連続する柄(柄の合わせ方2)

長方形の連続した柄の着物から袖無しの上っ張りを仕立てました。

背はもちろん、衿も柄を合わせました。
紐の付いているところで継ぎ目が目立たないように衿を継ぎ足して柄を合わせています。
おまけに襠(まち)布も目立たないように合わせてみました。今回は生地が多くあり、ちょうど柄が合うように出来ました。生地があまりにも短い場合などは、バッチリ合わない場合もあります。

私は、仕立て直す事を考えて、仕立てていますが・・・・

4月半ばから、浴衣や単衣の仕立て依頼が来始めています。

単衣着物を数枚、持ってこられ、体型が変わり、身丈、身幅、褄下の寸法も変わってしまい、洗い張りして仕立て直しをして欲しいとのことでした。
洗い張り前の、着物を解く作業は、洗い張り屋さんに任せることもできますが、布の状態と仕立て方を見たいので、私が解きます。

ゆっくりと糸を抜きながら解いてみると、、、、、

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なんと~  前身頃の衽付け側の縫い代が切り落としてあります。身幅を広く仕立て直しをしますが、この状態ではこれ以上、広くできませんね。

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そして、衽の褄先、単衣の場合は「額縁」と呼ばれている箇所ですが、ここも縫い代が切り落とされています~

 

以前のブログ(寸法直しが難しい事例:脇縫い代の切り込み)にも書きましたが、縫い代が何枚か重なって厚くなるために、仕立てにくい箇所で、縫い代を切り落とす事で、仕立てやすく、裾のくけ幅をすっきり見せるためです。

今回は、幸いにも内揚げがあり、切り落としてある部分に合わせて裾を切っても、身丈は出来ますが、こんな事をやっていたら、どんどん布丈が短くなってしまいますね。

 

地方や流派?(あるような、無いような)でいろいろな仕立て方がありますが、私には、チョット解せないですね~

和服は、仕立て直すことを前提に、仕立てます。例外として浴衣(特に真岡のみ・綿紅梅等高級浴衣地は別)は、反物の長さが短い事や綿製なので、内揚げ(身頃の胴で摘まんである縫い代)を取らず、あまり作り直すことを考えず、仕立てます。

お祖母様の名古屋帯を仕立て直し

お客様から「名古屋帯を長くできませんか?」と、メールをいただきました。内容を詳しく尋ねたところ、お祖母様が若い頃締めていた名古屋帯です。黒地に刺繍の草花があしらってあり、とても柄が気に入って締めてみたところ、お腹の柄(胴の柄)がうまく出ないのと、手(胴に巻く部分)が短いとのことでした。「丁度良い締めやすい帯を一緒に送っていただけたら、寸法を確認し、見積もりいたします。」とお返事したところ、お客様から早速送られてきました。

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まずは、ポイントとなる各部分の長さを測ってみると・・・・・・

お太鼓の長さは、丁度良い長さですが、やはり垂境(三角になっているところ)から胴の柄までの距離と手丈が短いです。

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名古屋帯の基本的な寸法です。

名古屋帯の基本的な寸法です。

名古屋帯の柄の位置です。

名古屋帯の柄の位置です。

 

垂境から胴の柄までの距離は、現在の名古屋帯では約57cm位ありますが、この帯は約45cm。昔の物ですので、短くできています。手丈は約224cmで、現在の並寸法は約260cm前後のものが多いので40cm近く短くできています。ちなみに戦中、戦後の物資が足らない時代は、お腹に一重しか巻けない名古屋帯があったそうです。

そして、今では殆ど仕立てられることがないポケット口が付いていました。手先の方に袋状に開いている物で、小物を入れるポケットではなく、帯板を入れるためのポケット口です。

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このポケット口は、体型にもよりますが、手先から中心まで約110cmの所に開けます。

(一社)日本和裁士会編 新版和服裁縫下巻より

(一社)日本和裁士会編
新版和服裁縫下巻より

 

そして、生地の状態をよく見てみると・・・・・

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角は、擦れて薄くなっていたり、

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垂先の、摘まんで縫ってある部分も、陽にかざしてみると薄くなっています。

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とても古い物は、触っただけでポロポロと生地が裂けてしまうものもありますが、今回の生地はそこまで劣化はしていません。でも、耳に切り込みが入っていて、もしかしたら、締めている最中に力が加わると裂けてしまう恐れがあります。

お客様に、この状態を説明し、全面に薄い接着芯を貼ることを提案させていただきました。

しっかりと生地のよれをアイロンで直し、垂先を直角に置き、布幅に裁断した接着芯を貼ってゆきます。

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次に、寸法の足らない部分の2箇所に、帯布を継ぎ足します。

名古屋帯足し布

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後は、いつも通りに仕立ててゆきます。

私たちが仕立てた物には他の仕立て屋さんが見ても分かるように、仕立てた内容、寸法などを記入したものを付けてお客様へお渡ししています。

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今回の仕立て代は、

・解き・簡易地のし

・接着芯等

・継ぎ足し布等

・帯芯

・仕立て

など合計25,000円程度でした。

昔の生地は、しっかりとした良い物もあります。仕立て直しで蘇ることもできますよ。

 

 

 

 

 

 

帯の仕立て直しをしていて思うこと

帯の仕立て直しの依頼も承っています。

時間が経つと、表と裏のつり合いが悪くなったり、帯芯が縮んだりしますので、一度全て解いて、染み抜きや洗い張りをして仕立て直しをます。(過去の袋帯仕立て直しブログはこちらをクリック)

もちろん、帯芯も解き、新しい帯芯に交換しますが、原則、付いていた物は全てお客様にお返しします。古い帯芯をお返ししたところ「こんなにカビていたの~」と仰られる方が殆どです。着物の裏地は、広げて見れば分かりますが、袋帯や名古屋帯などは中に帯芯が入っていて見えないので、分かりませんよね。でも、意外とカビています。

下の写真は、一世代時間が経っていて、お母様が成人式の時に締めた袋帯の帯芯です。

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綴じてあった糸は切れてしまって、所々帯芯がずれてシワだらけですね。

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もちろん、新品の帯芯は真っ白で、「防カビ」とか施してあるものが多いです。

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また、お祖母様が若い時に締められていた名古屋帯の帯芯。二世代の時間が経っています。

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最近の袋帯は、端縫いの糸に化繊の糸が使われています。とても細く切れにくいのが特徴ですが、果たして時間が経った時、絹物の帯地に対して優しいのか疑問です。糸が先に切れれば、帯地は傷つかないでしょうけど、しかし、糸が切れず、部分的に力が加わったら布は裂けてしまいます。

師匠や先輩方から教えられ続けていますが、この様な理由から絹物は絹糸で縫っています。これも、布を大切にする日本人の智恵ですね。

最近多くなってきている「仕立て直し」

早いもので、平成29年がスタートしてもう2月半ばになりました。先日、豊橋市では鬼祭りが行われ、この鬼祭りが終わると春になると言われています。しかし、立春も過ぎたと言うものの、梅の花が咲いているところもあれば、雪が降っている場所もあり、まだまだ春は遠いのかな?とも思ったりしています。

さて、最近、裄直しなどの寸法直し、長襦袢の半衿掛けなどの仕事が多いですが、仕立て直しも多くなってきています。

先日では、仕立て上がった振袖・長襦袢・袋帯を持ってお母様がお越しくださいました。お母様の姉妹が着て、今度は娘さんが着ることとなり、身長も、体型も似ているのでそのままでも着られそうなのですが、裏地などの汚れが目立つのと綺麗にして着せてあげたいとのことで、洗い張り(解いて生地を洗うこと)をして、裏地取り替え・仕立て直しをしました。

以上の内容の振袖仕立て代(振袖仕立て代・洗い張り代・裏地代・縫い跡の修正代等を含め)は、合計で10万円程度です。(※染み抜きや修正箇所等によって仕立て代は変わります)

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私が七五三と成人式に着た着物は、息子2人とも着ています。息子達の着た姿を見ると、嬉しくもあり、頼もしくもあり、私が二十歳の頃のこれからの大きな希望と不安が入り交じった気持ちも思い出し、息子達も同じ気持ちかな・・・なんていろんな事を思ったりしました。

日本にはいろんな通過儀礼があって、和服は深く関わっています。親が着たものを、その子供が着る。親の気持ちが衣服に宿って、「がんばれ~」とか「立派な成人になってね」とか、子供が着ることによって伝わるような気がしますね。20年以上の前の衣類が、次の世代でも着ることができ、リメイク・リフォーム・リサイクルできる和服は、世界でも珍しいのではないのかな??

 

以前、テレビで成人式の様子をニュースで放送していました。ある女性の新成人が無地の振袖を着てインタビューに「お母さんが着た振袖です。無地の振袖の方が他の人と違って目立つから、着ることにしました!」と答えていたことが印象的でした。成人式全体の様子も映像が流れましたが、仕立て屋の仕事をしているせいか、男性の羽織袴もなんか・・・・・殆どが柄が同じに見えてしまいます。

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以前のブログにも載せましたが、七五三でも同じように感じてしまいます。(七五三の以前のブログはこちら)成人式も七五三の延長のような・・・・・一つ一つの着物を見ていれば、蛍光色っぽい花が全体に散りばめられていて、可愛いく豪華に見えますが、同じ雰囲気の柄が集まると、見栄えがしない気がします。昔の方が日本の色を使い古典調柄をあしらったものが多く、それぞれが主張していたようにも思えます。

 

また、別の日には、喪服と長襦袢を持って来られた方がいました。嫁いだ時に持ってきた喪服ですが、今まで一度も着ていなく、躾も付いている状態でした。近々着られる予定があるので、はおってみたら幅が狭くて・・・・と相談に来られました。

喪服

見てみてみると・・・・・

  • 喪服ですので、一度も着ていなくても身幅を広げる場合、縫った跡(標)や折り跡が出てしまいますので、その跡を目立たなくする修正が必要
  • 裏地は時間が経っているため、黄ばみが出ているので、取り替えた方が良いのでは
  • 体型が変わったために、身幅(脇)のみの寸法直しでは着やすくならない。衽幅や抱き幅などの寸法直しが必要かと思われる。
  • 身丈も短く、また、袖丈が長い。
  • 縫い跡修正と着やすい幅直し、袖丈直し、裏地取り替え等という方法もあるが、殆ど解いてしまうため、仕立て直しとの価格の差はあまり無い
  • 仕立て直しの方が、一から仕立て直すので部分寸法直しより、きっちり仕立てることができる。

と、説明させていただき、縫い跡修正、裏地取り替え、仕立て直しをさせていただきました。縫い跡の修正は、染み抜き屋さんにお願いしていますが、昔の喪服の生地は染めも織り糸もしっかりとしていて、綺麗に修正できました。

以上の袷喪服の仕立て代(仕立て代・裏地代・着用時に見える箇所の上前の部分と裾の修正等を含め)は、6万円程度でした。(※染み抜きや修正箇所等によって仕立て代は変わります)

最近、喪服の仕立ては海外で行っており、私たちの所へは殆ど来ません。今、作られている喪服の生地は、全てではないですが以前よりだいぶ薄くなったものが多くなっているように思います。そのような喪服の生地を仕立てる時に注意しなければならないのは、一度縫ったら、伸びてしまい、染料がはげてうっすらと白くなってしまうので、縫い直しができません。そして、この様な生地は幅を広げたり、丈を直すという仕立て直しは無理かと思われます。

また、和裁組合の研修会で、紋屋さんの講演があったのですが、現在の喪服の生地は、「カラスの濡れ羽色」のように黒色をよく見せるために、ワックスを掛けるそうです。なので、紋入れの際には染料が乗らず、一度ワックスを取ってから、紋を入れるそうです。

 

今でも、しっかりと織り糸から吟味して、古くから伝わる技法で柄を染め、作り直しを考えた反物もありますが、反面、デザインのみに目が行ってしまいがちな、反物(きのも)もありますね~

 

 

 

きものの仕立て直しで、綺麗になります。

お母様が「きものを娘に譲りたいのですが、どのようにしたらよいのでしょうか?」と、ご相談がありました。お話を伺うと、地元の呉服店は廃業してしまって、どこに持って行けばよいのか分からなかったようでした。

きものを見てみると、

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胴裏地には沢山のシミがあり、八掛の色もちょっと派手なので、もう少し優しい色目が良いとのことで、胴裏と八掛は新品に取り替えることとなりました。

 

時間がだいぶ経っているので、表生地が縮み裏側の生地が緩んでいます。袖口は・・・・

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裾も表生地が緩んでいます。(点々のように見えるのは、縫い躾(ぬいびつけ)またはグシという躾が掛かっています)

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当初は、裏地取り替えと裄や身幅などの寸法直しというお話でしたが、表生地のねじれなどで、寸法直しでは思ったほど仕立て上がりがよくない事や、洗い張りして仕立て直す費用と比較しても、さほど変わりないことをお話させていただきました。

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また、表生地にも全体にシミがあり、全ての染み抜きをするのには、費用が掛かりすぎてしまいますので、まず、洗い張りをして、その後、シミの位置を確認し、寸法を測り、縫い代に入る箇所や、着て目立たなく気にならない場所の染み抜きはせず、上前(左身頃の前)や衽、後身頃のお尻あたりなど目立つ部分のみだけ染み抜きをして、仕立て直しをした方が、出来上がりも綺麗に仕立て上がるのではと説明させていただきました。

 

仕立て後の袖口は、

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裾は

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裏地のつり合いも綺麗になりました。

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寸法は、娘さんが持っている長襦袢に合わせて着られるように、また体型に合わせた寸法で仕立てました。

 

和裁屋では、仕立てた寸法や内容は保存しています。また、きもの寸法を一度寸法を決めれば、長襦袢や羽織る物など、その他の和服を仕立てるときに、合わせることができます。仕立てのお客様には寸法表をお渡ししています。(寸法直しの方は、この限りではありません)

 

 

袋帯の解き仕立て直し(だぶり直しNo.2)

今まで袋帯について何件かご相談をいただきました。その中の一例ですが、詳細な仕立て方を説明いたします。

袋帯の検品をしてみると、

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時間が経っているせいか、表・裏の縦横の糸の伸縮率が違うためか?表の幅が縮んで裏生地が出てしまっています。また、端縫いの糸が縮んでいるのか、裏地の丈が縮んでいるのか、表生地がダブっています。

袋帯仕立て直し02

相談に持ってこられる袋帯で、こんなにも裏地丈が縮んでいる物もありました。

表がダブっている袋帯

端縫いがしてあるこの状態で、アイロンを使い、つり合いを直すのは大変難しく、直ったとしても時間が経つと元に戻ってしまいます。お客様に説明をしたところ、端縫いを解き、端縫いを直して仕立てることになりました。

和裁屋では、袋帯の解き・仕立て直し・芯入れ仕立ての手順は、以下のように行っています。

1.解き・・・両端のミシン縫いを外します。

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裏側にひっくり返して、ミシン縫いを丁寧に解きます。所々、糸に切り込みを入れ、糸を抜いてゆきます。仕立て屋さんの中には表生地と裏生地を引っ張って、糸を裂く方もいますが、生地が傷んでしまったり、最悪、生地が裂けてしまいますので、糸を抜いて解いてゆきます。注意していることは、刃物の鋏を使うのは必要最小限にして慎重に解いてゆきます。

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いつも行っているのは、解く前に織り止め(垂先・手先にある太い織り線)の位置に糸標を付け、解いた後に丈を比べています。裏地が15cm(4寸)も縮んでいる帯もありました。

 

2.地のし(地直し)・・・生地のねじれ等を直します。

袋帯仕立て直し05

表裏を解いたら、正絹(絹100%)の帯地の場合は、生地を整えるために当て布の上から霧吹きを掛け、じっくりとアイロンで地直しをします。出来上がっている帯などは、端が延びていたり、生地がねじれている帯もあります。表地・裏地両方とも時間を掛けて、歪みを直し、アイロンを掛けます。(化繊等では極端に縮んでしまったり、変化してしまう場合がありますので、アイロンは当てない、または、必要最小限の地のしをします)

以降、1つの作業を行った後には、縫い目やつり合いなどを整えるために、必ずアイロンを掛けるという仕立て方をしていますので、作業中に生地が狂って縮まないように、初めの地のしは、しっかり丁寧に行っています。

 

3.綴じ

生地が整ったら、少々裏側を張らせ、待ち針を打ちます。

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元の縫い目を確認しながら両端を、綿の糸で綴じます。

袋帯仕立て直し10

 

4.標付け・ミシン縫い

表、裏の縫い跡や汚れなどを考慮して、ミシン縫いをします。

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縫い方はケースバイケースですが、元の縫い目を目安にしたり、標を付けたりしてミシン縫いをします。

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今回の裏地幅が出ていた帯は、元の縫い目が出てしまわないように、表帯幅に合わせて縫ってみると、裏地の元の縫い目が2~4mm程度ずれました。結構、幅が縮んでいましたね。

 

5.縫い目を整える

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縫ったところをアイロンで整えます。

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縫い代の厚みで、当たりが付かないようにボール紙を敷き、鏝で押さえ縫い割りにします。

 

6.表からアイロンで整える。

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表側に返し、状態をチェックしながらアイロンを掛け、帯全体を整えます。

 

7.芯入れ

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再度裏側に返し、垂先を縫い、霧吹きで縮めた帯芯を、帯幅で裁断し、少々帯芯に緩みを入れながら待ち針を打ち

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帯芯を綴じてゆきます。

 

8.アイロン掛け

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手先から表に返し、帯芯と帯地のつり合いなどを確認し、帯全体をアイロンで整えます。

 

9.手先の本ぐけ

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手先の帯芯を整え縫い代に綴じ付け、手先を一針ずつ本ぐけをします。帯の生地は硬いので、連続して本ぐけをすると、斜め針(生地と生地の間に斜めに糸がわたる針目)となり、力が加わったときに糸が切れてしまうので、一針ずつ本ぐけをします。

 

10.仕上げ

最後に、仕上げをして完成となりました。

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時間が経って、生地が大きく変化しないように何度もアイロンを掛け、生地の状態を整え、つり合いを確認しながら仕立ててゆきます。

なお、解き仕立て直しをする場合、元の帯幅より若干細くなる場合があります。また、元の端縫いの状態や、時間が経っている等の生地の状態によって、出来ない場合がありますのでご了承ください。

余談ですが・・・・

以前、仕立て上がった帯に撥水加工(ガード加工)をしたところ、表地が大変縮み裏地が手先で吹き出してしまい、仕立て直しをしたことがありました。こんな経験を踏まえ今は、袋帯の解き仕立て直しの場合や、表裏生地の端縫いから行う帯の仕立ては、初めの地のしのは、霧吹きと併用して、時間を掛け、できる限り帯地を縮めながら整える工夫をしています。

七五三の季節となりました。

現在、七五三の仕事が多くなってきています。加えて、振袖の仕事もちらほら入ってきています。

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◆お母さんの着物から(本断ち総絞りの着物)

7歳の娘さんを連れて、お越しくださいました。お母さんが7歳の時に着た総絞りの着物を持って来られ、お話を伺うと「私が7歳の時、とても身長が高く、長く仕立ててあり、小柄な娘の身長に合わせて腰揚げをすると、モコモコになってしまいます。重さもあり、どうしたらよいのでしょうか?」とのこと。着物を見てみると、仕立て方は四ッ身ではなく、大人用(本断ち)の仕立て方で、多分「十三詣り」で仕立て直しをして着られるように、内揚げ(身頃に摘まんである縫い代)や衽、衿にも縫い代が縫い込んでありました。

この状態で娘さんの身長に合わせ、肩腰揚げや袖揚げをすると、その摘まむ量が多く二重揚げでモコモコになってしまいます。絞りなので尚更です。「寸法直しでなんとかなりませんか?」とも提案されましたが、身丈・裄・身幅・袖丈など、ほとんどバラバラにして直すことになります。値段もほとんど仕立て直しと変わらない程になってしまいますので、全て解き、地直しをして仕立て直しをすることとなりました。今後、この着物は着ないとのことなので、軽くするためにも大四ッ身で作らせていただきました。

7歳の娘さんの身長を伺い、持ってこられた着物を家内が着せて、どのくらい長いのかを測り、娘さんの丁度よい腰揚げ・肩揚げ寸法で仕立てることができました。

着物の解き・地直し・仕立て・肩腰揚げ・紐作り付け・・・約4万円程度(生地等によって変わります)

 

◆お母さんの着物から(小紋の着物)

お祖母様、娘さん、お孫さんの3名で、お越しくださいました。娘さんが7歳の時に着た小紋の着物、長襦袢を持って、お孫さんが着られるのかどうか相談に来られました。約30年前に着たままで、小じわなど付いていました。私達が反物から仕立てる場合、着丈(着る長さ)に38cm位足して身丈(仕立てる長さ:腰揚げ前の長さ)を決めますが、お持ちいただいた着物は少々腰揚げの量が少ないものの(20数センチ)、腰揚げ位置のバランスを見て仕立てることができます。
30年前のそのままなので、一度生き洗いをしてリフレッシュしてから、揚げを行いました。

7歳のお祝いは「帯解きの儀」と言われ、肩揚げはしますが、紐付きの着物を着ず、大人の様にお端折りをして着物を着始めるお祝いの儀式です。しかし、現在では、紐を付け、腰揚げをする方がほとんどです。考えてみても、まだ7歳なので嬉しくて、跳んだり跳ねたりする頃で、着物の裾を踏んだらお端折りが出てしまい、着崩れしてしまいますよね~

今回も家内が着付けをして、正確な肩腰揚げ寸法を測り、着物と長襦袢の肩腰揚げと紐付けをさせていただきました。

※揚げの糸を取ってみると・・・・・
私達はチャコは一切使わず揚げをしますが、お持ちいただいた着物には腰揚げや肩揚げの摘まむ線を、青いチャコで標を付けて縫ってありました。蝋チャコと呼ばれるもので、繊維に浸み込んでしまいます。揚げの糸を抜き揚げ直しをすると結構目立ちます。生き洗いでは取れず、染み抜きが必要となってしまいました。

着物の生き洗い・チャコ染み抜き・肩腰揚げ・紐付け+長襦袢の肩腰揚げ・紐付け・・・約2万円程度(あくまで目安です)

 

◆3人娘の振袖

お祖母様、娘さん、お孫さん達で、お越しくださいました。娘さんが成人式に着た振袖を、お孫さん3名に着せたいとのこと。お孫さん3名は体型は同じですが、身長が少しずつ違います。「何とかなりませんか」とご相談しに来られました。家内が着付けをしたところ、体型が同じなので身幅はだいたいOKです。身丈もお端折りで何とかカバーできるほどで、大がかりな寸法直しは必要ないと判断しましたが、袖は、始めに成人式を迎える一番背の低い方が着ると、床に付いてしまったので、着物は袖丈直しをさせていただきました。

問題なのは長襦袢です。対丈で着るため一番背の低い方は裾を引きずってしまいました。身丈直しをしてしまうと一番背の高い方には、短くなってしまいますので、長襦袢の褄下あたりで、長い分を摘まんで腰揚げをしました。初めの方が着た後、腰揚げの糸を抜けば、その後の方が着られるようになっています。

着物の袖丈直し+長襦袢の袖丈直し・腰揚げ・・・1万5千円程度(あくまでも目安です)

後日談:お祖母様が後日、尋ねてこられ、私達の所に来られる前に、地元の呉服店に持って行ったところ、あれもこれも直さなければならないと、結構な値段を言われたそうです。呉服店の店員さんも着物をよく知っている方が、もういなくなってきていると感じました。

 

着物の長所は直せるところ

着物は、作り直せる衣類です。私の七五三の時に着た祝い着は、私の弟、従兄弟が着て、私の息子達が着ました。私の成人式の着物も、息子達が着ています。

七五三詣り

七五三詣り

私の家内は、従姉妹のお下がりの着物を長女・次女そして三女の私の家内が着ました。

七五三詣り

七五三詣り

日本の「衣の文化:和服」の「モノを大切にする文化」・「もったいない文化」は、まだまだ根付いています。

11月頃、神社に参拝すると、祝い着を着た子供で賑わっていますが、職業柄、既製品と誂えた着物と、ついつい比べてしまいます(^_^;)

 

 

 

 

 

羽織から名古屋帯

今まで何本も羽織から帯を仕立てていますが、今回は黒絵羽織(ポイント柄の羽織)から名古屋帯を仕立てる仕事の依頼がありました。

羽織から名古屋帯

羽織から名古屋帯

洗い張りの状態で来ましたので、まずは検品と、柄の位置などを確認し、設計図を作成します。

羽織から名古屋帯 (設計図)

羽織から名古屋帯
(設計図)

☆注意するポイントは、

  • お客様の体型で、お太鼓のポイント柄から垂先と垂境の距離、垂境から胴(手)のポイント柄までの距離、手の長さの確認。
  • 幅の確認
  • 胴回りから計算して、締めた時に継ぎ目が出てしまわないか
  • 胴(手)のポイント柄は両面に出ることが出来ない場合、お客様がいつも胴(手)を締められる方向が逆になってしまわないかどうか
    などなど、詳しくチェックします。

 

今回は、お太鼓(垂)の柄は左身頃の大きな柄を使って、胴(手)は片側によっている右身頃の小さな柄を使います。衿や袖の無地の部分は、お太鼓の裏(垂裏)や手先などに使いました。

羽織から名古屋帯 (お太鼓の柄と胴の柄)

羽織から名古屋帯
(お太鼓の柄と胴の柄)

お太鼓のポイント柄から垂先と垂境の接ぐ位置を確認し、余分な部分を裁断します。

羽織から名古屋帯

羽織から名古屋帯

その他も設計図通りに裁断し、ミシンで縫い、つなげてゆきます。

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つながったら、標付けをしますが、お太鼓の柄が右側に寄っていますので、左右の縫い代をできるだけ違えて標を付けます。

羽織から名古屋帯 (標付け)

羽織から名古屋帯
(標付け)

帯芯を入れて完成です。

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今回、5カ所継ぎ接ぎし、お仕立代は15,000円(税別、芯代別)でした。柄の位置や大きさ、接ぐ位置、好みなどによって仕立代は変動します。

衿肩明きについて

先日、大島紬の仕立て直しの依頼がありました。お太りになられ、八掛の色がちょっと派手になってきたので、洗い張りをして八掛け取り替えの仕立て直しの依頼です。
早速、解きながら衿肩明きを見てみると、幾度か仕立て直しをされているようですね。洗い張り時に、裂けてしまわないように、糸で綴じて、補強の裏打ちをしました。下の写真は仕立て中の衿肩明きです。

洗い張り品の衿肩明き

洗い張り品の衿肩明き

写真の通り、3回衿肩明きを切り直していますので、3回以上、仕立て直しているようです。
洋服は仕立て直しが殆ど出来ないのに対して、和服は、縫い代を一切、切り落とさないため、世界中でも類を見ないリサイクル性に優れた衣服で、仕立て直しが可能です。しかしながら、ただ一つ大きく切り込みを入れる箇所は、衿肩明きです。今回は衿肩明きについて、いろんな事をお話ししたいと思います。
(私達が普段行っていることなので、地方や呉服店等によって違います。ご了承ください)

◆繰り越しについて

繰り越しは、女物着物に付いています。通常の男物(とても体格のよい方には少し付けています)や子供物には繰り越しは付けません。

繰り越し

繰り越し

上のイラストのように繰り越しは、肩山(畳山の折)からどれだけ衿が後ろ側にずれているかという寸法で、出来上がり(上がり)寸法と、標付けをする際の繰り越し寸法とがあります。(詳しくは下記注1を参考にしてください)

◆衿肩明きの寸法について

衿肩明きは背縫いからどこまで深く衿が付いているか、という寸法です。

衿肩明きと繰り越し

衿肩明きと繰り越し

衿肩明きの寸法は通常9.2cm程度で、体型によって変化します。女物の場合、繰り越しをして着用しますので、首の付け根周りを測ってその寸法の1/4します。男物の場合は繰り越しはしないので首の中心を測って1/4します。少々男物の方が衿肩明きは小さめです。

衿肩明き採寸箇所

衿肩明き採寸箇所

寸法の表し方には3種類あり、私達は出来上がりの衿肩明き寸法を使っています。呉服店や、地方によって様々なようです。

3種類の衿肩明き寸法

3種類の衿肩明き寸法

 

◆衿肩明きの切り方について

衿肩明きを切る位置ですが、きものを仕立てるときに、唯一、大きく切り込みを入れる衿肩明きですので、リサイクル性を考えて、無地や小紋のきものの場合、前身頃と後身頃の中心(四ッ山)に衿肩明きの切り込みを入れます。

身頃の中心に衿肩明きの切り込みを入れます。

身頃の中心に衿肩明きの切り込みを入れます。

布の中心に衿肩明きがあるので、女物の場合、繰り越しを付けるために、後身頃を繰り越し分(繰り越し×2)ダブらせて標付けをします。出来上がったきものを見ていただくと分かりますが、後身頃の内揚げが前身頃の内揚げより多いのは、そのためです。

付下げや訪問着などの柄合わせがあるきものは、柄合わせをして、肩山が決まり、肩山から繰り越し分下がった箇所に、衿肩明きの切り込みを入れます。また、紋付きは紋上端からの距離から衿肩明きの位置を決めます。

今まで私が仕事をしてきて、衿肩明きの切り方には、大きく3種類の切り方があるように思います。この切り方によって、衿を付けるカーブの度合いも違ってきます。

  • 真っ直ぐ切る衿肩明き

    真っ直ぐな衿肩明き

    真っ直ぐな衿肩明き

    この衿肩明きは、真っ直ぐに切り込みを入れますので、前身頃と後身頃を入れ替えたりする場合に都合がよく、仕立て直す場合に一番有効な切り方です。但し、衿肩明きから剣先(衽の一番先端)まで、衿付けが緩やかに、スムーズにカーブを付けないといけないため、衿肩明きの裁ち切りから2cm程度「付け込み」をしないと、うまく衿が付きません。しかも、縫い代が深いため、布地が吊ってしまう場合があります。

  • ちょっとカーブを付けた衿肩明き

    カーブを付けた衿肩明き

    カーブを付けた衿肩明き

    私達が通常、衿肩明きの切り込みを入れている方法です。普通体型の場合、約2cm手前から0.8cmのカーブを付けます。特異体型の場合は少々カーブを大きくします。背では衿肩明き裁ち切りから1cmの深さで衿を付け、衿肩明き先端では0.2cmの深さで縫います。(注1:繰り越し(上がり)は繰り越し+衿付けの縫い代約1cmの寸法です)

  • 肩山まで切る衿肩明き

    肩山まで切る衿肩明き

    肩山まで切る衿肩明き

    上のイラストのように、肩山まで衿肩明きを切る切り方があります。仕立て直しがやり辛く、前身頃と後身頃を入れ替える場合では、衿肩明きが向かい合って布地が切り落とされてしまう場合があります。今まで仕事をしてきて、直し物などのきものに多いような気がします。

  • 男物の衿肩明き
    男物の場合は、繰り越しが付かないので、真っ直ぐ、あるいは0.2cm程度のカーブを付けて衿肩明きを切っています。

以前、きものを日常着にしている方が、「長襦袢の衿と着物の衿のそぐいが悪い」とおっしゃっていたので、着物と長襦袢を見てみると、衿肩明きや衿の付け方が違っていました。長襦袢の衿付けを直しましたが、同じ仕立屋で作ったものならば、同じ衿付けのカーブで付けますので、そぐいよく着られると思います。

また、浴衣を持ってこられた方に、「衿は角張って付けないでね」と言われたことがあり、大きくカーブを付けて衿肩明きを切って、衿付けをしました。

些細なことかもしれませんが、着る方にとって居心地悪い着物とならないように、寸法見本は出来るだけお預かりするようにしています。