寸法直しについて④


譲ってもらったきものや、古着屋さんやネットから購入したきものなど、寸法直しの依頼が多くなっています。今回から、寸法直しについて説明します。第四回は袖丈や繰越直しなどについてです。

○その他の寸法直し


・袖丈直し・丸み直し
袖底(袖下)を縫い直します。縫い代があるか?色やけがないかなどがポイントです。
男物は女物と違って、振りや身八ッ口がありません。男物きものの場合は、袖付け=袖丈―詰め人形(10cm)なので、袖丈によってある程度袖付け寸法が決められていますので、脇を縫い直す必要がある場合があります。男物羽織の場合は袖丈=袖付けなので、短くする場合は、襠に縫い代があるか確認が必要です。短くするのも、長くするのも襠を縫い直さなければなりません。


・袖付け直し
女物の通常の袖付けが21~23cmですが、胸高に帯を締める振袖の袖付けは、17cmと短いものがあります。ふくよかな肩が着ると、袖付け下から二の腕が見えてしまうということがあります。その場合、袖付けや身八ッ口を長く直すことができます。

・繰越直し
繰越を多く(深く)する場合、簡単に直す方法は衿を取って、背での縫い代を深くする方法があります。逆に繰越を少なく(浅く)する場合は、衿肩明きの位置を前身頃側へ移動させなければならないので、後身頃の揚げを伸ばして、前身頃の揚げを縫い込みます。衽も腰から上は縫い直しをします。

繰越直し

・ほころび直し
寸法直しではありませんが、布が裂けたり、縫い糸が切れてしまったところを補修するほころび直しの多い箇所は、袖付けです。やはり、力が加わるところですね。袖付けは、しっかりと糸で留めているので、布が裂けます。裂けて穴が開いた箇所は、裏側から補強の布を当てて、縫い直しますが、同じ箇所なので、少々弱くなってしまいます。きものを仕事着にしている方は、袖付けは裂けやすいことを知っているので、日頃から注意をしていて、友人に袖の振りを引っ張られてひどく激怒していました。
背縫いや脇縫い、衽付けを「立て縫い」と言いますが、腰やお尻あたりでは時間が経つと縫い糸が弱り、切れてしまう場合があります。

背縫いのほころび

その時点で、あちらこちらの糸が切れてもおかしくない状態なので、仕立て直しをおすすめします。糸が先に切れる場合は、布地が裂けて穴が開くことはあまりありませんが、布地の織り糸が一方向に寄ってしまい薄くなります。

織り糸の寄り
寄りの修正

この場合は、針先で織り糸の寄りを戻し、必要であれば布地等で補強をして縫い合わせます。


・袷衣きものの裏地取替(胴裏取替・八掛取替)
時間が経って、黄変した胴裏(上裏)や八掛、その両方を取り替えることができます。
また、八掛の裾が擦れて穴が開いた場合は、上下を変えることができます。何度か着用すると腰あたりは幅が伸び、身丈は湿気によって縮むものがほとんどです。裏地のみの交換は、初めて仕立て上がった時のようには綺麗になりにくいというのが本音です。

裏地取り替え(前)
裏地取り替え(後)

身丈直し・裄直し・身幅直し・同裏取替など、複数の寸法直しを行う場合、解き洗い張りをして仕立て直しをした方が、きれいに安くできる場合がありますので、ご相談ください。

昔の仕立て屋さんは、蝋チャコを使う方もいて、裄直しでも紹介した表からの色チャコや、下の写真の様な衿付け(流れ)の表からのチャコもやっかいです。洗い張りで薄くなる場合もありますが、浸み込んでしまっているケースもあります。

衿付け(流れ)の表からのチャコ

一番やっかいなのは、カビです。染み抜き屋さんに聞いても、なかなか取れないそうです。乾燥して天気の良い日に吊して陰干しをして、着物にシミがないか、カビなど発生していないか、確認をしましょう。

大島のカビ

お相撲さんのきもの
7月は名古屋場所が開かれます。今年も続々と新幹線でお相撲さんが名古屋駅に到着しました。名古屋場所の最中は市内の地下鉄でも、浴衣姿のお相撲さんを見かけ、鬢付け油のほのかなにおいが漂っていました。


 お相撲さんの和服の反物の幅は、私たちが着ているきものの幅と同寸です。身長も、裄も身幅もビッグサイズですね。なので、裄直しで紹介した「割布」を、袖付け側、脇に入れて、幅を広くします。通常の衽の布幅は半幅程度ですが、お相撲さんは、布の一幅を使います。入門したては、一反しか与えられないので、ちんちくりんの短い浴衣を着ていますが、出世して後援会などのスポンサーが付くと、複数の反物を使うことができますので、体型にあった浴衣やきものを着ることができるようになります。私が、和裁の修行中にお相撲さんの浴衣を仕立てることがあり、汗かきなのでハンカチを入れるようにポケットを付けたこととや、縫って最後に仕上げをして畳みますが、仕上げ台(約90cm×180cm)に乗らなかったことを思い出します。
昇進などのインタビューではそんな「割布」が入っている和服姿を見ることができますよ。

寸法直しについて②

譲ってもらったきものや、古着屋さんやネットから購入したきものなど、寸法直しの依頼が多くなっています。今回から、寸法直しについて説明します。第二回は身幅直しについてです。

○身幅直し

身幅直し

身幅直しも広くするのがほとんどです。身幅算出の基本は、立妻が脇線に揃う着方で、後幅×2+前幅+合妻幅=ヒップ寸法(一番太い寸法)+ゆるみ(4cm~)を基準とします。気を付けるポイントは、以下のようです。

・縫い代があるのか?
裄直しと同様、広くする場合、単衣は裏に返せば縫い代の量が分かりますが、袷衣の場合は、指で触って縫い代の量を測ります。確実なのは裏袖付けの縫い目を解きひっくり返して、表脇縫い代、胴裏生地の縫い代、八掛の縫い代の状態(切り込みが入ってないかどうかなど)確認をし、直せるのかどうかを判断します


・絵羽物(柄合わせがある物)では
訪問着や付下げ、留袖などの絵羽物(柄合わせがある物)は、生地の端まで刺繍や柄が染められていない場合がほとんどです。縫い代があっても身幅が広げられない場合もあります。脇のみで直す場合、柄一杯となり柄は崩れます。


・色の変色
裄直しと同様に、時間が経っている物は色焼けなど変色があります。ひどく色焼けしている場合は、直すのを中止するか、そのまま直すか、色掛け(色の修正)をしてから直すのか一度お客様と相談をします。

・前幅、後幅のバランス
身幅直しは基本、脇で直します。腰骨の位置が脇線になり、お腹が大きければ前幅を広げ、お尻が大きければ後幅を広げます。反物から仕立てる場合、色無地や小紋など前身頃と後身頃の脇縫い代は同寸にしますが、出来上がった物を直すとなると、脇縫いだけで思うような前幅・後幅にならないこともあります。脇縫い代の深さの差が極端に多い場合、生地がねじれてシワが出てしまう場合があります。大幅に直さなければならない場合は、脇のみで直さず、衿・衽も解いて直します。

寸法直しについて①


譲ってもらったきものや、古着屋さんやネットから購入したきものなど、寸法直しの依頼が多くなっています。今回から、寸法直しについて説明します。第一回は裄直しについてです。

○裄直し

寸法直しで一番多いのは「裄直し」です。裄を長くするというのがほとんどです。和服の裄は、身長×0.4+2cmを基準とします。お母様のきものであったり、ネットや古着屋さんで購入されたものだったり、きもの以外にもコートであったり、いろいろあります。
裄直しで注意するポイントはいくつかあります。

・縫い代があるのか?
 長くする場合、単衣は裏に返せば縫い代の量が分かりますが、袷衣の場合は、指で触って縫い代の量を測り、およその長さを割り出します。一番確実なのは袖付けの縫い目を解き、表生地、裏生地の縫い代の状態(切り込みが入ってないかどうかなど)確認をし、直せるのかどうかを判断します。
また、振袖や訪問着など袖着けに柄がある場合は、布端まで柄があるのか、袖幅と肩幅で直した場合、柄がずれるので、袖を作り直した方がよいのかなど、確認する必要があります。

・肩幅と袖幅のバランス
 肩幅だけとか、袖幅だけ直すという場合がありますが、裄寸法は裄=袖幅+肩幅で、割り振りバランスは、袖幅≧肩幅です。袖幅と肩幅が同寸、あるいは袖幅の方を数センチ広くします。例えば袖幅が異様に細かったりしないように気を付けます。

・変色の有無
紫や濃い緑色のきものは、時間が経つと色焼け(薄く変色)してしまいます。寸法を長くしたり広げたりする場合は、変色の程度を確認します。また、表側に色チャコを使った標付けがされている場合もあります。

振り側に表から色チャコ

ひどく色焼けしている場合や色チャコなどの具合を見て、直すのを中止するか、そのまま直すか、色掛け(色の修正)やシミ抜きをしてから直すのか一度お客様と相談をします。

・長襦袢は?
浴衣以外のきものの下には長襦袢を着用します。私どもでは、
きものの裄寸法―1.2cm=長襦袢の裄寸法
きものの袖幅寸法―0.8cm=長襦袢の袖幅寸法
きものの肩幅寸法―0.4cm=長襦袢の肩幅寸法
を基準にします。(きものの生地が滑りが悪い生地で、長襦袢の生地が大しぼ縮緬など、とても伸びたりする場合、袖幅を上記以上に控えることがあります)

袖の丸みは着物と同寸、または小さな丸みでは丸みを付けない角袖の場合もあります。

長襦袢控え寸法

長襦袢の裄が着物の裄より長い場合、袖口から長襦袢が出てしまいます。また、トータルの裄が合っていても極端に長襦袢の肩幅が狭く、袖幅が広い場合、袖振りから長襦袢が出てしまいます。裄直しをする場合、基準となるきものの袖幅・肩幅寸法が必要です。体型が変わっても、裄寸法はほとんど変わりません。和服を着慣れている方はいつもの裄寸法が決まっていますが、初心者の方はご自分の寸法をしっかりと決めて、その寸法を基本の寸法にして、これから着られる長襦袢や着物、羽織などの寸法を揃えた方がよいでしょう。

・布幅いっぱい以上の裄直し
布幅一杯以上の裄にする場合、袖に共布で割り布を入れて長くする方法があります。
以前、踊りをされている方の出来上がり袷衣きものの裄直しをしたことがあります。身長の割に長い裄で、踊りで袖口を掴みたいとのことです。裄が72cm、袖幅が約38cmです。反物の幅は約36cmで縫い代が必要なので布幅いっぱいで縫ってもできません。提案させていただいたのが、掛衿を使う方法です。
掛衿は本衿の上に縫い付けてある布で2枚重ねになっています。今回、掛衿の長さが袖丈以上だったので、衿を解き掛衿を使って袖付け側(振り側)に割布として接ぎ足しました。

袖に割布入れ(表側)

裏袖は袖口側に裏地を継ぎ足し、袖を作り直し、裄を直しました。本衿は掛衿の長さで摘み、同じような厚みの布を裏側で重ねます。

袖に割布入れ(裏側)

それ以上長くする裄直しでは、肩幅にも布を継いで長くする方法もあります。いずれも表生地は共布がないとできません。

袖と肩に割布入れ(表側)

テレビなどできものを着られている方の映像を見る時に、ついつい見てしまうのがきものの掛衿など衿元、半えりの出具合、袖口、振りなどです。袖口や振りから長襦袢が出ていると「寸法が合っていないんだな」と、残念な気持ちになってしまいますね。逆に言えば、そのあたりを気を付ければ着姿はきれいになると思います。

寸法直しが難しい事例(脇縫い代の切り込み)

以前、単衣着物の身幅を広くする寸法直しの依頼がありました。脇縫い代は、身幅を広げられる幅はありましたが、裾の三つ折りぐけを解いてみると・・・・・(写真は、絽の生地で縫ってみました)

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上の写真の様に背や脇、衽の縫い代が切り落とされていました。この状態では裾まで身幅が広がりません(T_T)
切り落としてある所に沿って、裾全部を切り落とす事になります。女物ならばお端折りがあり、多少、身丈が短くなっても構わなければ良いのですが、男物の場合では、対丈(お端折り無し)で着ますので身丈が短くなると、ちょっとスネが見えてしまったり・・都合が悪くなります。身丈直しとなると、内揚げ(腰あたりの縫い込み)があれば、短くなった寸法を内揚げから出し、元の身丈にできますが、当然、衽と衿を外して直さなければなりませんので、結構手間が掛かってしまいます。

 

裾の仕立て方には様々な方法があります。この様に、重なり部分を切り落としてしまうのは、下の写真の赤枠で囲ってある部分の、裾での脇縫い代の布の厚みを解消し、裾の三つ折りの幅を真っ直ぐ、すっきりと見せるためです。

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私は、仕立て直しや寸法直しができるという、和服の最大のメリットが失われてしまいますので、この様な、縫い代を切ってしまう仕立て方は好きではありません。私達は下の写真のように、最低限の切り込みで(縫い目隠しなどの仕立ては、少々深く切り込みを入れますが、切り落としたりはしません。)裾を縫っています。布の厚みは、しっかりと鏝で押さえ込んで仕立てています。

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様々な洗い張り品や、直し物の仕事が多くなってきましたが、縫い代の重なっている所を全部切り落としてある物や、鉛筆で標を付けている物、アイロンテープ(裾上げテープ)で縫い代を仮留めしてある物、芯を糊で接着してある物など、私では、ちょっと考えられないような仕立て方をしている着物などがあります。

後々、娘さんが着られるようになど「仕立て直す・寸法を直すことを前提とする」ということが大切だと修業時代、師匠から教えていただきました。「もったいない」という日本文化の中で、リサイクル・リメイク・リフォームができるからこそ、和服は受け継がれてゆくと思います。

 

袖丈?裄(ゆき)? 正確な裄寸法の測り方

「袖丈が長いので直していただけますか?」と寸法直しのお電話をいただくことがあります。

和服(きもの・長襦袢・羽織る物:羽織やコートなど)で一番シビアに寸法の差が現れるのは、裄寸法(袖幅・肩幅)です。女物のきものの身丈はお端折りがあるので、多少調節できるなど、融通が効く寸法はありますが、裄寸法(袖幅・肩幅)は数ミリ単位で寸法を操作して、袖口や振りから長襦袢が出ないようにするなど、和服の仕立てでは大変重要な寸法です。

 

お客様のお話をよく聞いてみると、和裁の寸法で言う「裄:ゆき」が長いとのことです。洋裁の寸法名称(測る場所)と和裁の寸法名称が違っているので、そんなことがよくあります。

洋裁の寸法名称

洋裁の寸法名称

上の図で、袖丈というようにかかれているところは、「裄丈」というような名称の場合もあるようですね。

和裁は、肩幅と袖幅を足した寸法が「裄」となります。

和裁の寸法名称

和裁の寸法名称

裄寸法の測り方によっては、違ってしまします。正確な寸法の測り方は、下の図のように、袖口・振り・身八ツ口をぴったり揃え、衿は、肩山の折山通りにして衿を繰り越し分抜き、身頃を平らにします。袖も袖山の折通りにして平らに置きます。

裄の測り方

裄の測り方

測るときには、袖山・肩山を手前に(自分側)に置くと測りやすいです。

きものの裄の測り方

きものの裄の測り方

 

動画を作成しました。ご覧ください。

 

 

 

たまに、下の図のように袖山の袖幅と、振りでの袖幅が違っている場合があります。この様な袖付けの付け方を「扇付け」と言われています。

袖付けの「扇付け」

袖付けの「扇付け」

注意点

  • 注意しなければならないのは、長襦袢の上に着物を着ますので、着物の裄直しをする場合は、長襦袢の袖幅や肩幅、裄の寸法がどのようになっているのか、確認する必要があります。いろいろな仕立て屋さんや呉服屋さんで、長襦袢の控え寸法(着物より控える寸法)は異なりますが、私どもは、裄は着物-1.2cm、袖幅は着物-0.8cm、肩幅は着物-0.4cmで仕立てます。また、長襦袢の生地幅が非常に伸びる場合(着用するときに引っ張りますので)や、単衣の紬などの生地で、長襦袢が着物にくっついてしまう場合、袖口明きが大きい男物の場合など、長襦袢の裄を-2cm程度にする場合があります。

 

  • 逆に着物の上に着るコートや羽織は、着物の裄(袖幅・肩幅)を広くします。アンサンブルは同時に仕立てるので、着物と羽織の寸法は整合性がありますが、オークションで購入された着物や長襦袢、羽織などは寸法がバラバラなので、注意する必要があります。

 

  • 羽織(コート)→着物→長襦袢 の順序で裄(袖幅・肩幅)も短くしてゆきます。幅の関係が良くないと、振りから長襦袢が出てしまったりしてしまいます。長襦袢はポルトガル語の「ジュバン」が語源で下着と言う意味です。長襦袢が出てしまうと「みっともない」と言われかねません。ちょっと意味が違いますが・・・・「人の振り見て、我が振り直せ」とも言いますので・・・・(^_^;)ちょっと違う意味ですが・・・・・・

 

 

 

七五三の季節となりました。

現在、七五三の仕事が多くなってきています。加えて、振袖の仕事もちらほら入ってきています。

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◆お母さんの着物から(本断ち総絞りの着物)

7歳の娘さんを連れて、お越しくださいました。お母さんが7歳の時に着た総絞りの着物を持って来られ、お話を伺うと「私が7歳の時、とても身長が高く、長く仕立ててあり、小柄な娘の身長に合わせて腰揚げをすると、モコモコになってしまいます。重さもあり、どうしたらよいのでしょうか?」とのこと。着物を見てみると、仕立て方は四ッ身ではなく、大人用(本断ち)の仕立て方で、多分「十三詣り」で仕立て直しをして着られるように、内揚げ(身頃に摘まんである縫い代)や衽、衿にも縫い代が縫い込んでありました。

この状態で娘さんの身長に合わせ、肩腰揚げや袖揚げをすると、その摘まむ量が多く二重揚げでモコモコになってしまいます。絞りなので尚更です。「寸法直しでなんとかなりませんか?」とも提案されましたが、身丈・裄・身幅・袖丈など、ほとんどバラバラにして直すことになります。値段もほとんど仕立て直しと変わらない程になってしまいますので、全て解き、地直しをして仕立て直しをすることとなりました。今後、この着物は着ないとのことなので、軽くするためにも大四ッ身で作らせていただきました。

7歳の娘さんの身長を伺い、持ってこられた着物を家内が着せて、どのくらい長いのかを測り、娘さんの丁度よい腰揚げ・肩揚げ寸法で仕立てることができました。

着物の解き・地直し・仕立て・肩腰揚げ・紐作り付け・・・約4万円程度(生地等によって変わります)

 

◆お母さんの着物から(小紋の着物)

お祖母様、娘さん、お孫さんの3名で、お越しくださいました。娘さんが7歳の時に着た小紋の着物、長襦袢を持って、お孫さんが着られるのかどうか相談に来られました。約30年前に着たままで、小じわなど付いていました。私達が反物から仕立てる場合、着丈(着る長さ)に38cm位足して身丈(仕立てる長さ:腰揚げ前の長さ)を決めますが、お持ちいただいた着物は少々腰揚げの量が少ないものの(20数センチ)、腰揚げ位置のバランスを見て仕立てることができます。
30年前のそのままなので、一度生き洗いをしてリフレッシュしてから、揚げを行いました。

7歳のお祝いは「帯解きの儀」と言われ、肩揚げはしますが、紐付きの着物を着ず、大人の様にお端折りをして着物を着始めるお祝いの儀式です。しかし、現在では、紐を付け、腰揚げをする方がほとんどです。考えてみても、まだ7歳なので嬉しくて、跳んだり跳ねたりする頃で、着物の裾を踏んだらお端折りが出てしまい、着崩れしてしまいますよね~

今回も家内が着付けをして、正確な肩腰揚げ寸法を測り、着物と長襦袢の肩腰揚げと紐付けをさせていただきました。

※揚げの糸を取ってみると・・・・・
私達はチャコは一切使わず揚げをしますが、お持ちいただいた着物には腰揚げや肩揚げの摘まむ線を、青いチャコで標を付けて縫ってありました。蝋チャコと呼ばれるもので、繊維に浸み込んでしまいます。揚げの糸を抜き揚げ直しをすると結構目立ちます。生き洗いでは取れず、染み抜きが必要となってしまいました。

着物の生き洗い・チャコ染み抜き・肩腰揚げ・紐付け+長襦袢の肩腰揚げ・紐付け・・・約2万円程度(あくまで目安です)

 

◆3人娘の振袖

お祖母様、娘さん、お孫さん達で、お越しくださいました。娘さんが成人式に着た振袖を、お孫さん3名に着せたいとのこと。お孫さん3名は体型は同じですが、身長が少しずつ違います。「何とかなりませんか」とご相談しに来られました。家内が着付けをしたところ、体型が同じなので身幅はだいたいOKです。身丈もお端折りで何とかカバーできるほどで、大がかりな寸法直しは必要ないと判断しましたが、袖は、始めに成人式を迎える一番背の低い方が着ると、床に付いてしまったので、着物は袖丈直しをさせていただきました。

問題なのは長襦袢です。対丈で着るため一番背の低い方は裾を引きずってしまいました。身丈直しをしてしまうと一番背の高い方には、短くなってしまいますので、長襦袢の褄下あたりで、長い分を摘まんで腰揚げをしました。初めの方が着た後、腰揚げの糸を抜けば、その後の方が着られるようになっています。

着物の袖丈直し+長襦袢の袖丈直し・腰揚げ・・・1万5千円程度(あくまでも目安です)

後日談:お祖母様が後日、尋ねてこられ、私達の所に来られる前に、地元の呉服店に持って行ったところ、あれもこれも直さなければならないと、結構な値段を言われたそうです。呉服店の店員さんも着物をよく知っている方が、もういなくなってきていると感じました。

 

着物の長所は直せるところ

着物は、作り直せる衣類です。私の七五三の時に着た祝い着は、私の弟、従兄弟が着て、私の息子達が着ました。私の成人式の着物も、息子達が着ています。

七五三詣り

七五三詣り

私の家内は、従姉妹のお下がりの着物を長女・次女そして三女の私の家内が着ました。

七五三詣り

七五三詣り

日本の「衣の文化:和服」の「モノを大切にする文化」・「もったいない文化」は、まだまだ根付いています。

11月頃、神社に参拝すると、祝い着を着た子供で賑わっていますが、職業柄、既製品と誂えた着物と、ついつい比べてしまいます(^_^;)

 

 

 

 

 

浴衣身丈直し

3年前に仕立てた男物浴衣の身丈直しの仕事依頼がありました。

お客様にお話を聞いてみると、毎年この時期にお祭りで浴衣を着て、クリーニング店に出したところ身丈が縮んでしまったようです。身丈を測ってみると約10cm縮んでいました。私どもでは、男物浴衣の反物から仕立てる場合、反物の長さや身丈にもよりますが、男物は対丈で着るために身丈は重要な寸法なので、後々身丈を伸ばせるように身頃などに内揚げや縫い代を入れて裁断します。また、男物浴衣以外の男物では、女物に仕立て直しできるように、縫い代を入れておくともされています。

今回のように縮んでしまった場合でも、ある程度内揚げや縫い代があれば、身丈を直すことができます。

  • 身丈直しをする場合、始めに確認をするのが、身頃の内揚げの量です。
    男物きもの 内揚げ
    裏側から見ると
    男物縫い代02
    摘まんで縫ってあるの内揚げです。男物の場合、殆ど前身頃と後身頃の内揚げの量は一緒です。縫い目から摘まみ山まで測って2倍すると身頃を伸ばすことができる長さです。
  • 次に確認しなければならないのは、衽の上・衿の中に入っている衽縫い代の量です。
    男物縫い代03
    身頃を伸ばしても、衽が届かない!という場合もあり、それでも直す場合には、胸の布幅が狭くなってしまうので、胸元がはだけるといった着辛い原因となります。身頃の内揚げ分+縫い代があるか、確認をします。(縫い目を解き、確認する場合があります)
  •  そして、衿先の縫い代も確認します。
    男物縫い代04
    およそ、内揚げ分の半分+縫い代があるか、確認をします。妻下寸法はは身丈の半分から計算しますので、内揚げ分の半分を目安にしています。この縫い代がないと、衿先が腰に掛からないといった事が起きます。これも、着にくさに繋がりますね。(縫い目を解き、確認する場合があります)

 

以上が、男物浴衣や単衣物の身丈直しをする場合、チェックする主なポイントです。今回のような、男物浴衣の身丈直し代は、手縫いの場合8,000円(税別)・ミシン縫いでは7,000円(税別)程度です。

 

女物浴衣の場合は、身丈に対して反物の長さも短く、身頃も繰り越しつまみ程度しか摘まんで縫っていませんので身丈を伸ばすことは、あまりできません。

 

 

長襦袢の身幅直し

長襦袢の身幅直しの依頼がありました。

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「なんか、幅がせまくって・・・・きものの中ではだけてしまうんです~」と、長襦袢を3枚持ってこられたお客様がいました。

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2015年4月5日 | カテゴリー : 寸法直し | 投稿者 : 和裁屋