ブログ:和裁屋日記

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子供きものの種類①

子供物(児裁ち)と呼ばれるきものの種類は、小さい順に並べると一ッ身、二ッ身、三ッ身、四ッ身、大四ッ身(五ッ身・別衽裁ち)が有り六ッ身は大人物(本裁ち)となります。一ッ身は生後から、五ッ身あたりでは12歳程度まで着ることができます。

・一ッ身は生後から2歳頃までで、産着などが作れます。

・二ッ身と三ッ身は原則、両面物(裏表がない生地)でないと作れません。三ッ身は片面物でも作れますが余分な残布が出てしまい不経済で、一ッ身~三ッ身の身幅がほぼ同じなので、二ッ身や三ッ身は現在ほとんど作られていません。お祝い着以外に日常着の需要がなくなったことも原因の一つです。

七五三で着る祝着は、ほとんど四ッ身のきもので、身丈と裄を長く作り、肩で摘む「肩揚げ」、胸元から腰で摘む「腰揚げ」を行います。(他に必要ならば袖揚げや肩や腰の二重揚げなどを行います)出来上がりの大きささにもよりますが、およそ3年間くらい着られる様な長さになっています。

後日、子供着物の種類を詳しく説明します。

・キラキラネームの影響?

きらきらネームが流行っていたちょっと昔、読むのが難しい名前も多く、男の子なのか、女の子なのかも分からないことが多く、幼稚園や小学校の先生は四苦八苦していたと聞きます。その頃、七五三の貸衣装屋さんや、写真屋さんがこぞってダイレクトメールを七歳・五歳・三歳がいる家庭へ、男女の着別なく送付したそうです。なので三歳・五歳・七歳の3回、お祝いをするようになった地域があるそうです。

・重たい7歳祝い着

昔々、とあるチェーン店展開する呉服店の支店から「大人用振袖を7歳の祝い着にしてください」と依頼がありました。7歳の寸法で仕立てて、20歳の時には仕立て直してきたいとのことです。店員さんの強いご要望があり、仕立てましたが、丈も幅にも縫い代が多く、肩揚げ、袖揚げもあり、予想通り子供にとって重たい物となりボコボコになりました。しばらくして本店の方より電話があり、そのような場合は、一度本店に聞いてくださいとのことでした。

袋帯もありました。丈も幅も縫い込んで、ほしいとのことでした。織り方にもよりますが、金糸銀糸等のキラキラした糸を使っている場合は特に、その後の縫い跡は消えないので注意が必要です。また、布の厚みにもよりますが、丈も幅もゴロゴロで締めにくくなる場合があります。

・サイズを表す子供物の呼び方?

三ッ身は3歳用と思われがちですが、布の長さによってベストな裁断方法で仕立てます。その呼び方が、一ッ身~六ッ身(大人用=本裁ち)であり、反物の長さを考慮して、子供の成長に合わせて仕立てます。

「子供用きもの(児裁ち)」とは生まれてから12~13歳位までに着るきものを指します。子供のお祭り用法被を買いに行った時、「三ッ身ですか、四ッ身ですか?」と聞かれたことがあります。お祭り用法被などの場合は三ッ身より大きいサイズが四ッ身といった具合に、サイズのことをさしているようです。

参考書籍

  • 愛知県和裁教授連盟 発行「わさい」
  • (社)日本和裁士会編 「新版和服裁縫」
  • (社)日本和裁士会技術指導部・技術研究部編「和裁教科書」
  • (社)日本和裁士会編「知っておきたい和裁の知識」

子供のきものといえば・・

まずは七五三の着物でしょうか。

子供のきものと聞かれて真っ先に思い浮かぶのは七五三のお祝着ではないでしょうか。七五三のお祝いは、11月15日に晴れ着を着て神社などに参拝し、子供の成長を祝う儀式です。3歳のお祝いは女の子で「髪置きの祝」、5歳は男の子で「袴着(はかまぎ)の祝」「着袴(ちゃっこ)の祝」、7歳は「帯解きの祝」と呼ばれています。一般庶民がお祝いするようになったのは、明治時代からといわれています。着るきものは主に四ッ身が主流です。七五三などの祝着の場合は袖丈が長い「長袖」で、普段着には元禄袖(女児)、舟底袖・筒袖(男児)を付けます。

初めての参拝「お宮詣り」

お宮詣りとは、子供が生まれてから1ヶ月後(男児32日目、女児33日目に行うとされています:地方では100日後)に氏神様へ初めて詣でるお祝いの儀式です。そのお宮詣りの時に着る2枚重ねの式服「宮参り産着(うぶぎ)・宮参り掛着(かけぎ)」があります。

主に一ッ身が用いられますが、地方によっては長尺物を使い五ッ身(別衽裁ち四ッ身)などにして作られることもあります。袖は大名袖です。(袖口は広口)

大人の女性へ「十三詣り」

関西方面で、主に女の子のお祝いで「十三詣り」という儀式があります。和服はほとんど大人寸法で作り大四ッ身(五ッ身・別衽裁ち)または大人用きもの(本裁ち=六ッ身)に肩揚げしたものを着て、大人と同様にお端折りをし、袋帯などの大人用帯を締めます。

参考書籍

  • 愛知県和裁教授連盟 発行「わさい」
  • (社)日本和裁士会編 「新版和服裁縫」
  • (社)日本和裁士会技術指導部・技術研究部編「和裁教科書」
  • (社)日本和裁士会編「知っておきたい和裁の知識」

浴衣の帯について

女性が浴衣に合わせる帯として一般的なのは「半幅帯」です。

半幅帯の文庫結び

半幅帯は、浴衣以外にもウールなどの普段着や羽織の下に締める帯としても使われています。絹の博多織が有名ですが、紬織の物やウールといったものもあります。化繊もありますが、とても滑る素材のものは締めにくいので注意しましょう。幅は15~16cm、長さ3.4~3.6m位ですが、市販品の物で幅17cm、長さ4.3mという帯もあります。

半幅帯・貝の口

半幅帯以外では、絞りや縮緬、紬などを用いた兵児帯(へこおび)があります。柔らかく、蝶々結びのように簡単に結ぶことできます。昔は、子供や男性用の帯とされていましたが、最近では女性も締めている姿が増えてきているようです。兵児帯の幅は大幅物68cm位、長さ3.8m位です。

男性が浴衣に合わせる帯は、角帯や兵児帯です。角帯は半幅帯より狭く出来上がり幅は8.4cm~9.5cmで、長さは4~4.2mです。博多織や綴織が有名で、デザイン柄を織った紋織や紬があり、その形は袋状になったものや、単帯、二つ折りになっているものがあります。

角帯・半幅帯・兵児帯を並べるとこんな感じになります。

半幅帯の仕立ては、袋状のものや単帯の裁ち切り端をかがったり、くけたり、三つ折りにしたりします。また、きものの古着で作ったり、ご夫婦で、袋帯を半幅帯と角帯にしたりと、布さえあればいろんなアイデアは広がります。

2023年6月30日 | カテゴリー : | 投稿者 : 和裁屋

こんな浴衣もできます

・片身替え浴衣

とある方から、浴衣の仕立て依頼が来ました。一枚は綿絽の浴衣で出来上がっているもので、もう一枚は普通の綿の反物の状態です。この二枚の浴衣を交互にして仕立てて欲しいとのことでした。

右身頃に紺地、左身頃には綿絽の生地で、袖布は身頃と交互になるようにしました。

衽は身頃と同じ生地で、衿は反対の生地を使い

背で布地を入れ替えてあります。

広衿を希望されましたので、裏衿は新モスを使用しています。

素材が大きく違う物は、伸縮率が違いますので出来かねますが、おなじ素材であればこの様な片身替えや腰から下で変化させるのもありですね。お客様とよく相談して、デザインを決めます。

・ネットで購入した綿の生地で

綿生地の製造元でもネット通販されて、比較的安く生地の切り売りをされているようですね。普通の和服の反物の幅は37cm位、大幅物は75cmなど、幅が分かれば、布の長さが分かりますので、無駄がなく仕立てることができます。下の写真も、男物で、縞の合わせ方なども打ち合わせて作りました。

他には変わり種で、ひいきにしているプロ野球の手ぬぐいで作ったという、仕立て屋さんもいます。布生地さえあれば、作ることができます。

浴衣について 寄り道ばなし

・浴衣は縮みます

着ていると裾が上がってくるので少々長めにして自分用に浴衣を仕立て、一度洗濯したら2cmほど縮み、さらに洗濯したらすね毛が見えてしまうほど縮んでしまいました。

また、毎年のお祭りに着たいと、男性用の浴衣を仕立てました。5年後位にその方から身丈が短くなってしまったと連絡が入り、測ってみると10cmほど縮んでいました。仕立てる際に15cmほど腰あたりの「揚げ」とか「内揚げ」といわれる部分に、縫い代を15cmほど入れ、衽や衿などにも身頃の揚げを伸ばした時に、全体が長くできる縫い代を入れておいたので、身丈を直すことができました。

縮むのを防ぐために「水通し」をしたことがありました。「水通し」とか「色止め」とは藍染めなどの染料が衣類や素肌に付かないよう、ある程度落とす作業のことですが、縮むのを防ぐにはあまり効果がなく、やっぱり綿の物は洗濯をすれば縮んでしまいます。

・男物着物の腰揚げの意味

女性はお端折りがありますが、男性の場合、対丈で着ますので仕立てる際にはできる限り腰あたりに縫い代を入れておきます。生地が縮むからという理由の他に、染め直しなどをして女物に作り替えることができる布地の長さで裁断を行うという意味もあります。

・紺色しかなかった浴衣

昔々は浴衣は藍染めで、紺色の柄のみだったようです。私が和裁を習い始めた40年前は、紺地(藍染め)に赤の花柄といった浴衣が多く、布地は「真岡」で厚くて糊気が効いていて堅く、初心者の私は針がすぐ曲がり、手が真っ青になった思い出があります。運針の力を付けるためにはとてもよい素材でした。縫い糸は綿の「太口」で色は白・赤・紺・黒くらいしかなかった様な気がします。

現在では化学染料のプリントでいろんな色が使われ、生地の素材も薄くて柔らかい物が多く、縫い糸には化繊を使っています。