先日、長野方面へ紅葉を見に行きました。小高い場所のお城跡に紅葉が点々と植えられていました。お堀にかかっている橋から下を見ると、びっしり真っ赤な落ち葉が敷き詰められていました。
春には川や池の水面に桜の花びらがびっしりと浮いている様子を「花筏」と表現します。きものの柄でも「花筏」という文様は、水面に散った花がひとかたまりになって流れてゆく様子を筏に見立てたものや、桜や菊などの折り枝を筏に乗せた文様のことを言います。
では、赤や黄色の落ち葉がびっしりとある様子は「もみじ筏」って言うのかな?と、疑問が涌いてきました。
文様の本で調べてみましたが、「紅葉筏」とか「もみじ筏」、「かえで筏」ということばは出ていませんでした。似たような文様では
- 楓文(かえでもん)
色づく前の青色の葉の場合は青楓・楓文といいます。 - 紅葉文(もみじもん)
楓の葉が赤や黄色、茶色に色づいた物を図案化したもの - 楓樹(かえでき)
楓の木が風にたなびく様子を表現した文様です。 - 流水に紅葉
色づいた紅葉の落ち葉が川を流れていく様子を図案化したもの - 龍田川(たつたがわ)
流水に紅葉をちらした文様は、またの名を龍田川ともいいます。奈良県の生駒山地を流れる龍田川は、紅葉の名所の一つで、文様とされたのは古今和歌集が由来とされています。 - 紅葉格子(もみじごうし)
紅葉の枝を行使に見立て図案化したもの - 光琳紅葉(こうりんもみじ)
江戸中期の画家尾形光琳の作風の文様で、優しい曲線で描かれた紅葉の柄です。他に、光琳梅・光琳菊・光琳松などがあります。
で、最終手段でスマホで検索したら、
俳句の世界では季語として「紅葉筏」「紅葉の筏」「紅葉の川」というのがあるそうです。
他に「紅葉筏」でヒットしたものは和服というか、衣装というか・・・安土桃山時代の物で「角帽子 鶸色地紅葉筏模様:すみぼうし ひわいろもみじいかだもよう」が東京国立博物館の所蔵されています。柄は筏の上部に紅葉が舞っている様子の文様です。
ことばとしては「紅葉筏」はありますが、和服の柄では「紅葉筏」は無いようで、「龍田川」や「流水に紅葉」といった文様などに取って代わっているように思えます。圧倒的に桜の「花筏」が多いように思えます。
※参考書籍:きものの文様(全日本きもの振興会推薦・藤井健三氏監修)
愛知県豊田市小原地区では、11月下旬から12月上旬に花が咲く四季桜が有名です。山野斜面には紅葉の赤と桜の薄ピンクを同時に楽しめる箇所が地区一帯にあるます。この場合、水面に漂う桜の花びらと落ち葉紅葉は「紅葉花筏」といったところでしょうか??