袖にまつわる慣用句
以前「都市伝説ならぬ幽霊の片袖伝説」という題名でブログにアップさせていただきましたが、辞典で「袖」を調べてみると、「袖」という字が入った慣用句が結構ありました。目にとまったものを幾つか紹介したいと思います。
辞典を見ていて感じたのは、「袖」という言葉で表現すると、直接的ではなく心情を奥ゆかしく表し、多彩です。特に涙にかかわることが多いように感じました。(小学館:大辞泉を参考にさせていただきました)
◆涙にかかわる袖
袖時雨・袖の雨・袖の浦(地名の場合もあり)・袖の氷・袖のしがらみ・袖の時雨・袖の雫・袖の露・袖の淵(ふち)・袖湊(そでのみなと)など
袖に時雨る
袖に時雨が降りかかる。袖に涙が落ちるたとえ。
袖に露置く
露がかかって袖が濡れる。また、涙で袖が濡れること
袖に湊(みなと)の騒ぐ
港に波が打ち寄せて騒ぐように、袖に涙がひどく流れること。
袖を絞る
涙で濡れた袖を絞る。ひどく涙を流すことを意味します。
◆あまり良くない場合に使う袖
袖移し
他人から見えないように自分の袖から他人の袖へ、こっそり渡すこと。内密に渡すこと。
袖の下
人目に付かないように袖の下から贈る物。内密に贈る物品や金銭。そでした・わいろ
袖にする
親しくしていた人を、ないがしろにする。冷淡にあしらう。
袖乞い
こじきをすること。また、こじき・ものもらい。
袖の梅
悪酔いや二日酔いの薬。
◆男女にまつわる袖
袖褄を引く
異性に言い寄ること。
袖の別れ
男女が互いに重ね合わせた袖を解き離して別れること
袖返す
袖を裏返しにする。こうして寝ると、夢に恋人が現れるという俗信があった。
片袖敷く
片袖を敷いて寝る。つまり、独り寝をすること。
◆その他
袖打ち合わす
かしこまって左右の袖を寄せ合わせる。相手に対する敬意を表す。(袖掻き合わすと同じ)
袖にすがる
袖にとりついて哀れみを請う。助けを求める。
袖振り合うも多生の縁
道で人と袖を触れ合うようなちょっとしたことでも、前世からの因縁によるものだ。(多生とは、何度も生まれ変わってくることを意味します。)
袖振る
別れを惜しんだりという意味と、好きな人に愛情を示したりするために袖を振るという意味。
袖を連ねる
大勢の人が連れたって行く。また、行動を共にするという意味。
袖を通す
衣服を着るという意味や、特にはじめてその衣服を着ることを意味します。
袖を引く
袖を引いて人を誘う。催促すること。また人の袖を引いてそっと注意することを意味します。
上記以外にも色々ありますが、「袖」を使って作文をしてみました。
若い頃、友人数人と起業し、何とか仕事を取る付けるために、新しいスーツに袖を通し、仲間と袖を連ね、袖打ち合わせ、袖にすがる思いで企業を回り、やっとの思いで大手企業との契約までこじつけた。数年間は順調だったが、不景気となり仕事が減ってきたある日、大手企業幹部から仕事を発注する代わりに袖の下を要求された。私は、従業員も数名抱えていたのでそれに従っていたが、仲間に発覚。次第に仲間からは袖にされ、さらに倒産をしてしまった。羽振りが良かった頃、袖褄を引いた女性達も、だんだんといなくなり、唯一だった彼女とも袖の別れとなり、袖を絞る毎日が続いた。やけ酒と袖の梅を飲む日々が続き、貯金も底を突き、今では袖乞いとなってしまった・・・・・
「袖」の慣用句は、ネガティブですね~ 何か、悲しいものがあります(T_T)
袖の他にも、「衿」や「裾」、建築物や建具にも使われている「褄」など調べてみるのも面白そうですね。