都市伝説ならぬ「幽霊の片袖伝説」

私達仕立て屋には、先輩や師匠から言い伝えられていることがあります。それが「幽霊の片袖伝説」です。

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「幽霊の片袖」の話は、全国あちらこちらのお寺に掛け軸と共に伝わっていたり、片袖が寺宝として展示されていたり、落語にもなっていて、話の内容も様々です。
私が聞いた話しは・・・・・

とあるお寺の住職が就寝中のすぐ横で、誰かが歩く音を聞き、「泥棒だ!捕まえてやる」と思った住職は、とっさに手を伸ばし袖を掴みましたが、袖が取れ逃げられてしまいました。住職が寝ている部屋の床の間には、幽霊の絵の掛け軸が掛かっていましたが、翌日、その掛け軸を見ると、幽霊のきものの片袖が無くなっていた、というお話です。

 

で、修行中、片袖だけ身頃に付けずに残して1日の仕事を終えると、「幽霊が『私の袖では』と探しに現れる」とか「お化けが出るよ」と言われました。
袖を付けるのは、きものを1枚仕立てる工程の中で、比較的完成間近の作業です。(単衣のきものは最後に袖を付けます)理由は、身頃に袖が付いていると作業がしづらいためです。ですから、「もう少しで完成するのであれば、袖を付けて1日の仕事を終えなさい。」という戒めでしょうか。

信じるか、信じないかは あなた次第です。