ブログ:和裁屋日記

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浴衣の仕立て①

5月も後半。浴衣や単衣の仕立て依頼が来始めています。

浴衣は、大型スーパーなどで○点セット○○○○円とか、既製品のものが多く出回っています。洋裁サイズの生地でミシン縫いっぱなしの仕立てのようです。既製品の浴衣を「サイズが合わないから、直してください」と、持ってこられるお客さんも、ちらほら来られますが、直し代を含めると、気に入った柄の反物から仕立てた方が、お値打ちになる場合もございます。

今回は、「浴衣の仕立て」と「単衣の仕立て」の違いについて説明をします。浴衣といえば、綿の生地で当然、単衣仕立てです。他の素材ではウールや化繊、麻、絹物などの生地でも、単衣仕立てがあります。私たちは、同じ単衣仕立てでも、違った仕立て方をしています。

◆浴衣の仕立て

・岡木綿・真岡(まおか・もおか)木綿の浴衣生地の仕立て

私たちは、普通の浴衣生地を真岡(まおか)と呼んでいます。どんな生地かというと、温泉旅館などで着る浴衣生地を想像してください。

私は知らなかったんですが、仕事や業界の慣れって恐ろしいもので、調べてみると真岡は「もおか」という読み方が殆どでした(-_-;)

私が和裁の修行に入った30年以上前では、浴衣の生地は真岡が多く、藍染めが主流。当然色も紺や濃紺、女性ものは赤い花柄などをあしらったもの、男物は白と紺の2色が殆どでした。

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使う糸も白・黒・紺程度の色で太口綿の糸を使って縫い、くけは細口糸と決まっていました。修業に入りたての頃で、今に比べると、糊がとても効いていて、堅く、縫うのも一苦労だったような思い出があります。今、思えばその苦労が運針の練習になったと思いますが、縫った後は、指ぬきも指先も、掛け張りのゴムも真っ青!でした。

DARUMA HPより

DARUMA HPより

今では、藍染めのものは少なくなり、様々な色のものや、織り方が変わったものが多く出回っています。化学染料のため、藍染めのものでやっていた「色止め」をする事はなくなってきました。太口糸の色も、そんなに多く色の種類がないので、現在、私たちは化繊の糸を使って縫っています。

真岡生地は糊付けしてあるので折りも付きやすく、仕立て上がりもパリッとしていてますが、シワが付きやすいというデメリットもあります。アイロン掛けが出来るご家庭ならば、洗濯も可能ですが、糊が取れて柔らかくなり、縮みます。

この真岡生地の女物浴衣は、着られる方の身長にもよりますが、反物の長さが短く、繰り越し摘まみは取ることが出来ても、身頃の内揚げ(胴あたりに摘まんで縫ってある縫い代)を入れることができません。衽や衿などの縫い代もあまりないので、身丈を伸ばすといった仕立て直しは出来かねます。

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私は、仕立て直す事を考えて、仕立てていますが・・・・

4月半ばから、浴衣や単衣の仕立て依頼が来始めています。

単衣着物を数枚、持ってこられ、体型が変わり、身丈、身幅、褄下の寸法も変わってしまい、洗い張りして仕立て直しをして欲しいとのことでした。
洗い張り前の、着物を解く作業は、洗い張り屋さんに任せることもできますが、布の状態と仕立て方を見たいので、私が解きます。

ゆっくりと糸を抜きながら解いてみると、、、、、

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なんと~  前身頃の衽付け側の縫い代が切り落としてあります。身幅を広く仕立て直しをしますが、この状態ではこれ以上、広くできませんね。

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そして、衽の褄先、単衣の場合は「額縁」と呼ばれている箇所ですが、ここも縫い代が切り落とされています~

 

以前のブログ(寸法直しが難しい事例:脇縫い代の切り込み)にも書きましたが、縫い代が何枚か重なって厚くなるために、仕立てにくい箇所で、縫い代を切り落とす事で、仕立てやすく、裾のくけ幅をすっきり見せるためです。

今回は、幸いにも内揚げがあり、切り落としてある部分に合わせて裾を切っても、身丈は出来ますが、こんな事をやっていたら、どんどん布丈が短くなってしまいますね。

 

地方や流派?(あるような、無いような)でいろいろな仕立て方がありますが、私には、チョット解せないですね~

和服は、仕立て直すことを前提に、仕立てます。例外として浴衣(特に真岡のみ・綿紅梅等高級浴衣地は別)は、反物の長さが短い事や綿製なので、内揚げ(身頃の胴で摘まんである縫い代)を取らず、あまり作り直すことを考えず、仕立てます。

お祖母様の名古屋帯を仕立て直し

お客様から「名古屋帯を長くできませんか?」と、メールをいただきました。内容を詳しく尋ねたところ、お祖母様が若い頃締めていた名古屋帯です。黒地に刺繍の草花があしらってあり、とても柄が気に入って締めてみたところ、お腹の柄(胴の柄)がうまく出ないのと、手(胴に巻く部分)が短いとのことでした。「丁度良い締めやすい帯を一緒に送っていただけたら、寸法を確認し、見積もりいたします。」とお返事したところ、お客様から早速送られてきました。

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まずは、ポイントとなる各部分の長さを測ってみると・・・・・・

お太鼓の長さは、丁度良い長さですが、やはり垂境(三角になっているところ)から胴の柄までの距離と手丈が短いです。

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名古屋帯の基本的な寸法です。

名古屋帯の基本的な寸法です。

名古屋帯の柄の位置です。

名古屋帯の柄の位置です。

 

垂境から胴の柄までの距離は、現在の名古屋帯では約57cm位ありますが、この帯は約45cm。昔の物ですので、短くできています。手丈は約224cmで、現在の並寸法は約260cm前後のものが多いので40cm近く短くできています。ちなみに戦中、戦後の物資が足らない時代は、お腹に一重しか巻けない名古屋帯があったそうです。

そして、今では殆ど仕立てられることがないポケット口が付いていました。手先の方に袋状に開いている物で、小物を入れるポケットではなく、帯板を入れるためのポケット口です。

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このポケット口は、体型にもよりますが、手先から中心まで約110cmの所に開けます。

(一社)日本和裁士会編 新版和服裁縫下巻より

(一社)日本和裁士会編
新版和服裁縫下巻より

 

そして、生地の状態をよく見てみると・・・・・

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角は、擦れて薄くなっていたり、

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垂先の、摘まんで縫ってある部分も、陽にかざしてみると薄くなっています。

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とても古い物は、触っただけでポロポロと生地が裂けてしまうものもありますが、今回の生地はそこまで劣化はしていません。でも、耳に切り込みが入っていて、もしかしたら、締めている最中に力が加わると裂けてしまう恐れがあります。

お客様に、この状態を説明し、全面に薄い接着芯を貼ることを提案させていただきました。

しっかりと生地のよれをアイロンで直し、垂先を直角に置き、布幅に裁断した接着芯を貼ってゆきます。

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次に、寸法の足らない部分の2箇所に、帯布を継ぎ足します。

名古屋帯足し布

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後は、いつも通りに仕立ててゆきます。

私たちが仕立てた物には他の仕立て屋さんが見ても分かるように、仕立てた内容、寸法などを記入したものを付けてお客様へお渡ししています。

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今回の仕立て代は、

・解き・簡易地のし

・接着芯等

・継ぎ足し布等

・帯芯

・仕立て

など合計25,000円程度でした。

昔の生地は、しっかりとした良い物もあります。仕立て直しで蘇ることもできますよ。

 

 

 

 

 

 

こんなアプリ、見つけました。

連休中、スマホを触っていると・・・「着物帯合わせ」というアプリを見つけました。

着物帯合わせ

 

着物や帯の写真を撮って、反映することもできます。

着物帯合わせ02

 

カメラ撮影の距離感がちょっと難しそうですが、着姿をイメージしやすくなりますね。

 

帯の仕立て直しをしていて思うこと

帯の仕立て直しの依頼も承っています。

時間が経つと、表と裏のつり合いが悪くなったり、帯芯が縮んだりしますので、一度全て解いて、染み抜きや洗い張りをして仕立て直しをます。(過去の袋帯仕立て直しブログはこちらをクリック)

もちろん、帯芯も解き、新しい帯芯に交換しますが、原則、付いていた物は全てお客様にお返しします。古い帯芯をお返ししたところ「こんなにカビていたの~」と仰られる方が殆どです。着物の裏地は、広げて見れば分かりますが、袋帯や名古屋帯などは中に帯芯が入っていて見えないので、分かりませんよね。でも、意外とカビています。

下の写真は、一世代時間が経っていて、お母様が成人式の時に締めた袋帯の帯芯です。

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綴じてあった糸は切れてしまって、所々帯芯がずれてシワだらけですね。

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もちろん、新品の帯芯は真っ白で、「防カビ」とか施してあるものが多いです。

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また、お祖母様が若い時に締められていた名古屋帯の帯芯。二世代の時間が経っています。

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最近の袋帯は、端縫いの糸に化繊の糸が使われています。とても細く切れにくいのが特徴ですが、果たして時間が経った時、絹物の帯地に対して優しいのか疑問です。糸が先に切れれば、帯地は傷つかないでしょうけど、しかし、糸が切れず、部分的に力が加わったら布は裂けてしまいます。

師匠や先輩方から教えられ続けていますが、この様な理由から絹物は絹糸で縫っています。これも、布を大切にする日本人の智恵ですね。