浴衣について 寄り道ばなし

・浴衣は縮みます

着ていると裾が上がってくるので少々長めにして自分用に浴衣を仕立て、一度洗濯したら2cmほど縮み、さらに洗濯したらすね毛が見えてしまうほど縮んでしまいました。

また、毎年のお祭りに着たいと、男性用の浴衣を仕立てました。5年後位にその方から身丈が短くなってしまったと連絡が入り、測ってみると10cmほど縮んでいました。仕立てる際に15cmほど腰あたりの「揚げ」とか「内揚げ」といわれる部分に、縫い代を15cmほど入れ、衽や衿などにも身頃の揚げを伸ばした時に、全体が長くできる縫い代を入れておいたので、身丈を直すことができました。

縮むのを防ぐために「水通し」をしたことがありました。「水通し」とか「色止め」とは藍染めなどの染料が衣類や素肌に付かないよう、ある程度落とす作業のことですが、縮むのを防ぐにはあまり効果がなく、やっぱり綿の物は洗濯をすれば縮んでしまいます。

・男物着物の腰揚げの意味

女性はお端折りがありますが、男性の場合、対丈で着ますので仕立てる際にはできる限り腰あたりに縫い代を入れておきます。生地が縮むからという理由の他に、染め直しなどをして女物に作り替えることができる布地の長さで裁断を行うという意味もあります。

・紺色しかなかった浴衣

昔々は浴衣は藍染めで、紺色の柄のみだったようです。私が和裁を習い始めた40年前は、紺地(藍染め)に赤の花柄といった浴衣が多く、布地は「真岡」で厚くて糊気が効いていて堅く、初心者の私は針がすぐ曲がり、手が真っ青になった思い出があります。運針の力を付けるためにはとてもよい素材でした。縫い糸は綿の「太口」で色は白・赤・紺・黒くらいしかなかった様な気がします。

現在では化学染料のプリントでいろんな色が使われ、生地の素材も薄くて柔らかい物が多く、縫い糸には化繊を使っています。