ブログ:和裁屋日記

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掛け衿の話(経験談)

以前のブログで「掛け衿と半衿の話」では、掛け衿について私達が日頃、この様に仕事をしていますという内容を載せましたが、今回は掛け衿(共衿)についての、経験談をちょっと載せてみます。地方や呉服店、和裁の修業先によっても違いますので、ご了承くださいね。今から十数年前の話ですが・・・・・・

夕方、当時仕事をしていた地元の呉服店から、翌日の朝7時頃、お店に来て欲しいとの連絡がありました。急なことでしたので困惑しましたが、掛け衿について、お客さんに説明をして欲しいとのこと。

内容をよく聞いてみると、

  • 付下げを購入したお客さんの掛け衿を二枚取って欲しいという要望が、呉服店に伝わっていなかったらしい。
  • しかし、もうすでに他の仕立屋で仕立て中であったため、付下げを解き、洗い張りに出して元の状態にしたとのこと。
  • 洗い張りが上がってきたので、その反物を持ってお客さん宅へ行き、説明をして欲しい。
  • お茶の先生で、着物に詳しく、早朝にしか都合が付かない。

と言った内容でした。正直、私は朝が苦手なのですが、承諾し、早朝、物差しなど和裁道具を持って呉服店に行き、商用車で店員の方と一緒にお客さん宅へと向かいました。
お客さん宅に着き、反物を広げたところ、幸いにも掛け衿と本衿(地衿)の柄がなく、無地でした。本衿と掛け衿がまだ切れていなく、衿衽の布丈が通常より長かったことなどを確認し、お客さんの寸法で衿丈を計算。本衿布の長さをぎりぎりで取り、残りの布丈を測ると約47cm位の掛け衿が二枚取れることが分かりました。

お客さんには、「掛け衿を二枚取ることは出来ますが、この長さは浴衣などの長さで、ちょっと短めです。本衿もぎりぎりなので、洗い張りなどをした場合、縮んで妻下の寸法が変わってしまうかもしれません。」などなど・・・・作り直したりする場合の縫い代のバランスなども説明しました。でも、お客さんは、気に入った柄で長く着たいので、掛け衿を二枚取って欲しいということでした。その後、その付下げを仕立てることとなり、掛け衿は別付け別納めで縫ったことを思い出します。

今思うと、私はずいぶんと若かった頃で・・・・・この様なことは初めての体験。どきどきしながら、とても緊張したことを思い出します。
そして、仕立てをする時にはスリーサイズから割り出した、決まった寸法で作るのではなく、着物をどんな使い方をするのかとか、着る方の要望をよく聞き、分かりやすく説明しないといけないなあ~と感じた日でした。

スナップについて

私達が使っているスナップを、紹介します。

下の写真で、左側4つの直径8mmのものは、主にコートで使用します。真ん中のものは、たまに着物でも使われています。右の2つは6mmで、着物や長襦袢に使っています。

和裁で使っているスナップ

お客様など指定があれば、布で包んである「包みスナップ」を使います。

包みスナップ

金属製のものは、時間が経つと錆が出て着物の衿裏や長襦袢の衿芯に浸みてしまう場合があるので、プラスチック製のスナップを使う場合もあります。

プラスチック製のスナップ

地方や呉服店などにもよりますが、私どもで付ける数は、背縫いを中心に1個・2個です。

1個の場合、背中心に付ける場合もありますが、下のイラストのように、ゴロゴロしないように、背縫い代を避けて付ける場合もあります。

スナップ1個の場合

2個の場合は、背縫いから4~6cm程度の所に付けます。

スナップ2個

今まで仕事をしていて一度、6個付けたことがあります(^_^;)

スナップ以外に紐(穴糸など)をつけて、衿が半幅に折れる様にするものもあります。

背の紐(穴糸など)

絽長襦袢を仕立てています。

喪服一式など結納に必要ということで、正絹(絹100%)絽長襦袢を仕立てています。

絽長襦袢の背縫い

この場合、居敷当てが付かないので、補強の意味で、背縫いは約70cm程度一針ずつ縫い返しをします。

絽長襦袢

背縫いの縫い返し

脇は、10cmほど縫い返しをします。

絽長襦袢

脇の縫い返し

身八ッ口には、力布で補強します。

絽長襦袢

身八ツ口

裾は地の目(絽の目)を通して(揃えて)三つ折りぐけにします。地方や呉服店によっても違いますが、くけ上がり幅が約1cmの場合もあれば、約3.5cmの場合もあります。この場合は、1cmです。

絽長襦袢の裾

生地が透けるのものなので、衿肩明きには、大きな肩当ては付けず、三日月布(力布)を付けます。

絽長襦袢

三日月布

衿先布も、地の目を通して仕立てます。

絽長襦袢の衿先

正絹物(絹100%)のものは、裾や袖底(袖下)など地の目を通して仕立てます。

「地の目を通す」という意味は、布の耳端から耳端まで横糸1本ずれないように通すことをいいます。

例えば、名古屋帯の垂先も地の目を通しますが、縫い合わせる際に下の写真のように綴じます。

名古屋帯

垂先の綴じ

正絹物であれば袷着物や長襦袢の裾など、名古屋帯の垂先・手先など、よっぽどの箔使いや耳端の吊れ、強い生地のゆがみなどがない場合は、地直し(仕立て前にアイロンを掛けること)で生地を真っ直ぐにして、地の目を通して仕立てています。

掛け衿と半衿の話

女物大島の掛け衿

現在、着物には掛け衿という本衿(地衿)の上にもう一枚、共地の布が付いています。

女物袷着物の掛け衿

掛け衿の役目は本来、布の補強と汚れたら掛け衿を取り外し、洗ったり出来ます!という布です。半纏や時代劇によく出てくるパターンで、娘さんが着ている黄色地に格子の着物の衿に、黒繻子が付いているのを見かけたことがあると思いますが、同じ発想ですよね。昔はクリーニングも無かった時代で、洗うと言えば「洗い張り」だったんでしょうね~。だからよく汚れる首回りの掛け衿を、簡単に取り外せる工夫をしたのでしょうね。

私が仕事を始めた20数年前までは、反物を裁断する時に、掛け衿を交換するように、二枚取る裁断法がありました。

女性物の掛け衿

地方などによって変わりますが、女性物着物の掛け衿の長さは、着物の種類によって変えています。浴衣は剣先から約10cm程度を目安に(背からの長さは45cm程度)、着物(袷・単衣)となると浴衣より少し長めで背からの長さは48cm程度です。衿肩明きや繰り越しが大きい場合や、反物の長さが短い場合はこの限りではありませんが、このくらいを目安に仕立てていました。でも、最近ではもう少し長めで50cm程度が多いようです。昔の着姿は帯揚げの上に掛け衿先が見えていた方が多く、現在は長めになったために掛け衿先が見えない着姿を見るようになりました。

男性物の掛け衿

男性の着物は、女性物と比べ剣先が高く(衽下がりが短い)、掛け衿の長さは40cmちょっとでしょうか。

仕立て方について

・別付け別納め

地元の呉服屋さんで一軒、きものの掛け衿を「別納め」にして下さいという指示をしていたお店がありました。長襦袢の半衿のように本衿の上にのっているように付けます。衿裏側から見ると下のイラストのようになります。掛け衿のみが取り外せます。私たちはこの掛け衿の付け方を「別付け・別納め」と呼んでいます。バチ衿、棒衿でも別納めの場合、本衿を出来上がりにくけ付け(納め)てから、掛け衿を本衿にくけ付け(納め)ます。

浴衣以外の着物の場合、本衿を身頃に付けてから、掛け衿先を縫い付け、本衿付けの根元に掛け衿をくけ付けます。(別付けといいます)

別付け束納め

現在、着物の掛け衿で多いのは、「束納め」です。仕立ての最後に本衿を掛け衿で包み、衿裏と表衿(本衿・掛け衿)を本ぐけします。この方法は「別付け・束納め」とよんでいます。

・束付け束納め

それに対して浴衣は、本衿に掛け衿を綴じ付けてから、掛け衿と本衿を一緒に身頃に縫い合わせ、衿幅で折り返し、掛け衿で本衿を包み一緒に身頃にくけ付ける(納める)方法で、この方法を「束付け・束納め」と呼んでいます。

現在、自宅で掛け衿を外して、掛け衿だけを洗って(染み抜き)、そして掛け衿を縫い付けるという作業をする方が殆どいなくなりました。着物もクリーニングする時代で、手軽に丸洗い出来てしまうので、こんな仕立て方に変わってきたようですね。

半衿について

長襦袢の半衿

長襦袢には正絹(絹100%)や化繊物の半衿を付けます。白や刺繍が施してある物、ビーズで出来た物やバイアスに織った物もあります。男物のように色が付いた物など様々な物が出回っています。

長襦袢の「ジュバン」の語源はポルトガル語の下着を意味する言葉といわれています。昔、肌が直接触れる襦袢の衿には、手ぬぐいを縫い付けたそうです。時間が経って、お洒落に、粋な半衿が出回るようになりました。呉服店の名前で「えり○○」とか看板で見かけるかと思いますが、昔は半衿やさんだったケースが多いと聞きます。

神社にて(七五三詣り)

神社にて(七五三詣り)

日曜日、天気がいいので、妻とドライブがてら岡崎市の龍城神社に行ってきました。

龍城神社

すぐ横には岡崎城があり、さわやかな秋晴れのもと、七五三詣りの子供達、そのお父さんやお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんで賑わっていました。

七五三詣り

私は、息子が二人で、紋付きの羽織袴でお祝いをしました。私も着物姿で、当日結婚式も行われていたらしく、新郎と間違えられた思い出もあります。

この日、仕立ての仕事をしているせいか、目を引いたのが七才の女の子。

七才祝い着

着物の生地は小紋ですが、柄は絞りであしらってあって、感じがいいですね。帯に帯揚げ、帯下にしごき、胸に筥迫(はこせこ)。髪も、きちんと結ってあって、凜としていて、可愛いです。病気もせず、元気にすくすくと成長してね!

2015年10月27日 | カテゴリー : 歳時記 | 投稿者 : 和裁屋