寸法直しについて③


譲ってもらったきものや、古着屋さんやネットから購入したきものなど、寸法直しの依頼が多くなっています。今回から、寸法直しについて説明します。第三回は身丈直しについてです

○身丈直し
身丈直しのみの依頼はあまりありません。裄や身幅直しなどすべての寸法が違うので解き洗い張りをして仕立て直しするパターンが多いです。身丈は、女物の場合身長を基準にして、肩に厚みがありふくよかな肩は、多少長めにします。
 男物の場合は、身長×0.83~0.85を基準としますが、女物のようにお端折りがなく融通が効かないので実際に着てみて、どれくらい短くするのか、長くするのかを測ります。


・腰揚げで直す場合
女物では身八ツ口の下あたりに、男物ではお腹の下あたりに縫い込まれている縫い代を揚げ(あげ)とか内揚げ(うちあげ)といいます。身丈を長くする場合、この揚げの量を測ります。身丈を長くするに伴って、衽や衿の縫い代も必要になってきますので、縫い代が縫い込まれているのかを測ります。


・裾を切って直す場合
浴衣など単衣物で身丈を短くする場合、裾を切って短くする場合があります。上記のあげで直す方法より安価にできますが、褄下寸法も短くなります。また、元の長い身丈に戻すことができませんので注意が必要です。

・布を継ぎ足して直す場合
先日、単衣着物の仕立て直しの依頼がありました。ご自身で解き、持ってこられました。この方の身長は160cmで、すべての寸法が小さく、身丈は裁ち切りで15cm程短く、見えないところで布を継ぎ足してほしいとのことでした。前・後身頃共に帯に隠れる場所やお端折りの内側に15cmの布を足せば簡単なのですが、前身頃のお端折りは、斜めに重ねて着付けるので、15cm真っ直ぐには布が足せません。ちょうどきものを着る機会があったので、お越しいただき、隠れる場所をきものを着た状態で、裾からお端折り下の「わ」までの距離・お端折りの深さなどを測らせていただきました。それ以外に肩山から帯上までの長さ・帯下からのお端折りの量などポイントの箇所に標(糸標など)をして、きものを広げて細かく測ることができれば、確実に隠れる場所が分かります。

きものの隠れる場所の計測箇所

今回も(社)日本和裁士会の研修会「足し布による身丈出し(剥ぎの位置)」でいただいた身長別のデータを参考にして布を接ぐ位置を算出しました。下の図は、身長160cmの方のおよそ見えない箇所です。

身長160cmの方の隠れる場所

今回の場合、後身頃にはできるだけ長い足し布が必要なので、掛衿から取った共布をお端折りの内側から帯で隠れる位置まで長く布を継ぎ足し、衿肩明きは前身頃側へ移動させ、新たに衿肩明きを切りました。共布で居敷当てがありましたので、前身頃はお端折りの内側になる部分と、衽の上部など継ぎ足しをしました。下の図は、今回足し布をした箇所です。

上記以外にも、右の衽から布地を取り、縦横を変えて胴に次いだ例

別布でお端折りの中で継いだ例

参考資料:「足し布による身丈出し」(剥ぎの位置)アンケートによるレポート((社)日本和裁士会東京支部・東京和服裁縫協同組合)

2023年11月17日 | カテゴリー : きもの | 投稿者 : 和裁屋