着物の寸法について01

以前、聞いた和裁士(お師匠さん)の話です。

昔、呉服店に伺ったところ、ちょうど、着物を購入されたお客さんがいました。呉服店店主とその着物について話をしている中で、「並でいいですか?」と店主に話しているのを聞いたお客さんは、「並では困る。特上にしてくれ!」と言われました。

「並」と言っているのは、寸法のことでお客さんは、仕立てのランク(上手・下手)のことを勘違いして聞いたという笑い話ですが、私が仕立ての勉強をしはじめた頃では、女物並寸法と言えば、

  • 身丈    4尺(151.5cm)
  • 裄      1尺6寸5分(62.5cm)
  • 袖幅     8寸5分(32.2cm)
  • 肩幅   8寸(30.3cm)
  • 前幅   6寸(22.7cm)
  • 後幅   7寸5分(28.4cm)
  • 妻下   2尺(75.8cm)

という寸法が並寸法として残っていました。この寸法の中で前幅・後幅は地方色があり、関西圏は前幅6寸・後幅8寸、関東圏は6寸・7寸5分でした。徳川家康は三河の出身で、当時三河地方は大変貧しく、倹約していたことから、寸法も狭めでした。その徳川家康が、多くの家臣達を引き連れ江戸に行ったため、着物の標準寸法も狭く作ることが名残として残ったそうです。

また、私が経験したことは、中学校へ浴衣作りを教えに行った時のこと。呉服屋さんも参加していて、それぞれの生徒の寸法を決めていたときに呉服屋さんは、長身の生徒の妻下寸法を「2尺の並でいいんじゃない」と言っていたの聞き、違和感と疑問を感じたことを思い出します。
現在では、体型に合わせた寸法を基に、好みも加味され寸法が決められています。振袖などは、お端折りを少々多く出して若く見せたいので身丈を長くとか、農作業をしていて日焼けしていて手が大きいので、手が少し隠れる様に裄を長くするとか、着る方の好みを取り入れて仕立てるようにしています。