掛衿の位置について

着物の本衿(地衿)の上にもう一枚布を縫い付けてあるのが掛け衿で、その役目は布の補強とか、汚れたら掛衿を取り外し、洗えるという布です。昔はクリーニングも無かった時代で、洗うと言えば縫い目を解き、「洗い張り」だったので、よく汚れる首回りの掛け衿だけを、簡単に取り外せる工夫をしたのでしょうね。長襦袢の半衿も元来、同じ役目でしたが、柄物や刺繍などをあしらった物が出回り、お洒落なものが多くなりました。

今回は、その掛け衿の長さなどについてお話しします。

上図のように現在では、剣先(衽の一番先端)より下に掛け衿先があります。浴衣の場合は、剣先から10cm程度でしょうか。フォーマルな着物では13cm程度です。この着物を着てみると、下のイラストのような状態になります。

十数年前に一部の呉服店より掛け衿をもう少し長くして欲しいとの要望があり2cmほど長くしました。その結果、身長の低い方は特に、それを着てみると下記のような着姿になります。

掛け衿先が、帯の中に隠れてしまう場合があります。もちろん、着る方の身長や帯を締める位置などにもよりますが、掛け衿先が見えていません。最近のテレビコマーシャルの着物姿でたまに見かけます。

昔、一度見たことがある掛け衿が下のイラストです。

掛け衿先が剣先の上にあります。最近の着物では全く見ない掛け衿です。このパターンは、お祭りの衣装にも見られ、衿布の補強や汚れたら外して洗うといった必要最小限の掛け衿の役目を果たしている物ですね。

今では、掛け衿の縫い目を外して掛け衿だけを洗ったりする方は全くいません。殆どの方は、着物を丸々「生き洗い」にしたり、お化粧などで汚れたら部分的にシミ抜きができます。現代での掛け衿の役目はあまり無いような気がします。

以前の掛け衿のブログ

・掛け衿と半衿の話

・掛け衿の話(経験談)