ブログ:和裁屋日記
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帯について⑥(袋帯購入時の注意点など)
袋帯を購入される際に、一番気になるのが、きものとの柄や色目でしょうか。その次に注意したいのが、サイズです。締められるのかどうか、極端に短いものもありますので、店員さんに確認、または実際に締めてみましょう。
前回、袋帯の寸法より計算した出来上がりの長さは以下の通りになります。
胴回り80cm以下・・・4m10cm以下
胴回り85cm・・・・・・4m20cm位を目安
胴回り90cm・・・・・・4m30cm位を目安
胴回り95cm・・・・・・4m40cm位を目安
胴回り100cm・・・・・・4m50cm位を目安
(上記、絞め方によっては+-20cm位。ポイント柄の場合はその他細かい寸法に注意)
そして一番やっかいなのは、表と裏のつりあいです。袋帯のほとんどは、表生地と裏生地が縫い合わせてあります。帯を広げてみて、畳んであった折り山に注意してみてください。手で触って妙にボコボコしているものは、修正可能なのか、直してもらえるのか、店員さんに聞いてみるのがよいでしょう。
私たち仕立屋では、仕事の依頼があると、長さを測り、お客様の体型から、全通柄、六通柄・ポイント柄などで、およそ締めることができるかを判断します。傷や汚れがないか検品をし、表と裏のつりあいも確認します。この時点で締められないもの、傷・汚れがあるもの、つりあいの悪いものは、呉服店で確認をしていただいたり、直接持ってこられたお客様に対しては説明をさせていただいています。その後、布生地を整えるために、アイロンで地直しを行います。地直しは袋帯に限らず、仕立ての最中や、その後にも生地の縮みを防ぐために行います。しかし、耳端縫いされている袋帯は、表と裏の素材や織り方によって伸縮率が極端に違い、どちらかがとても縮んでしまうもの、例えば表生地が縮んでしまう縮緬、裏生地がほとんど縮まない紬といった組み合わせは、つりあいが狂ってしまう恐れがあるので極力アイロンを当てないようにします。表裏耳端縫いをしてある状態で販売されている以上、こういった問題は起こってしまいます。また、織り方や織り糸の種類によっては撥水加工を施して縮んでしまうものもあります。つりあいの悪さを修正するのには、端縫いを解き、地直しをして端縫いをしなおす方法しかありませんが、本袋帯の場合は、縫い目がないので修正はできません。
私の経験ですが、以前、呉服店より表生地と裏生地を縫い合わせるところから仕立てる袋帯の依頼がありました。通常の温度のアイロンで生地の地直しをし、両端を縫い合わせ、帯芯を入れ仕立てをしました。その後、呉服店がお客様の要望で仕立て上がった帯に撥水加工を施したため、表生地が縮んでしまい裏地がゆるんでしまいました。修正しましたが、それ以来、端縫いから仕立てる袋帯の地直しは、当て布に霧吹きを吹いて、スチームアイロンで、ゆっくりじっくり時間をかけて縮めます。どのくらい縮むのかと1m間隔に糸標を付けて測ってみたら、3cm程縮んでしまったものもありました。全ての生地が縮むわけではありませんが、表と裏生地の組み合わせによって差が生じます。帯類に限ったことではありませんが、地直しは重要な作業です。
袋帯の直し物について
長年締められている袋帯で、表生地と裏生地の素材が違うことや帯芯が縮んで、波打つほどつりあいが悪くなってしまうケースがあります。そのような帯は端縫いを解き、それぞれしっかりとアイロンで地直しをし整えてから、仕立て直しすることができます。
丈が短い場合
手の長さが足りない場合、少しならば手先の柄の境目で継ぎ足すことが出来ます。とても長さが足りない場合、特にポイント柄の帯はお太鼓の柄と胴の柄(前柄)の間の垂境でも継ぎ足しすることができます。
帯について⑤(袋帯はサイズがあります)
袋帯もきものを止めるベルトのようなものです。4m位の布を体に縛って巻き付けます。各部分の寸法には、どのような体型の方が締められても変わらない寸法と、体型によって変化する寸法があります。
上の図のように、変わらない寸法は、垂先からお太鼓中心までの距離で133cm位です。体型によって変化する寸法は、お太鼓柄中心から、胴の柄中心までの距離です。この距離は、お腹の中心に、胴の柄中心が来るようにした場合の長さで、昔は90~95cm位でしたが、近年、ふくよかな方も結構いらっしゃるので、現在の袋帯は1m前後のものが多いようです。この距離の計算式は、胴回り/2+53~55cmを目安にします。胴回りとは、きものを着る時、体型のくぼみを補正し寸胴(ドラム缶体型)にして着ますので、体型で一番太い箇所になります。その他、お太鼓柄中心から45~50cmのところを垂境とし、そこから手先までの距離も体型に合わせます。その長さは、胴回り×2+75~80cmを目安にしています。連続した柄の全通帯や六通帯は、ある程度融通が効きますが、ポイント柄のもので、短めのものはシビアになってきます。(※あくまでも目安の計算式です。実際に締めていただいて測ることを心がけています。)
ある程度長い分には畳み込めばよいのですが、極端に短い場合には、足し布をして長くする必要があります。(後日説明をします)
帯について④(袋帯の手先・垂先・帯芯について)
・織り留めの出し方
袋帯の垂先・手先には、太い線が織られていて、私たちは、「織り留め」とか「織り出し」「かいきり線」と言っています。
呉服店または関西・関東によっても垂先の出来上がりが違います。関西圏あたりでは、「織り留め」を出し、中部地方から東の関東圏あたりは「織り留め」を隠します。
関西圏の垂先
全国でチェーン展開する関東の大手呉服店では、統一された仕立て方により、関西圏でも「織り留め」を隠したため、その仕立て方が全国に広がってしまったと聞きます。
・手先・垂先の仕立て方
手先・垂先を表からスカラップかがり(束かがり)などでかがる方法、
拡大写真
出来上がり折り山のすぐ際の縫い代を裏から縫い合わせる方法、
出来上がり折り山より数センチ深く縫う「比翼仕立て」
袋帯比翼仕立て
または、比翼仕立てで数センチ深く千鳥かがりをする方法などあります。
千鳥かがり
拡大写真
また、比翼仕立ての場合、内側に呉服店や撥水加工のタグなどを付ける場合もあります。
・帯芯について
帯芯は、袋帯や名古屋帯などに入れ、呉服店によって芯の堅さに特徴があるようです。帯芯の種類は、千差万別で新モスのように薄いものから、帆布のような厚手もの、縦糸に絹、横糸に綿の糸で織ってあるもの、100%絹のもの、毛織芯、起毛芯、夏帯の絽など透ける帯に使用されるカラー芯や軽涼芯などなどあります。袋帯にはどちらかというと、柔らかめ・薄手のものを使うことが多いです。
大谷翔平選手寄贈のグローブ
和服とは、全然関係ありませんが、大谷翔平選手寄贈のグローブが1月9日まで豊橋市市役所に展示されてています!
東日新聞によりますと、
豊橋市教育委員会は26日、米大リーグ・ドジャースに移籍した大谷翔平選手からグラブ159個が届いたと発表した。このうちの3個を27日から市役所本庁舎で展示する。大谷選手は、全国の小学校にグラブを3個ずつ寄贈している。市教委によると、グラブは25日に到着。「野球しようぜ」と書かれた写真付きのメッセージカードも添えられていた。市内52校と、くすのき特別支援学校に各3個(右利き2個、左利き1個)を配布する。3学期が始まる来年1月9日以降、各校で児童が使えるようにする。注目度の高いグラブを市民にも見てもらおうと、市教委は学校の冬休み期間を利用し、1校分の3個とメッセージカ―ドを市役所東館1階の名産品コーナーに、年末年始の休み(29日~1月3日)を除き1月9日まで展示する。種井直樹教育部長は「大谷選手の気持ちをくんで、子どもたちが各校で使えるようにしたい」と話した。
と、報道しています。
お近くの方は、是非見に来て下さい!
帯について③(袋帯について)
今回は、袋帯についてです。元々の原型は丸帯で、腹合わせ帯(鯨帯・中合わせ帯・昼夜帯)となり、時を経て袋帯となりました。締め方は、前(胴)は幅を二つ折りにして二重巻き、お太鼓結びでは二重太鼓で、他には振袖などに変わり結びができます。
売られている多くの袋帯は表裏の耳端縫いをしてあり、幅は30~32cm、仕立て上がりの長さは4.2~4.5m位でしょうか。昔、袋帯の長さは1丈1尺(=4.2m)と言っていましたが、近年、振袖には変わり結びをするためや、ふくよかな方にも対応するため、少々長くなり、出来上がり4.5m位の帯も珍しくはありません。
◆柄の種類
袋帯の柄位置によって大きく3種類に分かれます。※仕立て前の状態です。
・全通柄(ぜんつうがら)
端から端まで帯全体に柄があります。
・六通柄(ろくつうがら)
お太鼓から胴に巻く部分と、手先に柄があり、約6割の部分に柄があるもの。
・ポイント柄
お太鼓と胴に特徴的な柄があるもの。
◆端の縫い方
売られている袋帯は、表生地と裏生地の耳端が合わせて縫ってあるものがほとんどです。その縫い方は3種類で、1つ目は裏側から縫い合わせてあるもの。
袋帯 端縫い
2つ目は出来上がりをジグザグに縫ってあるもの。
袋帯 ジグザグミシン
3つ目は数が少ないですが、縫い目のない本袋帯です。
紗 本袋帯(縫い目無し)
1つ目と2つ目の縫い方で、どれが正式ですか?と質問がありましたが、私の知る限りどれが正式ということはありません。一つ言えることはジグザグミシンの場合、お稽古とか、頻繁に使われる帯の場合、表に糸が出ていますのでお太鼓やお腹に巻くあたりとか、よく触る同じ箇所がすれて糸が弱くなりほころぶ可能性はあります。
袋帯の擦れ