩揚げはしますが、腰揚げはしないで、お端折りをするなどの変化が見られます。

(以上(一社)日本和裁士会編集「新版和服裁縫下巻」参考)

地方によっても様々なお祝いがありますので、上記のようなことが当てはまらないかもしれません。

被布

一般的には、3才(被布を着用)と7才は女の子の祝、5才(紋付き羽織袴)が男の子の祝とされています。この5才男児の着物と羽織には袂丸(袖の丸み)を付けないとされていました。袂丸が付いている着物を着られるのは出世してからで、子供のうちから袂丸の付いた着物を着ると、出世しないと聞いたことがあります。今では、「可愛いから」と付いている既製品が殆どですが・・・・

仕立てについて

祝着で肩腰揚げをする前提で仕立てる場合、身丈は着丈(着る時の長さ)に約8寸~1尺程度(約30~38cm)長く仕立てます。子供の成長度合いにもよりますが、2年位は腰揚げの量を調節して着ることが可能です。肩腰揚げの目安となる寸法は、

腰揚げ寸法(着丈)=身長×0.8

肩揚げ寸法=身長×0.4+2cm

おおよそ、この寸法でOKです。5才の男の子の着物は、袴を着けるので足さばきをよくするために、短めにします。

5才男児着物・羽織(肩腰揚げ前)

5才男児着物・羽織(肩腰揚げ後)

子供の成長が早く、身長が高い場合、困ってしまうのが肩揚げです。既製品の場合、肩揚げをする余裕がない場合もあります。格好物なので、肩揚げをしないわけにはゆきませんので、2cm程度摘まんで、肩揚げとします。逆に揚げの量が多い場合は、二重に摘まみます。

腰揚げの位置は、格好物で、私たちは待ち針で仮に留めておいて、全体を見て決めます。最近、着物雑誌の影響からか、腰揚げの位置が高いように思えます。私たちからすれば、妙に大人びて、子供らしさがないと感じます。こんな記事が愛知和服裁縫業協同組合のホームページに記載されていますのでご参考までに。

依頼がたまにあるのが、振袖、長襦袢を購入され十三詣りに着られる方もいます。仕立ては、成長することを見越して身丈、裄ともに長めに仕立てて、着物は肩揚げ、長襦袢は肩腰揚げをします。

ご注意!!

お祝いが終わって、収納する際には、肩腰揚げの糸を解いて下さいね。そのまま何年かタンスに入れっぱなしですと、揚げをした箇所に折がきっちり付いてしまいます。次回着る時にその折が消えない場合がありますよ!

名古屋帯の真綿引き

名古屋帯の真綿引き

最近、帯芯の種類が増え、キラキラの帯芯やら、軽涼芯、起毛芯、真綿芯などなど・・・

昔は帯芯のことを「ゴム芯」と言っていた方がいました。綿製ですがゴムのように?伸び縮みがあるのでそのように言われていましたが、現在では防縮加工や防カビ加工されているものが殆どですね。

透けるもの、帯地が薄いもの、用途や好みに合わせて帯芯を変えたり、ある程度、御客様にアドバイスもしています。

その帯芯の中で、主に塩瀬羽二重の名古屋帯に使用され、芯の片面に帯地とくっつきやすいように綿飴(綿菓子)のようなものを施した帯芯があります。色々、帯芯屋さんも考えているんだな~と感心させられます。

そんな帯芯がない頃、塩瀬羽二重の名古屋帯の仕立ては、普通の帯芯に真綿を引いて仕立てていました。必ず真綿を引いていたわけではありませんが、呉服屋さんの指示やお好みで真綿を引いていました。

実際は帯芯に真綿を伸ばしてくっつけます。

保温性を持たせるわけではなく、帯地と帯芯があまりずれないようにするためと、ちょっとボリュームを持たせるために、真綿を薄く引きます。使用するのは角真綿で、布団屋さんなどで販売していました。

角真綿

薄い一枚を接がし、手で伸ばして帯芯にくっつけます。

現在、呉服店でもこの仕立て方を知っている方はあまりいないんじゃあないかな?

作り帯・切り帯

作り帯・切り帯

最近、作り帯や切り帯の仕立て依頼がちょくちょく来ています。これらは、簡単に帯を締めるために工夫されたもので、早く着付けをしたいとか、腕が回し辛くなった方などに好評です。

呼び名は地方によって色々あると思いますが、作り帯は帯を切らずに作る仕立て方で、切り帯とか、付け帯はお太鼓(垂)・胴・手先の三つの部分に切って作ります。

・作り帯

切らずにお太鼓(垂)部分を畳み、手先をお太鼓に差し込み、胴回りを二重にし、紐を付けます。

お太鼓の大きさや手先を出す量は、お好みで、少々短い帯でも締められるメリットはありますが、上の写真の様に胴・手(お腹)のポイント柄の場合、初めに決めた位置から自由に動かせないというデメリットがあります。

・切り帯

作り帯に対して、お太鼓(垂)・胴・手先の三つのパーツに切って、お太鼓(垂)と手先を組み合わせて畳んで綴じ、胴には両端に紐を付けます。この形以外にも、お太鼓結びの形に畳まず、垂に手先を付けただけのものもあります。上の作り帯に対して、胴(手)が切り離されていますので、お腹のポイント柄の位置はある程度自由に移動ができます。

デメリットは、やはり切ってしまうことですね。切る位置は締めた時に見えない位置ですので、継ぎ足せば元の帯に戻りますが、長さは短くなります。

・変わり結び

切り帯(変わり結び)

日本舞踊を踊っている方からの依頼で、見本をお借りし、袋帯を変わり結びにしました。但し、真っ平らにはならないので、保管には箱に入れて収納しないといけませんね。

【注意点】

以前、作り帯や切り帯にしていない長い帯に締め慣れている方に、切り帯を締めてもらったところ、「締め辛い」とのことでした。いつも締め慣れているものが、一番でしょうか?

また、着付け初心者の方は、古い帯を切り帯にしたところ締めやすいと好評で、その後、何本も持ってこられました。

現在、七五三などの既製品で裏側に金具が付いていて、胴(手)に差し込むだけで簡単に締めることができる帯が出回っています。これで気軽に着物を着ていただけることには嬉しいのですが、歩く後ろ姿はパカパカと浮いて、おかしなものもあります。着物を使うTPOに合わせて帯も使い分けないといけないのでしょうね。

あれ!左右逆じゃない?(柄の合わせ方2)

あれ!左右逆じゃない?(柄の合わせ方2)

先日、テレビを見ていたら、妻が「あれ、左右逆じゃあない?」と、言ったのでテレビを見てみると

左右逆?

とあるファッションモデルの方が、右身頃が上にして着ている浴衣姿の写真が映し出されていました。ブログ??ツイッター??の写真とのこと・・・・

よーく見るとちょっとピントがあまい写真で、私は「鏡で映して撮ったんじゃあ無いのかな?」なんて返事をしましたが、説明無しに写真だけ見ると、逆に着ています。

私たちが、浴衣などの比較的大きな柄物を裁断する時に、特に気を遣うのが、左前身頃の柄なので、左右逆に着たきものを見ると「なんか変じゃあない???」と2度見してしまいます(^^;)

ここで、着物の柄合わせについて、ざっくり説明します。

基本的な柄合わせ

基本的な柄合わせは上のイラストのように、全体に柄がくっつかないようにします。

ポイントは、

①左身頃(上前)の胸辺り、上向きの柄を配置します。

②上前衽の裾から50cm~60cm程度の所に上向きの柄、その柄と交互になるように上前身頃の柄を配置します。

③後身頃裾から50cm程度の所に柄を配置して、反対側の身頃の柄が交互になるようにします。

その他:袖の柄、掛け衿の柄も身頃の柄と並ばないように、注意します。あと、着た時に以外と目立つのが、左脇の柄ですね。脇も前後身頃の柄が並ばないように注意します。

一反の反物の長さはおよそ決められていて、特に浴衣の反物は短いものも多く上のイラストのようには、うまくゆかないものもありますが、全体に柄が散らばって配置されるようにします。加えて、着る方の寸法もありますので、上前の胸、衽の柄、全体の柄の配置といった順番で、優先順位を付けて見積もりをします。

・その他、一方向きの柄もあります。

上のイラストのように、右身頃の後・右袖の後の柄を立たせる、左身頃の前・左衽・左袖の前の柄を立たせる、また、左右前身頃・前袖の柄を立てる、後を立てる・・・・・などなどパターンがあります。

・片側が色の違う反物もあります。

同じ色をくっつければすっきりした感じの着物となり、色目にもよりますが、交互にすれば派手目となります。

交互にする(追い裁ち)

色を揃えた場合

私たちは、着られる方と相談して、イメージを作ってから仕立てに取りかかっています。

ふと思ったんですが・・・・・

現在の着方、右衽(右身頃)を先に着てから、左衽(左身頃)を合わせるという着方は、奈良時代に決まったことですが、これから数十年後、時が経って「和服もファッション!」と有名なモデルさん達が言い始めれば、左右関係無しにきものが着られる時代が来てしまうかもしれませんね?

でも、現在では左右逆に着る場合は、棺桶に入っている方の経帷子だけですので、くれぐれもお間違えの無いようにしましょう!

死者の着物(経帷子)は逆に着せます。

和裁の「縫い」一覧

和裁の「縫い」一覧

引き出しを整理していたら、修業時代に和裁を勉強する後輩達に、運針(縫い方)を教える時に使った「縫い」の見本が出てきました。

縫い目の一覧

単衣の背縫いに使う「袋縫い」から始まって、玉留め、返し留め、重ね継ぎ・・・・・・・

よく見てみると分かりますが、返し留め、重ね継ぎは単衣物と袷物と違う方法で行います。単衣は、縫い返してあったり重ねてあったりする箇所を目立たなくするために、同じところを縫います。

一方、袷物は、縫い目が一切見えませんので、縫い目の間を縫います。縫い目の間隔も、単衣物と袷物と違います。

運針用布も出てきました。

生地は紅絹(もみ)です。和裁を習い始めに、この紅絹で運針の練習用布を作ります。手触りは普通の着物の裏地と言った感じですが、とても目が詰まっていて、初心者当時は針を何本も折ってしまいました。布に対して針が垂直に入らないと、なかなか縫えないので、練習用の布としては最適です。とても丈夫な布です。

運針用布

紅絹の生地は昔、「お腰」にこの生地が使われていましたが、今ではめっきり見ることが無くなりました。

留めにも色々あります(袖付け、身八ツ口などの留め)

留めにも色々あります(袖付け、身八ツ口などの留め)

袷衣や単衣の着物・長襦袢・羽織などの袖付けや身八ツ口の留めを説明します。

※私たちが行っている仕立て方です。地域によってその呼び方、仕立て方が異なります。ご了承ください。

◆力布

袖付けや身八ツ口は着る時など力が加わるので、補強の意味もあって、私たちは、袷衣も単衣も袖付けや身八ツ口の裏側、手前と反対側に「力布」を付けています。「力布」は約0.8cm正方の小さな布で、素材は胴裏地(白色)を使いますが、絽や紗のものは透けてしまいますので、同色の物や表地の「力布」を使います。表地が絹ならば絹、麻だったら麻の「力布」を付けます。

色々な「力布」

身八ツ口(脇止まり)や袖付けなど、留めから約4cmは半返し縫いまたは縫い返し縫いで、更に補強をしています。

身八ツ口や袖付けの縫い方上の写真は分かりやすいように色を変えて縫っています。

◆かんぬき留め(虫留め)

単衣のきものや長襦袢、単衣の羽織、袷衣・単衣コートの袖付けや身八ツ口、袖口明き、名古屋帯の垂境、袴などにもにかんぬき留めをします。虫がとまっているようなので「虫留め」とも呼ばれているようです。

1.身八ツ口や袖付け、袖口明きなどに、縫い糸を2本渡します。

身八ツ口や袖付けなどに2本縫い糸を渡します。

2.渡っている2本の糸の下を針のメド(穴の空いている方)からくぐらせます。針先からくぐらせると布を引っかけてしまい、寸法を直したり洗い張りの際にかんぬき留めと一緒に布を切ってしまわないための工夫です。

2本の糸の下を針のメドからくぐらせます。

3.更に編んでゆくような感じで、糸を結んでゆきます。

糸を編む様に結んでゆきます。

4.一杯まで結んで完成です。下の写真はちょっと見づらいですが、順序よく糸が並んで結んであればOKです。

一杯まで結んで編み、かんぬき留め(虫留め)の完成です。

◆笹べり(八ツ口・人形)

笹べり(八ツ口・人形とも言われます)

婚礼用貸衣装や仕事用きものなど、かんぬき留め以上に補強する場合は上の写真の様な「笹べり」を付けます。主に袖付け、身八ツ口、袖口、男物の袖付けにも付ける場合があります。「八ツ口」とか「人形」とも呼ばれているようです。

布の性格を考えて(大島の仕立て)

先回のブログに関連した内容です。

袷着物は、表地(きもの地)・胴裏地・八掛と三種類の生地で成り立っています。
胴裏地は糸の太さ、糊の量などいろいろありますが、縮み具合はそれほど大差はありません。
八掛は染めや糸の太さ、織り方も様々で紬の八掛以外は、とても縮むものもあります。
表地は縮緬、お召し、羽二重、紬等など八掛以上に、千差万別で地直しの作業は、布の端で色々試してから行っています。

その中の紬といえば結城紬、白山紬、信州紬などありますが、大島紬は同じ紬絹織物でも織り糸の性質が違い殆ど縮みません。(布の縮み具合:参照)
大島紬を仕立てて時間が経過すると、下の写真のように胴裏地や八掛が縮んだ結果、表側がビリ付き、緩んだ状態になってしまいます。

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