和服の「ガード加工」あれこれ

雨の中の針供養

雨の中の針供養

先日の針供養は、雨の中、執り行われましたが、きものを着て参拝された男性の方が「羽織だけでもガード加工をした方がいいのかな?」なんておっしゃっていました。ガード加工について、私が今まで聞いたり見たり経験したことを、記載してみたいと思います。古い話もありますが・・・・・

和服のガード加工(撥水加工)は今から30年ほど前から徐々に広がり始めました。当時は薬品が強かったためか、縫っていると手が荒れてしまう方もいました。現在では改良され、それほどには強くないようです。何にでもメリット、デメリットがありますが、ガード加工のメリット・デメリットを書き連ねてみました。

 

ガード加工のメリット

  • 水を弾き、汚れが付きにくい
    「さっと一拭きで、汚れが付きにくい」この一言につきますね。いろんな会社があり、着物の裏衿先に「○○ガード」というようなタグを付けて仕立てる時があります。
    あくまで、つ・き・に・く・い  ですから・・・

ガード加工のデメリット

  • 縮緬生地にスポイトで・・・・・・
    呉服屋さんで、ガード加工の効能を説明される時に、四角く切った小布を2枚並べて、こっちがガード有り、こっちがガード無し、で、スポイトで水を垂らすとガード無しの小布はちりちりと縮まって・・・・というのを見た方も多いのではないでしょうか?、とあるガード加工会社の方が、「必ずスポイトで一滴、雫を垂らしてください。霧吹きでは水滴が細かすぎて浸みてしまいます」と話されていました。経験上、胴裏に霧を吹いても水を弾きますが、表生地には弱いようですね。
  • 茶碗蒸しをこぼしたら・・・・
    結婚式での出来事で、振り袖を着た方が誤って茶碗蒸しを着物の上にこぼしてしまったそうです。ガードがかかっていたはずなのに、浸み込んでしまったという事例があるそうです。以前のガードは強い薬品を生地に噴霧して高温で定着させていましたが、引火の恐れや、噴霧する方の健康を害すると言うことで、以前より弱い薬品と、低温で定着させるようになったため、約60度以上の物にはガードの効果が無いという話を聞いたことがあります。
  • 染み抜きや、仕立て直し時に・・・・・
    仕立て直しで、色焼けをしていて、縫い目を境に色が変わっている場合があります。身幅寸法を広げる場合、色の境目が出てしまい修正を必要とします。その場合、色を付け修正することを「色はけ」と言いますが、ガードがかかっている場合には、一度ガードの薬剤を取らなければならず、修正にお金がかかってしまいます。染み抜きにしても同様なことが言えます。
  • 生地の風合いが・・・・
    本場結城紬にガートをかけた反物の、仕立て依頼が呉服屋さんからあり、ゴワゴワになってしまっていました。紬の物全般に言えますが、「洗い張りを繰り返してだんだんと柔らかくなり、風合いが良くなって、身体に馴染む」と言われます。ガードはかけない方がいいと思います。
  • 出来上がった長襦袢に・・・・
    ガード加工会それぞれ、加工の仕方は違いますが、ある会社では着物や長襦袢など出来上がった物にガード加工を施す場合、縮み防止などのため、肩山と裾を引っ張って塗布するようです。経年変化して布の繊維が細くなってしまった長襦袢は、布の強さに対して強く引っ張ったため、裂けてしまったそうです。
  • 帯に・・・・
    帯で表と裏の生地が違っていて、例えば縮緬などとても縮む生地と、紬など縮まない生地が合わせて縫ってある場合、片方が極端に縮んで、つり合いをとても悪くする場合があります。
  • 番外編として、
    呉服店からガードをかけた浴衣が来たことがあります。お客さんのご要望だそうで・・・・・汗が滴り落ちて、帯辺りに溜まるのでは??
  • ちなみに
    以前、雨の日の組合研修会で、講演依頼したお寺の住職は、開口一番に「私は着物が大好きで、たくさん着物を持っています。和裁士の皆さんとお会いするので、一番気に入っている着物を着てこようかと思っていましたが、私の着物は1枚もガードはかかっていませんので、今日は普段の格好で来ました。」とおっしゃっていました。
    ちなみに、私の和服も全てガードはかかっていませんが、針供養など屋外の和服着用で悪天候の場合、「羽織はガードをかけておけば良かったかな~出来れば袴も~」って悔やむこともあります。

以上ですが、ガード加工をする場合、反物や洗い張りの状態で施した方が良いと思います。仕立て上がってからは、表と裏地といった生地の縮み具合が違うので、プカプカする場合もあります。
また、何でもガード加工(撥水加工)を勧める呉服店もあるようですが、効能やデメリットをよく知った上で、ガード加工を試してみてはいかがでしょうか。

2015年3月3日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 和裁屋