電気を使わない足踏みミシン

電気を使わない足踏みミシン

2001年に公開された「クレヨンしんちゃん  嵐を呼ぶ モーレツ オトナ帝国の逆襲」にも登場している足踏みミシン。ご高齢の方にとっては「懐かしい!」という方もみえるかもしれません。カミさんの実家にも足踏みミシンがあり、義母は洋裁が得意で家族のパジャマやワンピース、ブラウスなど3姉妹の服を縫っていました。また、浴衣やきものも作り、和裁にも精通しています。電気を使わない足踏みミシン、大変エコなのですが、今では家庭に電動ミシンすらない状態ですね。

今でも私達が使っているミシンは1960年製で「SINGER職業用モデル188U」です。父が和裁の修業を終え、独立した時に使い始めたミシンです。

SINGER/188U

私が小っちゃい頃、父の見よう見まねでミシンでカタカタと遊んでいて、指を刺してしまった記憶があり、強烈に覚えてます。もう、半世紀以上働いていることになりますね。踏み板付近のベアリングの調子が少し悪いですが、こまめに油を差していれば、まだまだ現役で使えます。

和裁では、殆どが手縫いですが、浴衣やウールなどの生地を縫う場合や、洋裁っぽいコートの縫製や、布を継ぎ合わせたり部分的にもミシンを使います。また、ちょっとした余興や演芸大会、コスプレの衣装などはミシンで仕立てることも出来ます。

水戸黄門衣装

その他に、袋帯の端縫い、名古屋帯の仕立てにもミシン縫いが多く、袋名古屋帯(八寸帯 かがり帯)の仕立ては、手かがり以外にミシンかがりがありますが、私はゆっくり縫える足踏みミシンの特性を生かし、一針ずつ、端糸とその次の縦糸との窪みに細かい針目を入れ、あまり縫い目が目立たないように仕立てています。足踏みミシンは、超スローでも縫うことができるといったスピード調節ができたり、縫い終わりはきっちりと点に針を下ろすことができるところがいいですね。

袋名古屋

ミシンかがりの仕立て

和裁で使用するミシン針は11番から9番程度ですが、私は細めの9番を使用しています。帯など堅い物を縫うと、針先が丸くなり布地を傷めますので、折れたり曲がったりしなくても頻繁に交換しています。

工業用ミシン針

修業終了後、実家に帰ってこのミシンを使い始めていますので、私とは30年弱の付き合いでしょうか?長い付き合いで分かったことは、無駄のない様にボビンに巻く糸の量とか、ボビンに糸が無くなりかけると音が少し変わるとか・・・気温の低い冬場は、少し重く機嫌が悪いですね。ホコリも溜まりますし、油も差さなければなりません。ベルトも伸びてきたら、切って短くしたり、交換したり手入れが必要ですが愛着が涌く和裁道具の一つです。

工業用ミシン ボビンとボビンケースDSC_0099

工業用ミシン

ボビンとボビンケース

修業時代には、この足踏みミシンを改造した電動ミシンを使ったことがあります。自動車のアクセルのように踏み板を少し踏むとゆっくり動き出し、さらに踏み込めばスピードが出ますが、「ここのピンポイントに針を下ろして留める」といった作業は電動ミシンは不向きで、踏み板を戻しても2,3針余分にはみ出てしまいました。主にウールなどの仕立てに使っていました。

日本人の聞き間違いなのかもしれませんが、ミシンの語源はソーイングマシーン(Sewing Machine)の機械=マシーンが、ミシンになったそうです。他には、アイロンは鉄(アイアン:Iron)からだそうです。

映画アイアンマンは、アイロンマンになってしまうのかな(*_*)

2016年7月5日 | カテゴリー : 和裁の道具 | 投稿者 : 和裁屋