先日、紬の着物の直し物を持ってこられた方がみえました。中身(裏側)を広げて見てみると・・・・・
写真は、背縫いですが荒くて、曲がっています。プロの仕事ではなさそうですね~
和裁士(プロ)と認定されるには、最低5年以上修行して国家検定などに合格しないと和裁士にはなれません。私が和裁の勉強を始める時に、師匠(先生)から「浴衣だったらこの程度の針目で・・・」と指導されました。縫っては確認、縫っては確認を繰り返し、この生地だったらこれくらいの針目と、頭の中にイメージを覚え込ませました。
国家検定試験にも活用され、文部省認定教科書で(一社)日本和裁士会が発刊している「新版 和服裁縫 上巻」には、針目・縫い目について下記のように記述されています。
- 絹物(単物) 10~12針
- 〃 (袷物) 8~10針
- 木綿物(単物) 6~8針
- 〃 (袷物) 5~7針
(4cmの間隔で布の片側に出ている針目数)
浴衣は木綿物の単衣ですので4cmの間に6~8針程度、絹物の袷物(裏地の付いている着物)は8~10針ということとなります。布の厚みによっても針数は変わります。厚い生地を細かく縫ってしまうと、縫い目がビリビリしてしまう場合もあるので少々大きく、裏地は薄いので細かく縫い合わせます。
私が修行中、国家検定や和裁競技会では、袷着物の胴接ぎ(胴裏地と八掛けを縫い合わせる部分)で4cmの間に20針程度の細かさで縫い合わせたことがありますが、「全く必要が無い。生地を傷めるだけだ・・・・」と師匠に注意されたことがあります。
細かいのが良いわけでは無く、和服は作り直すことを前提に縫いますし、どの部分を縫うかによっても針目は若干変えて縫います。必要以上、必要以下の針目では縫わないように注意が必要ですね。
今回、この着物は40年ほど前に仕立てた物だそうです。その頃は、近所のおばちゃんが「ちょっと作ってあげるね~」なんて仕立てた物や、高校の被服科で和裁を専攻すれば、留袖や半纏など、今にしてみればかなりレベルの高い和服までも授業で作っていました。でも、針目は気にしてなさそうですね。
上の針目は4cmの間に5針程度、背縫いですのでいくら何でも、針目が大きすぎます。下の縫い目が、4cmの間に9針程度で袷着物の標準的な針目です。背縫いは力が掛かり、しかも中心となる箇所なので、しっかりと真っ直ぐ縫い合わせます。その他、袖付けや身八ツ口(脇止まり)、衿肩明きなどは半返し縫いや縫い返し、留袖や振り袖などの刺繍で厚い部分や金箔や胡粉で堅い部分は半返し縫いをして、しっかり縫います。
ちなみに、刺繍だらけの丸帯は一針ずつ、半返し縫いですよ~