袖の種類⑥

・モジリ袖

関東地方では「鯉口」または「ムキミヤ」と言われているようです。他にも地方によって「ネジポ」「モジリ袖」「三角袖」「トロン」「カモヤ」などという名前があるそうです。筒袖と同じであまり歴史は古くないようです。袖丈は42cm(1尺1寸)前後で袖口は13cm(3寸5分)位です。

・近代袖

近代袖は袖丈46cm(1尺2寸)前後の袂袖と同じですが、丸みが10cm(2寸6分)くらいにしたもので、昭和27年頃から着られています。「近代袖」といっても、丸みが大きく、元禄袖にとても似ています。今となっては聞かない名称です。

・鉄砲袖

鉄砲のようにほそい袖で、洋服の袖?に似た形です。野良着や法被などにも使われているようです。

・細袖

細袖は布を横に折って、袖付けに三角の襠布を付けた袖で「タテッポ」とも言うようです。

これまで紹介した袖の形の中には、同じような形なのに違った呼び名が付いていたり、区別が付かないような物もありますが、先人の方達が和服の使い方をイメージして様々な工夫をして、布地が無駄のないように仕立てて、名前を付けたように感じます。女物の場合、式服以外の街着・遊び着としての袖は、柄の大きさに合わせて袖丈を少し長くしたり丸みを大きくしたりするのも、小粋であり、かわいくもあり、お洒落な着物となります。また仕事着としては、料亭などで着物を使う場合には舟底袖であったり薙刀袖にします。野良仕事ならば筒袖や鉄砲袖、肌着は晒しで作る半袖や奴袖にします。着物の上に羽織る上っ張りなどにも、用途や使い方によって袖の大きさや丸みの形を変えて作るのもおもしろいでしょう。

参考資料

  • 「知っておきたい和裁の知識」日本和裁士会編著
  • 「日本和裁新聞」日本和裁士会発刊
  • 「和裁教科書全巻」日本和裁士会発行
  • 「わさい」愛知県和裁教授連盟発行
  • 「新和裁全書」金園社発行

袖の種類⑤

・筒袖(つつそで)

袂袖(たもとそで)と比べて動きやすく、作務衣等の仕事着の袖です。袖丈は26.5cm(7寸)~38cm(1尺)位です。

・大名袖(だいみょうそで)

現在、大名袖を見ることのできる和服は、初着(うぶぎ)のお宮詣り用に着る袖です。袖口は表布を裏側へ折り返して作ります。長襦袢でもこのように作る物もありますが、今では初着の袖のみ大名袖のように言われています。袖丈は57cm(1尺5寸)位です。

・半袖

晒し半袖は、晒木綿で作られている肌着襦袢の袖で、反物並幅を半幅にした短い袖です。袖丈は26.5cm(7寸)位です。

・奴袖(やっこそで)

赤ちゃんが着る産着用の袖で平口袖です。袖丈と袖幅が同じの正方形の袖です。奴さん(江戸時代の武家の召使いで、大名行列では髭を生やして槍や箱を持ち大名のお供をした)の着物の形によく似ているところからその名が付いたと言われています。袖丈は26,5cm(7寸)くらいです。

参考資料

  • 「知っておきたい和裁の知識」日本和裁士会編著
  • 「日本和裁新聞」日本和裁士会発刊
  • 「和裁教科書全巻」日本和裁士会発行
  • 「わさい」愛知県和裁教授連盟発行
  • 「新和裁全書」金園社発行

袖の種類④

・舟底袖(船底そで:ふなぞこそで)

舟底袖は船の底の形に似ていることからこの名前が付けられていて、袖丈は32cm(8寸5分)位です。昔は子供用の着物の袖として作られていました。それが第2次世界大戦当時、男性は国民服、女性は袖丈を詰めた30cm(8寸)前後の舟底袖を着るようになりました。活動的ではない袂袖(たもとそで)は社会から姿を消し、婦人標準服として舟底袖が一般に用いられました。

・薙刀袖(なぎなたそで)

薙刀袖は、かなり古くからあったと言われています。薙刀に形が似ていることから付いた名称と言われ、また、昔、薙刀の稽古に婦人が着たからとも言われていますが、真偽は不明です。袖丈は30cm(8寸)位です。どちらかというと舟底袖よりカーブの度合いが浅いイメージです。

・平口袖(広袖)

長襦袢や半纏(はんてん)、丹前(たんぜん)など、袖口が大きく明いている袖口を平口(広袖)と言います。

長襦袢の場合は下のイラストのようになります。

参考資料

  • 「知っておきたい和裁の知識」日本和裁士会編著
  • 「日本和裁新聞」日本和裁士会発刊
  • 「和裁教科書全巻」日本和裁士会発行
  • 「わさい」愛知県和裁教授連盟発行
  • 「新和裁全書」金園社発行

袖の種類③

・男物の袖

男物の袖丈は女物より少々短く、身長160cmの方で49cm(1尺3寸)位、170cmの方で51cm(1尺3寸5分)位、180cmの方では53cm(1尺4寸)位を目安にしています。丸みは2cmのものが多いです。女物の袖と違うところは男性の方が手が大きいため袖口明きが大きく明いています。(女物約23cm:6寸・男物約26.5cm:7寸)また、袖付けが長く振りがありません。(お端折りがないため身八ツ口もありません)

ちなみに、男物羽織の袖は、下の写真の様に詰め人形もなく、袖付けが袖底(袖下)まであるので、寸法は袖丈=袖付けです。

・元禄袖(げんろくそで)

女物着物の袖で大きく丸み(10~15cm:2寸5分~4寸)を付けたものです。

元禄時代は戦国時代の重苦しい生活からようやく抜け出し、町人経済が発展し和服は派手になっていった時代でした。女性の着物の着方や形の変化に大きな変化が起こり、軽い華美なものを着るようになり、角張った袖から大きく丸みを付けた柔らかな感じの袖が流行し、元禄時代にできたのでその名があります。その頃の袖丈は40~45cmくらいでしたが、袖に大きな丸みを付けたり、袖丈を長くする着物も作られ、元禄時代(17世紀)には60cm位、文化文政(19世紀)頃には90cm位になり、後に振袖へと発展するもとができはじめます。更に華美なものとなる原因となったのが、帯の幅が広くなり、お端折りをするようになり、着用方の変化により身八ッ口・振りが付くようになり、着物の形が大きく変化し、元禄袖や振袖が生まれました。

今では袖丈にもよりますが、イメージとして大きな丸みを付けた袖を元禄袖と言っています。(後に出て来る「現代袖」と袖丈が多少違いますが、似ています)

参考資料

  • 「知っておきたい和裁の知識」日本和裁士会編著
  • 「日本和裁新聞」日本和裁士会発刊
  • 「和裁教科書全巻」日本和裁士会発行
  • 「わさい」愛知県和裁教授連盟発行
  • 「新和裁全書」金園社発行