お祖母様の名古屋帯を仕立て直し
お客様から「名古屋帯を長くできませんか?」と、メールをいただきました。内容を詳しく尋ねたところ、お祖母様が若い頃締めていた名古屋帯です。黒地に刺繍の草花があしらってあり、とても柄が気に入って締めてみたところ、お腹の柄(胴の柄)がうまく出ないのと、手(胴に巻く部分)が短いとのことでした。「丁度良い締めやすい帯を一緒に送っていただけたら、寸法を確認し、見積もりいたします。」とお返事したところ、お客様から早速送られてきました。
まずは、ポイントとなる各部分の長さを測ってみると・・・・・・
お太鼓の長さは、丁度良い長さですが、やはり垂境(三角になっているところ)から胴の柄までの距離と手丈が短いです。
名古屋帯の基本的な寸法です。
名古屋帯の柄の位置です。
垂境から胴の柄までの距離は、現在の名古屋帯では約57cm位ありますが、この帯は約45cm。昔の物ですので、短くできています。手丈は約224cmで、現在の並寸法は約260cm前後のものが多いので40cm近く短くできています。ちなみに戦中、戦後の物資が足らない時代は、お腹に一重しか巻けない名古屋帯があったそうです。
そして、今では殆ど仕立てられることがないポケット口が付いていました。手先の方に袋状に開いている物で、小物を入れるポケットではなく、帯板を入れるためのポケット口です。
このポケット口は、体型にもよりますが、手先から中心まで約110cmの所に開けます。
(一社)日本和裁士会編
新版和服裁縫下巻より
そして、生地の状態をよく見てみると・・・・・
角は、擦れて薄くなっていたり、
垂先の、摘まんで縫ってある部分も、陽にかざしてみると薄くなっています。
とても古い物は、触っただけでポロポロと生地が裂けてしまうものもありますが、今回の生地はそこまで劣化はしていません。でも、耳に切り込みが入っていて、もしかしたら、締めている最中に力が加わると裂けてしまう恐れがあります。
お客様に、この状態を説明し、全面に薄い接着芯を貼ることを提案させていただきました。
しっかりと生地のよれをアイロンで直し、垂先を直角に置き、布幅に裁断した接着芯を貼ってゆきます。
次に、寸法の足らない部分の2箇所に、帯布を継ぎ足します。
後は、いつも通りに仕立ててゆきます。
私たちが仕立てた物には他の仕立て屋さんが見ても分かるように、仕立てた内容、寸法などを記入したものを付けてお客様へお渡ししています。
今回の仕立て代は、
・解き・簡易地のし
・接着芯等
・継ぎ足し布等
・帯芯
・仕立て
など合計25,000円程度でした。
昔の生地は、しっかりとした良い物もあります。仕立て直しで蘇ることもできますよ。