袋帯の地方色(帯について その2)

以前、和裁団体の新年会に行った時のこと。とある女性の着物の後ろ姿を見て「何か違う??」と感じ、よく見てみると袋帯の垂先に織り止めが出ていました。
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垂先には、2本の織り止め(太く線に織ってある線・かいきり線ともいいます)があるものがあります。1本の物も、無い物もあります。

袋帯の織り止め

袋帯の織り止め

私は愛知県在住で、修業先も愛知県でしたので、垂先の織り止めは隠して仕立てをしています。

関東圏袋帯の 垂先出来上がり

関東圏の袋帯
垂先出来上がり

知識として、関西圏の場合、織り止めを出すというようなことを聞いていましたが、その新年会での着物姿を見た時に、どことなく違和感を覚えました。

関西圏の袋帯 垂先

関西圏の袋帯
垂先出来上がり

その女性の方にお話を伺ってみたら、京都で修行されて、岐阜県で仕事をされているとのこと。自分の袋帯は、垂先織り止めを出して仕立てているそうです。
三重県や長野県の方は、出さないとのことでした。

では、この2通りの仕立て方の境目はどこ?という疑問が涌き、とある和裁の先生に聞いたところ、「鈴鹿山脈あたりが境目なんじゃないかな?」とおっしゃっていました。

地方での仕立て方は様々です。湿気の多い日本海側では、布が縮みやすいので立褄や身八ツ口・振り・袖口など束(裏表一緒)に縫い躾を施したり、子供の着物も仕立て方が違ったりします。現在ではNC(ナショナルチェーン店)と呼ばれる呉服屋さんが台頭して、殆どが海外で仕立てられ、全て同じ仕立て方で着物が出来上がっているようです。

仕立屋としては、着られる方の意向をよく聞いて仕立てをしていますが、昔からの地方の気候風土などを考慮した仕立て方が失ってしまいそうな気がしてなりません。